ここ数年こそ、「アイドルマスター」の人気もあって歌ものに大きな注目が集まっているが、バンダイナムコスタジオ・サウンドチームの特徴と言えば、キャッチーなシンセと、レース・ゲーム「リッジレーサー」シリーズに代表されるダンス・ミュージックの影響を受けたサウンドだろう。かつてはNYの名門キング・ストリートとコラボしたこともあり、なかにはAJURIKAのように、独立後に海外のトランス・シーンで活躍するクリエイターもいる。
今回登場した「アイドルマスター」楽曲のリミックス盤『The Remixes Collection THE IDOLM@STER TO D@NCE TO』は、そんなチームの遊び心を全開にした作品。プロデューサーである中川浩二と今作のまとめ役を担った井上拓は制作の経緯を語る。
「日本コロムビアの担当者と話した時に〈自由にやってもらっていいです〉と(笑)。原曲の構成を守りながらのリアレンジは前にやったんですが、もっとディープで構わないと言われたんです」(中川)。
「勇気ありますよね(笑)。なので、どのキャラの声を使うか配置だけしっかり決めて、曲調は指示せず、好きにやってもらいました」(井上)。
結果、リミックスはサブベースの効いたエレクトロから、洗練されたリキッド・ファンク、ゴア・トランスやハッピー・ハードコア、ニンジャ・チューンばりのビートものなどヴァラエティーに富んだサウンドが、巧みにエディットされた声素材と心地良い調和を見せている。なかでも作品全体から薫るのは90年代ダンス・ミュージックの影響だ。
「世代的にテクノが大好きですし、スタッフに『リッジレーサー』が好きで入社してくる人もいるので、意図せずカラーになっているのかも。加えて原曲が大好きな人にお願いしてるので、愛情がこういう形になってます」(中川)。
「スタッフが活性化している感じがありましたね。“スタ→トスタ→ -AJURIKA Remix-”は自分が15歳の頃から影響を受けたドラムンベース風のサウンドで、AJURIKAさんらしくてすごい好きです」(井上)。
「僕は“THE IDOLM@STER”のリミックスが好きで、ディレイやヴォーカルの加工感が気に入ってます。最近は楽曲を構成から作っていくことが多いので、音の欠片から楽曲を作っていく雰囲気を持った今回のリミックスは新鮮でした」(中川)。
もともとはBGMの制作が多かった彼らだが、歌ものを制作する際に戸惑いはなかったのだろうか。
「最初はA、B、サビの構成に慣れませんでした」(井上)。
「アイドルマスターの曲はどれだけキャラクターを魅力的に見せるかが大事なので、トラックがカッコイイだけでは成り立ちません。今回は声を楽器の一部として使ったので、新境地という感じがしました」(中川)。
テーマを遂行するプロフェッショナルな部分と、本作のような自由度の高さのメリハリ。同チームの作り出す音楽の個性はどのように生まれたのか。
「実は『アイドルマスター』ももともとはアイドル・ソングとしての直球ではなくて、それが受け入れてもらえた結果大きくなっています。だから定番曲だけではなくて、おもしろいと思うものをあえて突っ込んでみるって姿勢は変わらないんですよ。僕らの強みはキャラクターと音楽を合わせることで、双方がかけ算的に作用して説得力が上げられる点。それをいろんな手法で仕掛けていけるんです」(中川)。
「このリミックスが何より〈遊び〉の証明ですからね」(井上)。
▼「THE IDOLM@STER」関連の楽曲を収めたベスト盤
左から、『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST! -THE IDOLM@STER HISTORY-』、『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST! -SWEET&SMILE!-』、『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST! -COOL&BITTER!-』、『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST! -LOVE&PEACE!-』(すべてコロムビア)
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