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コラム

ブッチャー・ブラウン(Butcher Brown)『#KingButch』当代最高のジャズ・ファンク・バンドが鳴らす、いま人々を昂揚させる音楽とは

ブッチャー・ブラウン(Butcher Brown)『#KingButch』当代最高のジャズ・ファンク・バンドが鳴らす、いま人々を昂揚させる音楽とは

 ヴァージニア州リッチモンドを拠点に、ジャズの文脈のみならずファンクやヒップホップの要素を内包するミクスチャーな音楽性を推進してきた5人組バンドのブッチャー・ブラウンが、コンコード移籍第1弾となるニュー・アルバム『#KingButch』をリリースした。かつてニコラス・ペイトンが提唱した〈BAM〉の流れも汲み、流行に左右されることなく貫かれてきた彼らのソウルフルでファンキーなスタイルは、本作で見事に実を結んでいる。

BUTCHER BROWN 『#KingButch』 Concord/ユニバーサル(2020)

 もともとはそのペイトンの『Numbers』(2014年)での演奏で注目され、同年のフル・アルバム『All Purpose Music』で脚光を浴びた彼らだが、それと並行してプロデュース業やソロ活動も展開するDJハリソンをはじめ、クリスチャン・スコットのドラマーとしても活躍するコーリー・フォンヴィル、マーカス・テニー・トリオでも演奏するベーシストのアンドリュー・ランダッツォ、ケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』への参加で脚光を浴びた初代ギタリストのキース・アスキーなど、メンバー各人の活躍もバンドの幅広さを培ってきた。その後は過去作にも参加してきたマーカス“テニシュー”テニーが正式加入し、『Live At Vagabond』(2017年)以降は新ギタリストにモーガン・バースを迎えた現体制に移行。近年はカマシ・ワシントンやギャラクティック、レタスらとのツアーなどでステージを重ねてきたが、今回の『#KingButch』に収録された曲の多くはまさにその期間に生まれたものだという。

 「僕らは2017~19年のほとんどの期間、非常に多くのツアーを行った。その時にはもう収録されている曲の多くに取り組みはじめていたんだ。毎晩オープン・リハーサルみたいに演奏してセットリストをどんどん発展させていき、曲を研ぎ澄ませていったから、スタジオに入る頃には自然に感じられるようになっていた」(フォンヴィル)。

 コンコードのシニアA&Rであるクリス・ダンを共同プロデューサーに迎え、メンバーたちが根城のジェロウストーン・スタジオ入りしたのは昨年10月。レコーディングには過去最長の2週間を費やしたそうだ。

 「全員が一緒の部屋にいたんだ。朝11時から夜7時までやる日もあれば、正午から夜遅くまでやるような日もあったけど、それ以外は何もしなかった。それはクインシー・ジョーンズ、ブルース・スウェディエン、マイケル・ジャクソンのチームのようなものだった」(ハリソン)。

 「メンバーはみんな素晴らしいプレイヤーだけど、プロデューサーのような考え方もできるんだ。なかには12分以上の曲もあって、僕らはレシピをどうすべきか話し合ったけど、そうすると彼らはすぐに手を加え、形を整え、最終的には生々しさとローファイな洗練をブレンドして自分たちだけのものに仕上げていた。一曲一曲がひとつのアルバムになっていくのを見ていると、『#KingButch』はバンドの創造性にエキサイティングな新章を開く作品になったと信じている」(クリス・ダン)。

 そんな新章は、“Fonkadelica”なる曲名通りの幕開けから、野太いラップの響く表題曲でグルーヴィーに始まる。EW&F風にホーンの轟く“Cabbage(DFC)”もあれば、宇宙的でハウシーな“1992”もあり、ブラック・ムーン“Who Got Da Props”などヒップホップの定番ネタとして著名なロニー・ロウズ“Tidal Wave”の孫引きリメイク、エムトゥーメイのメロウ名曲“Love Lock”のカヴァーもある。ボサノヴァ調の“Gum In My Mouth”や地元のフライ・アナキンを迎えたアーシーな“For The City”などテニシューのマイクが牽引するラップ曲も挿みつつ伝統性を活き活きと表現する姿は、ライヴ自粛期間にもクール&ザ・ギャングやモス・デフ、ロイ・エアーズらのカヴァー動画を定期的に公開していた彼ららしい。アートワークをウェザー・リポートの『Heavy Weather』(77年)で知られるルー・ビーチが担当したことも、アルバムの佇まいを特別なものにしているはずだ。

 「いまは人々が昂揚し、新しい音楽を聴かなければならない時代なんだ。もちろん、ブッチャー・ブラウンのようなライヴ・バンドが、ツアーの機会も見えない状況でアルバムを出すことを心配していたけど、僕らは〈待てない〉と言った。この音楽はいまリリースされなければならないものなんだ」(ダン)。

 


ブッチャー・ブラウン
DJハリソン(キーボード)、コリー・フォンヴィル(ドラムス/パーカッション)、アンドリュー・ランダッツォ(ベース)、マーカス“テニシュー”テニー(トランペット/サックス/MC)、モーガン・バース(ギター)から成る5人組バンド。ヴァージニア州リッチモンドを拠点に2009年に結成され、2013年に『Backtracks』を発表。2014年にニコラス・ペイトン『Numbers』にフィーチャーされて脚光を浴び、同年のアルバム『All Purpose Music』以降はメンバー交替も経験しながらコンスタントに作品を送り出していく。今年に入ってコンコードと契約し、このたびメジャー・デビュー作となるニュー・アルバム『#KingButch』(Concord/ユニバーサル)をリリースしたばかり。

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