2020年4月で結成5周年を迎えたつばきファクトリー。彼女たちがこの5年の間で歩んだ道のりは決して平坦なものではなかっただろう。しかしそれを乗り越えた今、その今こそがまさに最高潮と感じさせるニュー・シングルが届けられた。“断捨ISM”、“イマナンジ?”の2曲には、ふたたびギアをトップに入れ、アイドルシーンの最前線に躍り出ようとする勢いと頼もしさを感じさせるエネルギーに満ちている。
今から5年前、2015年4月29日にハロプロ研修生であった山岸理子、小片リサ、新沼希空、岸本ゆめの、谷本安美、浅倉樹々の6人でつばきファクトリーは産声をあげた。同年9月にはデビューシングル『青春まんまんなか!』をインディーズからリリース。しかしそこからメジャーに行くまでは2年の期間を要することになる。この2年間というのはもがきながらもなかなか芽が出ない、そんな時期だったと思われる。しかしここで重ねた研鑽があったからこそ、今の爆発力があるともいえるだろう。
そして2016年8月にハロプロ研修生から小野瑞歩、小野田紗栞、秋山眞緒の3人が加入して現在の編成となり、直後に待望のメジャーデビューを発表。翌2017年2月に『初恋サンライズ / Just Try! / うるわしのカメリア』で待望のメジャーデビューを果たした。インディーズで着実に実力をつけてきた彼女たちには“初恋サンライズ”という、新時代到来を告げるアンセムがよく似合った。
この年、第50回日本有線大賞 新人賞、第59回「輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。それはつばきファクトリー9人の実力というものが世間に刺さった瞬間でもあった。その後も2018年には初の全国ツアーやファースト・アルバム『first bloom』をリリースし、キャリアを重ねるごとにその表現力もめきめきと向上していった。
そして2020年。1月にリリースされた6枚目となるシングル『意識高い乙女のジレンマ/抱きしめられてみたい』は、どちらも大人びたエモーションを聴かせる傑作だった。その後2月に開催されたライブツアーも成功を収め、アニバーサリーイヤーが勢いよく幕を開けた……かと思われたが、新型コロナウィルスの影響により初となるホールツアーが中止となる。5周年という最中で思いがけない停滞を強いられたつばきファクトリーがあげた、反撃の狼煙となるのがこのニュー・シングル『断捨ISM / イマナンジ?』なのだ。
まず“断捨ISM”は湘南乃風のSHOCK EYEが手掛けたディスコテイストな一曲。冒頭から〈断捨ISM〉というフレーズがリフレインからスタートするこの曲、ズンズンとしたビートときらびやかなシンセが鳴るテンションの高いトラックに負けないぐらい熱く力強いラップを聴かせる。そんなアグレッシブな序盤から和風なメロディが光るBメロで少しブレイクしたあと、サビでふたたびテンション高く聴かせるという緩急がとにかく気持ちいい。特に〈無駄は処分が性分の潔さ その勇気の先にあるのさ〉というパンチラインを含む、明快かつ耳に残るサビの破壊力は素晴らしく、この鬱屈とした昨今に、まさに断捨離のようにスッキリとした爽快感を与えてくれる。
また、MVでも確認できるキレ味抜群なダンスも必見で、グッと握り拳を固めるパワフルさと流麗なフォーメーションを見せるしなやかさを兼ね備えたパフォーマンスは、またひとつもふたつも殻を破ったと感じさせる抜群のカッコ良さだ。
続いてもう一曲、“イマナンジ?”は近年のつばきファクトリーのエモーショナルな魅力を前面に出したミディアムナンバーとなっている。ハロプロ作品では初参加となる作詞のSoflan Daichiと作編曲の玉木千尋は、それぞれアニソンシーンでは確かなソングライティングで知られるクリエイターだ。女の子の甘酸っぱい想いを情景とともに丁寧に描写するSoflanの歌詞も、点描のように微細な美しさすら感じさせる玉木のトラックも彼女たちに実にマッチしている。
特に〈イマナンジ?〉と繰り返されるサビでの歌唱は絶品で、繊細な楽曲の魅力を見事に表現するスキルはまさに円熟の域だと思わせる、まさにつばきファクトリーらしい逸品だ。
5周年という節目にふさわしい楽曲とともにふたたび進撃を開始したつばきファクトリー。やがて再開されるであろうライブでこの2曲はさらなる輝きを放つはずだ。迷いなく、いまだに青春のまんまんなかを走り続けている彼女たちの最高潮をぜひ体験してほしい。