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インタビュー

石若駿と高井息吹と君島大空、音楽の〈色〉や〈景色〉を共有する3人

『Songbook5』『kaléidoscope』『縫層』リリース記念鼎談

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乾いた大地に染みこむような歌

――まずは3人の関係性を確認したいと思いますが、一番付き合いが長いのは高井さんと君島くん?

君島大空「そうですね。僕がまだソロ活動をしていなくて、ギターばっかり弾いてた頃に、地元のライブハウスで弾き語りを始めてすぐの息吹のライブを観たんです。10代の終わりごろだったと思うんですけど、〈こんな人いるんや。この人の後ろでギター弾きたい〉と思ったら、息吹も〈弾いてほしい〉と言ってくれて、一緒にスタジオに入って」

高井息吹「弾き語りを始めて5か月くらいで、〈とりあえず自主で音源作って出そう〉というときからずっと一緒にやってます」

石若駿「眠る星座(高井息吹が活動をともにするバンド。メンバーは君島、新井和輝、坂田航)になったのはいつなの?」

高井「最初は“きりん座”っていう曲をバンド・セットでやりたくて、自分が好きな人を集めたら、〈こんないいバンドないでしょ!〉と思って、セカンド(2017年作『世界の秘密』)はほぼバンド・サウンドになったんです」

君島「僕はそれまでバンドらしいバンドに所属したことがなくて、そもそもバンドっていうモノがあんまり好きじゃないっていうのが根底にあるんですけど、〈初めてのバンド〉っていう意味で、大事にしてるのは息吹のバンドですね。あとは、今やってる自分のバンド(君島大空合奏形態)」

高井息吹と眠る星座の2018年のライブ映像

――最初に君島くんが高井さんに対して、〈こんな人いるんだ〉と思ったのは、どんな部分を魅力的に感じたからなのでしょうか?

君島「なんだろう……ライブを観てて、押しつけがましくなく、亀裂が入ってる乾いた大地みたいな、自分の中の乾いた隙間みたいなところに、スッと染みこんでいく感じがしたんです。

僕や息吹が行ってたそのライブハウスって、結構ガチガチだったんですよ。音がドンシャリで、(手を顔の前に当てて)ずっとスネアがここで鳴っています、みたいな感じのライブハウスで、僕はそれに疲れちゃってて。

でも、息吹と会って、こんな人が身近にいたんだって思って。初めてライブを観たときの感覚はすごく覚えてますね。射抜かれたっていうか、自分の魂がちょっと抜けた感じになって……忘れられない瞬間でした」

高井「嬉しいですねえ」

――だからこそ、この人と一緒であればバンドをやってみようと思えたと。

君島「そうですね。ライブハウスがそういう環境だったから、なおさらバンドというモノに反発する気持ちが強くなってたけど、息吹は一人の人が小っちゃい声で囁くような音楽だったから、ずっとこういうのが聴きたかったんだなって、そのときわかったし、こういう感覚を大事にしていこうと思えた。なので、すごく大事な時期に出会った人ですね」

高井「私にとっては〈君島がいてくれてこそ〉くらいの感じです(笑)。

最初に観て、私はこの人の音楽好きだし、おこがましいですけど、この人も私の音楽好きになってくれるだろうなと思ったんです。好きなコード感とかコード進行も、もともと似た部分があるなと思って、だから、音楽的にも委ねられる。そういう安心感は初めて観たときからありました」

 

一人の人間がここまでできるんだ

――石若くんと君島くんの出会いはいつ頃ですか?

石若「3年前に、『Songbook』のジャケットを撮ってくれてる高良真剣がやってる横須賀の飯島商店で、Songbook Trio(石若と角銅真実、西田修大とのトリオ)と誰かで2マンをやろうってなったときに、真剣がキミ(君島)のSoundCloudを教えてくれて。で、そのライブで初めて会って……思い出深いね」

君島「僕はとてもあの日に助けられた感じがします。

その頃は〈一人の音楽なんてできないかも〉となってた時期だったんですけど、真剣さんが誘ってくれて。駿さんのことはSrv.Vinciの1枚目(2015年作『Mad me more softly』)とかで音も知ってたから、〈あの石若駿か〉って思ったんです。で、会ってみたら、めちゃめちゃピアニストだったっていう」

Songbook Trioの2020年のスタジオ・ライブ映像

――最初がドラムじゃなくてピアノだったと。

君島「一人の人間がここまでできるんだっていうのを体現してくれてたというか、自分が弱ってたのもあって、こんなに人は豊かに裾野を広げることができるんだって、すごく感動して。しかも、駿さんは音楽に人間性が一番出てる人だと思うんです」

高井「すごいわかる!」

君島「息吹のライブを観た日も、Songbook Trioのライブを観た日も、僕ずっとニコニコしてました(笑)。〈助かる~〉みたいな。あの日は楽しかったです」

石若「楽しかったよね。SoundCloudでキミの音楽を聴いて、〈ライブはどんなことをやるんだろう?〉って思ってたら、ガット・ギターとサンプラーを持ってきて演奏して、そこにしかない音楽があったんです。キミの音楽の色とか景色の感覚も大好きなので、それを噛みしめた一日でしたね。その日に西田とも仲良くなったんだよね?」

君島「そうそう。で、和輝さんも観に来てて」

高井「おー、なんていい日なんだ」

 

音(楽)の色や景色

――そのメンバーがやがて君島大空合奏形態になっていくわけですもんね。では、石若くんと高井さんの出会いはいつですか?

高井「去年初めてデュオでライブをやらせてもらいました。音源はめちゃめちゃ聴いてて、新井さんにも〈イブちゃん(高井)と駿が一緒にやってるの観てみたい〉と言ってもらってたので、思い切って、〈一緒にやってもらえませんか?〉って、お声掛けして。

さっき駿さんが君島の音楽に対して、〈色とか景色が好き〉って言ってたけど、駿さんはホントに音楽の景色をそのまま受け取ってくれて、見たい景色をドラムで作り出してくれる人で。駿さんと一緒にやってるときの空間は、ホントに別世界みたいなんです」

君島「僕、息吹と色の話をめっちゃするんですよ。で、駿さんとも前に〈キーは何色か?〉って話をして、〈E#とDはちょっと水色っぽい〉みたいな、そういう共感覚的な話に自然となるのが、僕は心地いいなって」

高井「私としては、実はそういうのって一番話したいことなんですよね。それがちゃんと話せるっていうのはホントに嬉しいです」

君島「抽象的なことをちゃんと真面目に話すっていうか。でも、それって、僕はちょっと怖いんですよ。〈笑われたらどうしよう?〉みたいな、すごい考えちゃったりする」

高井「わかる。めちゃめちゃわかる」

君島「そういう話を、プラス・アルファの情報として捉える人もいて、それが悪いってわけではないんです。けど、僕としては〈その景色がないと、この音が成立しない〉みたいなものが最初にあるので、2人はそこを真面目に話せる相手だなって」

高井「駿さんとも、この前レコーディングが終わった後にいっぱい話をして、話したいことをホントに話せて。駿さんとか君島と話したときのふとした一言が、お守りみたいに、何かの答えみたいに、ずっと残ってるんです」

――石若くんもいろんな人とプレイする上で、色や景色の共有を大切にしていると言えますか?

石若「演奏が始まってしまったら、みんなからブワーって出てる音楽に、僕が乗っかってることの方が多いかもしれないです。〈同じ景色を見たい〉とか〈同じところに行きたい〉みたいな欲求が常にありますね」

君島「“遠視のコントラルト”で初めて駿さんに叩いてもらったんですが、〈録音だとめちゃ怖い人だったらどうしよう?〉とか思ってたんです。けど、実際は〈今の大丈夫だった?〉ってすごい訊いてくれて、〈何でこんなかっこいい演奏をするのにそんな不安がるんだろう?〉っていうくらいの感じで。だから、こっちも伝えられるだけのイメージを駿さんに伝えました。

そのときは、たしか〈燃えた車輪が雲の上へと昇って行くようなドラムで〉って言ったと思うんですけど、〈オッケー!〉って、ホントにそれをやってくれて。本物の車輪になるんです。魔法みたいなプレイヤーだなって、ウルウルしながら録音したのを覚えてます」

君島大空の2019年作『午後の反射光』収録曲“遠視のコントラルト”

高井「駿さんはホントいい風を持ってきてくれるっていうか。2人で“万華鏡”っていう曲をセッションしながら録ったんですけど、それこそホントに自分が行きたいところに行けて、駿さんと一緒にやれたから、そこに行けたんだなって思いました」

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