前に進むためのオープンエンド

CHAIが解散すると伝え聞いた時、思わず「えっ!?」と声を出してしまった。海外での活動を拡大したり(たとえば、あのゴリラズやデュラン・デュランの作品に参加したり)、テレビで見かけたりと、CHAIはずいぶん遠くに行ったんだなと感じていたここ数年、4人は遠くに行き過ぎて突き抜け、活動を終了するに至ったのだろうか。色々な考えが頭の中を渦巻いた。

解散が正式に発表され、XなどのSNSでは驚きと悲しみの声が広がった。その光景は、多くの人々がバンドの解散を単に残念がっていたというよりも、陳腐な言い方をすると、4人の音楽・活動・存在に勇気づけられていた人々が大きな支えを失ったようだった。それは無理もなく、CHAIは、音楽を通して聴き手をエンパワーするのと同時に、セルフエンパワーするための源や動機やアイデアを共有し続けてきたからだった。解散後からは、CHAIにエンパワーされるのではなくて、自分の力でセルフエンパワーしていくしかない。

そんなCHAIの最後を見届けるために、そしてNEO KAWAII BABIES=CHAIのファンがライブの現場で解散をどう受け止めるのかをともに感じるために、風雨が吹き荒れた2024年3月12日、東京・六本木のEX THEATER ROPPONGIに向かった。この〈We The CHAI Tour!〉の最終公演こそが、4人の解散ライブになる。

会場内、入口の近くの階段には、〈CHAIの歴史〉が飾られていた。展示されていたのは、2012年に結成され、2016年にCDデビューし、そして今日解散する4人がライブなどで着てきたピンク色の衣装の数々。汗だって当然染み込んでいるだろうそれらは、4人が自らの身体でもって音楽を奏でてきた確かな証だった。下から上へと登る階段に並ぶ煌びやかな衣装を見ていて、CHAIの解散はただ行き詰まった末の終わりではなくて、この先も上昇したり進んだりしていくためのオープンエンドなのだろうと思った。

 

We are CHAI!

EX THEATERの広いステージの上、背後には大がかりな階段のセットと〈CHAI〉の文字のライトが置かれていた。開演時間になって暗転し、現れた4人を大きな拍手で迎えるオーディエンス。マナ&カナはちょこちょこと、不思議な歩き方でやってきた。フードや長いリボンのような飾りに彩られた衣装は、かわいくも怪しげでおもしろい。

中央寄りの上手に置かれたベース&シンセベースの元にユウキが、中央寄りの下手に置かれたドラムセットの元にユナは歩いていき、登場時のSEからシームレスに“MATCHA”を演奏しはじめる。双子はステージの左右に広がっていき、自由に行き来する。中盤、激しい電子音と眩しい白いライトによるブレイクとともに「東京~~~!!」と声を上げるマナ。キラキラした装飾が施された靴が、眩く光り輝く。

「Hi, everybody! We are CHAI! It’s showtime!」。ユウキの太いシンセベースと観客のハンドクラップに導かれながら“IN PINK feat. Mndsgn”へ。お尻を突き出して踊るマナ。マナとカナはそれぞれの楽器のもとへ赴き、カナはギターを手にすると熱いソロを披露した。激しくフラッシュするライトがそれを彩る。

マナは、「今日はほんとに見にきてくれてありがとう! 最後まで最後まで最後まで……」と何度も繰り返してから「楽しんでって!」と叫ぶ。その後、4人がフードをバッと脱ぎ捨てたシーンは鮮烈だった。金髪+ツインテールのユウキ&ユナ、黒髪をパンキッシュにスタイリングしたマナ&カナと、4人のヘアメイクがばっちりと映える。軽快なギターリフとともに“ラブじゃん”が始まると、ユウキはベースギターをさっと取ってファンクビートを紡ぎ出す。