ジャズとヒップホップの橋渡し以上のアクトへ
昨年レックスからリリースされたゴーストフェイス・キラーとのコラボ・アルバム『Sour Soul』でヘッズを歓喜させたトロントのジャズ/ヒップホップ・バンド、バッドバッドノットグッド(以下BBNG)。この度サックス奏者のリーランド・ウィッティが正式加入し、4人体制で初めて臨んだアルバムが『IV』である。この布陣の変化は、前作『III』以上にジャズやソウルへの憧憬が浮き上がり、ムーディーで夢見心地なサイケデリアで覆い尽くす形で表れている。それはリーランドがフィーチャリングとしてクレジットされた前作収録曲《Confessions》のようでもあり、ゴーストフェイスとの共演盤にも近い趣ともいえるものだ。
そんな新たな世界観を補完するためゲストによる援護射撃も過去にないほど強力。《Time Move Slow》で色気を含んだ野太いヴォーカルを響かせるシンセ・ポップ・バンド、フューチャー・アイランズのサム・ヘリングに始まり、ビザールなインスト・チューン《Lavender》では、先日発表したデビュー・アルバム『99.9%』へ参加したBBNGへのお返しとばかりにケイトラナダが腕を振るい、メリハリの効いた演奏でエモーショナルな展開をみせる《Hyssop of Love》では熱を帯びながらもクールなフローを披露するシカゴのラッパー、ミック・ジェンキンスを起用している他、ボン・イヴェールのアルバムやライブに参加するコリン・ステットソンによるサックスや同郷トロント出身のシンガー、シャルロット・デイ・ウィルソンのブルージーでメランコリックな歌唱も、BBNGサウンドと見事なまでに溶け込んでいる。
アルバム『III』がほぼ3人で制作したのに対し、今作でこうしたゲストたちと共演が実現したのも、バンド自身が感じているであろう、ジャズとヒップホップの橋渡し以上のアクトへと飛躍を遂げた証のようでもある。ロバート・グラスパーやフライング・ロータス周辺のクロスオーヴァー化の旗振りを担ってきた一連の作品群と合わせて聴いておきたい傑作だ。
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