Photo by Justin Flythe

もし〈フジロックフェスティバル’20〉が開催されていたら、今年のベスト・アクトは間違いなくフューチャー・アイランズだった。そう思うのは筆者だけではなく、きっと2年半前の来日公演に足を運んだ方はみんな頷いてくれるはず。いまやバンドの代名詞となった“Seasons (Waiting On You)”(2014年)の大ヒットから、はや6年。あれから大規模なワールド・ツアーを回り続けてきた彼らは、いつからか世界屈指のライブ・バンドと呼ばれるようになった。それが真実であることを日本のオーディエンスに証明してみせたのが、あの感動的な初来日公演だったのだ。

そんなフューチャー・アイランズが、通算6作目のスタジオ・アルバム『As Long As You Are』を発表した。メロディアスなベースラインとタイトなドラミングに支えられた、躍動的なシンセ・ポップ。そしてもちろん、サミュエル・T・ヘリングのこぶしが効いた歌声。そう、フューチャー・アイランズは何も変わっていない。そして、彼らがいまだ唯一無二の存在であることを、本作は確かに伝えている。

今回はそんな『As Long As You Are』のリリース記念、そして再来日祈願ということで、このバンドに熱い想いを捧げる関係者たちに顔を揃えていただいた。登壇してもらうのは、フューチャー・アイランズに熱烈なオファーをかけて初来日公演を実現させたSMASHの佐藤ハリー氏と、同じく今年の〈フジロック〉でフューチャー・アイランズをブッキングしたSMASHの山本紀行氏。そんな2人のアツい語りぶりを隣で聞いていた、フューチャー・アイランズ作品のリリース元であるBeatinkの田中木里子氏も、いてもたってもいられずバンドへの思いを語りはじめ……。現場の彼らだけが知るフューチャー・アイランズの素顔と、その魅力を語ってもらった。これを読めば、あなたもきっと彼らのことが気になって仕方なくなるはずだ。

FUTURE ISLANDS 『As Long As You Are』 4AD/BEAT(2020)

 

笑っちゃうけどハマるフューチャー・アイランズのライブ

――佐藤さんと山本さんがフューチャー・アイランズに注目するようになったきっかけを教えていただけますか?

佐藤ハリー(SMASH)「僕はSNSのタイムラインに流れてきたライブ動画を観たのがきっかけでした。最初に観たのはBBC出演時のライブ映像で、やっぱり最初は笑っちゃったんですけど、これが観ていくうちにハマってきて。

彼らは見た目が若くはないから〈なんでこんなにすごいバンドが今まで売れてなかったんだろう?〉と思ったり」

BBCの番組「レイター…ウィズ・ジュールズ・ホランド」での2014年のライブ映像。演奏している楽曲は2014年作『Singles』収録曲“Seasons (Waiting On You)”

――あの番組放送時(2014年)のサミュエルは、たしか29歳でしたね(笑)

佐藤「そう、じつはけっこう若かったんですよね(笑)。そこも含めて謎めいてたというか、とにかくインパクトがすごくて、それで来日公演をオファーしてみることにしたんです」

山本紀行(SMASH)「僕は楽曲を聴いたのが入り口で、映像を見たのはそのあとでした。気になり始めたのはちょうど『Singles』(2014年)が出る頃で、あのアルバムの数珠繋ぎ的な流れがすごく印象に残ってたんです。

ところが、その頃になるとアメリカではもうすっかり人気バンドになってて。よくある話ですけど、日本と海外での人気にかなりの差がついてたので、これは日本に呼ぶのはなかなか難しそうだなと。そうしたら、佐藤くんが果敢にアプローチしてたんです」

――そのアプローチが実って、2017年12月の初来日公演につながったわけですね。

山本「単独での初来日となると、どうしても会場が小さくなってしまうんです。でも、佐藤くんはそれでも掛け合ってみたいと」

佐藤「ええ。なるべく早く日本と海外の格差を埋めるきっかけを作らなきゃと思ってたので」

山本「実際、あのタイミングで単独公演が実現できたのは、本人たちの理解があったおかげだよね?」

佐藤「ホントそうですね。彼らは向こうではすでにアリーナ・クラスの会場でやってるバンドなので、日本だとその規模(の会場)はもちろん、それに見合うギャラも用意できないんですけど、彼らはそれでも日本でやりたいと言ってくれたんです。それこそ日本でのファンダムを築くためにも、規模とか関係なくやりたいんだと」

 

サミュエル・T・ヘリングは〈明るい陰キャ〉?

――実際に本人たちと対面したときはどんな印象を受けましたか? 彼らの人となりを教えてほしいです。

佐藤「彼らは……美大オタクというか、いま流行りの言葉でいうと、陰キャですかね(笑)。サムは明るめの陰キャ(笑)」

田中木里子(Beatink)「サムは日本に来た時、自分から挨拶しにきてくれたんですよ。こちらより先にアーティストから声をかけてくれることってまずないんですけど、サムはその場にいた全員に〈はじめまして。ヴォーカルのサムです〉と挨拶してまわってて。そんなアーティストってなかなかいないので、とても印象に残ってます」

山本「そう、サムはとにかく腰が低いんですよね。終演直後に楽屋を訪ねて〈素晴らしいショーだったよ!〉と伝えたら、彼は熱を帯びた口調で〈ありがとう! 僕らは本当に日本に来たかったんだ。また必ずくるからね〉と、ライブ終わりで汗だくのまま満面の笑みで話してくれて、この人は本当にいい人だなと」

佐藤「サム、すごい汗でしたよね。海から上がってきたばかりのような汗だった(笑)」

『As Long As You Are』収録曲“Thrill”

――ウィリアム・キャッション(ベース/ギター)とゲリット・ウェルマーズ(キーボード)はどんな人たちなんですか?

佐藤「サムもそうですけど、フューチャー・アイランズはみんな基本的にシャイな人たちですね」

田中「そうですね。ベースのウィルはこの自粛期間中にかなり体を鍛えたらしくて、今は体型がだいぶ細くなったみたいです(笑)」

山本「キーボードのゲリットは、パッと見た感じだとミュージシャンには見えないというか、ビジネスマンみたいな佇まいだったな」

田中「ゲリットはすごく面白い人なんですよ。というのも、彼は表情がまったく変わらないんです。それを気にかけた他のメンバーが〈彼は今すごく楽しんでるから安心してね〉と私たちに言ってくれたんですけど、それにしても無表情で(笑)。でも、どうやらメンバーが言ってたことは本当だったみたいで、ゲリットは内心めちゃくちゃ日本を楽しんでて、彼だけは一人で朝5時まで飲んでたんです(笑)」

佐藤「ゲリットは日本の古いレコードを趣味で集めているらしくて、あのときもマライア(清水靖晃のバンド)のレコードを探し回ってましたね」

『As Long As You Are』収録曲“For Sure”

 

これはもう絶対フジロックに呼ばなきゃ

――ライブの印象はいかがでしたか?

佐藤「正直にいうと、実際に観るまでは〈なんだかんだイロモノなのかも〉と思ってたんですけど、いざライブが始まったら、これがもうめちゃくちゃ素晴らしくて。あの予測不能なパフォーマンスにすっかり圧倒されたし、とにかくサムは歌が上手いんですよ」

山本「僕も最初のうちは〈めちゃくちゃ動くモリッシーだ!〉とか言ってたんですけど(笑)、そこから先はライブが進むほどに驚きと感動の連続でした。

始まったときは思わず笑ってしまったサムのパフォーマンスも、あれは別に面白おかしく見せようとしてるんではなくて、本気で表現しているからあの動きと歌唱になってるんだってことがよくわかってきて。最初から最後までずっと楽しかったし、今これほどのパフォーマンスができるバンドはそういないなと。これはもう絶対に〈フジロック〉に呼ばなきゃと思いました」

――サムのパフォーマンスは「レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン」に出演して話題になる前から、ずっとあのスタイルを貫いてるんですよね。本人からすればまったくウケ狙いではないんだろうなと。

山本「そうなんですよね。先日の配信ライブ(2020年10月9日に配信された〈A Stream Of You And Me〉)もそうでしたけど、拳で胸を叩く時の音をちゃんとマイクで拾っていたり、彼の動きはどれも考え抜かれたうえでのパフォーマンスなんだろうし、そこでカメラが寄ってこようがこなかろうが、普通にあれをやるんだろうなと。本当にサムはフォトジェニックだなと思いました」

「レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン」での2014年のライブ映像。フューチャー・アイランズはこのパフォーマンスで話題を呼んだ

佐藤「実際、僕はあの来日公演以降、フューチャー・アイランズの映像を以前よりもよく観るようになったし、音源もよく聴いてますからね」

山本「同じく。あれ以来、僕もふとしたときにフューチャー・アイランズのライブ映像を観たくなるんですよね。

ただ、TV番組とか配信でのライブだとスペースが限られてるじゃないですか。でも、実際のライブでは広いステージの右から左までサムが動き回るので、あれを〈フジロック〉の大きなステージで観れたら、もの凄いことになるんじゃないかな」

 

競技人口1人のスポーツをひたすら極めている感じ

――ついサムの動きに目が行きがちですが、フューチャー・アイランズは演奏力の高さにも定評がありますよね。

山本「来日公演の時もそこは印象的でした。なかでもドラマー(マイケル・ロウリー)がすごくよくて、どうやら彼は今回の新作からバンドの正式メンバーになったみたいですね。ああいうニュー・オーダーみたいにメロディアスなベースを聴かせるバンドは、ドラムがタイトじゃないと成り立たないんですけど、彼のドラムは抜群の安定感だった」

佐藤「さすがですね。それこそ僕は終始サムに釘付けだったので、ドラムの上手さには気が回りませんでした(笑)」

――彼らはよくニュー・オーダーを引き合いに出されますが、本人たちはクラフトワークの影響も公言していますよね。あくまでもパフォーマンスに関して言えば、フューチャー・アイランズとクラフトワークは真逆な気もしますが(笑)。

山本「たしかに。でも、サム以外の二人はまったくの無表情ですからね(笑)。あそこまでフロントマンと他のメンバーのテンションにギャップがあると、なんとなく観ていて冷めるライブもあるんですけど、彼らに関してはむしろそこがいいんですよね」

佐藤「今までたくさんライブを観てきましたけど、自分のなかでフューチャー・アイランズだけはちょっと違うんだよな。競技人口一人のスポーツをひたすら極めている感じというか(笑)。誰もがやってないことをたった一人で真面目に取り組みつづけているような熱さがあるんですよね」

――まさにオンリー・ワンだと。

佐藤「そう。だからこそ、日本で彼らの魅力を知ってもらうには難しいところもあるんです。きっかけとしては何がいいんだろう……。

たとえばサムは〈Hemlock Ernst〉名義でラップやってたり、マッドリブと一緒に〈Trouble Knows Me〉を組んでたりするので、そうしたヒップホップ・アーティストとしての側面を紹介してみてもいいのかな。バッドバッドノットグッドがサムをフィーチャーしたヴァージョンの“Seasons (Waiting On You)”とか、めちゃくちゃかっこいいですからね」

トラブル・ノウズ・ミーの2015年作『Trouble Knows Me』収録曲“Trouble”

バッドバッドノットグッドとサミュエル・T・ヘリングによる“Seasons (Waiting On You) ”のライブ映像

佐藤「あと、フューチャー・アイランズは物販がかわいいんですよ。彼らのデザイン面はベースのウィリアムが担当しているんですけど、そこはさすが美大出身者というか、センスいいんですよね。

あと、彼らは照明デザインも評判がよくて。大きな会場でやるときはかなり作り込んでくるんです。なんだかんだヴィジュアル面を大切にしてるバンドなんだなと」

 

ライブを観て号泣しちゃった

――では、これからフューチャー・アイランズを初めて聴く人にはどの曲をオススメしますか?

佐藤「それ、いちばん難しい質問かも(笑)」

山本「フューチャー・アイランズって、基本的に音楽性がずっと変わってないんですよね。聴き比べると音質面に関してはけっこう変化してるんですけど」

佐藤「シンセサイザーの音色なんかも、初期からずっと同じものを使ってますよね。彼らには〈これでいく〉と決めた音がすでにあるんじゃないかな。それを踏まえて、個人的には“Long Flight”という曲をオススメしたいですね。すごくノリがいい曲だし、海外の音楽をよく聴く人なら思わず反応してくれるんじゃないかな」

2010年作『In Evening Air』収録曲“Long Flight”

――スリル・ジョッキーから出していた初期作と、4ADに移籍した『Singles』以降の作品を聴き比べると、サウンド・プロダクションの質はだいぶ変わりましたよね。それこそ初期はローファイというか。

山本「初期作はまさにUSインディーって感じですけど、これがライブになるとサムのパフォーマンスによって印象がガラッと変わるんですよね。それは新作についても言えることで、この前の配信ライブでも“For Sure”をやってましたけど、やっぱり音源よりもクセが強くなってました(笑)。なので、予習と言ったらアレですけど、音源をしっかり聴き込むほどライブがより楽しめるというのはありますよね」

「レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルバート」での2020年のライブ映像。演奏している楽曲は『As Long As You Are』収録曲“For Sure”

佐藤「あと、フューチャー・アイランズの作品を聴く時は、ぜひ歌詞の翻訳を読みながら聴いてみてほしいですね。サムの書く歌詞は〈詩〉としての完成度がものすごく高いので」

山本「そう、フューチャー・アイランズは歌詞カードを読みながら聴きたくなるし、その内容を理解したうえでライブを観ると、サムの動作の見え方が全然ちがうんです」

田中「サムの歌詞は本当に泣けるんですよね……。私、普段はライブで泣くことなんてまずないんですけど、フューチャー・アイランズのときはホント号泣しちゃって。気づいたら自然と会場の前方に足が進んでたんです。

それにサムが歌ってる姿って本当にセクシーなんですよ。なかなか写真じゃ伝わらない魅力というか、これもまたライブを観てもらわきゃわからないと思うんですけど」

山本「うんうん。なので、好きなアーティストの宣伝でこんな言い方はおかしいけど、とりあえず騙されたと思って一回観てほしいんです(笑)。特にフェスだと観るものを選べるので、とりあえず30分だけでいいから、試しに観てほしいんですよね」

佐藤「もし今年の〈フジロック〉が開催されてたら、間違いなくフューチャー・アイランズは今年の大穴でしたよね?」

山本「僕らとしては完全にそのつもりだったよね。ものすごいバズるかもしれないし、観たらみんな絶対に腰抜かすよねって」

 

クセがスゴい! 千鳥ノブがフューチャー・アイランズにツッコむ?

――次回の来日が実現するとしたら、今のところは来年の〈フジロック〉出演が最有力なのでしょうか?

山本「そうですね。今年の〈フジロック〉に出演予定だったアーティストには、出来る限り来年も出てもらいたいなと思っていて、もちろんフューチャー・アイランズもそのひとつです。

本来であればフジのあとにアルバムのリリースが控えているはずだったんですけど、結果的にはその順番が逆になるので、それこそ新作で彼らに興味を持った方には是非ライブを観てもらわなきゃなと」

――フューチャー・アイランズは音源も素晴らしいんですけど、いちどあのライブを体感してしまうと〈早くこれをライブで聴きたい!〉となってしまいますよね。

山本「そうなんですよ。それこそサムの歌い方って、ライブだと音源よりもレンジが広がるじゃないですか。よりクセが強いというか」

佐藤「クセが強いかぁ……。いま思いついたんですけど、千鳥のノブにフューチャー・アイランズの映像を観てもらいたいですね(笑)。めちゃくちゃ突っ込んでもらえるじゃないかな」

――是非それは実現させてほしいです(笑)。

 


PROFILE: FUTURE ISLANDS
サミュエル・T・ヘリング(ヴォーカル)、ウィリアム・キャッション(ベース/ギター)、ゲリット・ウェルマーズ(キーボード/プログラミング/ギター)、マイケル・ロウリー(ドラムス/パーカッション/キーボード)の4人で構成されるフューチャー・アイランズ。活動初期からその独創的なスタイルに注目が集まり、カルト的な人気を獲得。アルバム『Singles』でその名を世界に轟かせると共に、TV出演などを通して唯一無二のライブ・パフォーマンスが話題となった。2017年に5作目のアルバム『The Far Field』をリリース、その後日本への初来日を果たし、熱くエモーショナルなライブに感極まり涙する観客の姿も見られるほどの圧巻のライブとなった。現在発売中の最新アルバム『As Long As You Are』は、過去の亡霊と向き合い、新たな希望を抱いている。正直さ、償うと、手放すことで、古い傷を癒し、痛みを伴った人生の章を終わらせることがで きるという内容になっている。ツアー・ドラマーだったマイク・ローリーが正式メンバー/ソングライターとして加わり、初期からのトリオを更にパワーアップさせ、明るいメロディーと、美しいコーラスに満ちたニューウェイヴ・シンセ・ポップは、バンドの14年間のキャリアの中でも特に多幸感と自由奔放な喜びに満ちた仕上がりとなっている。