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コラム

ヤングブラッド(YUNGBLUD)『Weird!』 プレッシャーに苛まれる世代の多様な声を代弁する2020年代型のロックスター

  「これは、成人して大人になった自分自身を受け入れながらも自由であり続けることについての話なんだ。セクシュアリティやドラッグ、失恋、そして生きていて毎日直面するいろいろな困難も含めてね」。

YUNGBLUD 『Weird!』 Interscope/ユニバーサル(2020)

 ニュー・アルバムについてそう語るのはヤングブラッド。ヴィジュアルだけを見て当世流のエモ・ラッパーかと思う人もいそうだが、約2年半ぶりの新作『Weird!』で日本デビューを飾る彼は、英国が生んだグラマラスな2020年代型のロック・スターだ。つい先頃にはブリング・ミー・ザ・ホライズンの新曲“Obey”にフィーチャーされて注目を集めた絶好のタイミングに、己の真価を問う勝負の一枚を完成させたというわけである。

 イングランド中北部のドンカスターで生まれたヤングブラッドことドミニク・リチャード・ハリソンは、97年生まれの現在23歳。10歳の頃から曲を書きはじめ、クラッシュやNWA、キュアー、ニルヴァーナ、マイ・ケミカル・ロマンス、レディ・ガガらに影響を受けつつさまざまな楽器の演奏をマスターするなど、早くからプロのキャリアを志していた早熟なマルチ・ミュージシャンだ。2017年の春に初のシングル“King Charles”をインディー・リリースしてすぐ大手の目に留まり、2018年にはセルフ・タイトルのEPで早くもメジャー・デビューしている。

 メロディアスなポップ・パンクやオルタナを下地にモダンなエレクトロやヒップホップ、伝統的なロックやニューウェイヴの影響も感じさせるミクスチャーな音楽性は、いまなら一口に〈ポップ〉と括って差し支えない。そんなキャッチーで親しみやすいサウンドに乗せて恋愛の不遇や反抗を歌ったナイーヴな作風が同世代を中心に支持を集め、2018年のフル・アルバム『21st Century Liability』リリース後は欧州各国や北米で公演を行っている。この頃にはホールジーの交際相手として名前を知った人もいるかもしれない。

 そのホールジーとは2019年にコラボ曲“11 Minutes”を発表するに至るが、しばらくして破局。それでも同年のEP『The Underrated Youth』は全英6位を記録するヒットとなり、マシン・ガン・ケリー×トラヴィス・スコットのヒット“I Think I'm Okay”やマシュメロ×ブラックベアーの“Tongue Tied”への客演もあって、着々と知名度を拡大していく。そんななかで届いた新作『Weird!』は満を持してのセカンド・フル・アルバムというわけだ。

 活動初期からサポートするヴェテランのマット・シュワルツ(カイリー・ミノーグ、NCT他)に加え、EP以降のヒットに貢献したクリス・グレアティ(ブリンク182、ポピー、グライムス他)とザック・セルヴィニ(MGK、オール・タイム・ロウ他)をプロデューサーに迎え、レコーディングはロンドンとLAを拠点に行われた。より確信を持ってパンキッシュなサウンドを感情的に鳴らしつつ、ビートルズ経由のパワー・ポップもあれば、クイーン風のハーモニーもあり、ニューウェイヴやディスコ・パンク、グラム・ロックの美意識も折衷されている。多彩な意匠をストロングな歌唱力で束ねる姿は往時のアダム・ランバートを連想させるものだが、エンタメ的なゴージャスさよりもヒップホップ世代らしいストリート感が前に出てくるのはヤングブラッドならでは。プレッシャーに苛まれる世代を代弁するかのように〈神様、僕を助けて、でも消さないで〉と訴える先行シングル“God Save Me, But Don't Drown Me Out”をはじめ、深い内省を率直にさらけ出すアプローチも彼らしいものだろう。みずからもセクシュアリティ・フルイディティ(性的流動性)を自認するまで長く苦しんだという彼の表現は、多様性が叫ばれるなかで多様な悩みの絶えない若者たちを、キャッチーで刺激的なポップ・チューンと共に肯定し続けているのだ。

 「自分自身の居場所がわからなくなったり、物事が歪んで見えたり、変だなと思ってもいいんだ、大丈夫なんだって、このアルバムを通してみんなが思ってくれることを願ってる。だって実際に人生なんておかしいことの連続だからね! でも同時に、それが人生の美しいところなんだろうなとも思う。だから、みんなも誰かの人生を生きようとしないで、自分自身の人生を生きてほしい」。

 


ヤングブラッド
本名ドミニク・リチャード・ハリソン。97年⽣まれ、イングランドはドンカスター出⾝のロックスター。10歳で楽曲を書きはじめ、ミュージシャンをめざして16歳でロンドンに移る。2017年に初のシングル“King Charles”を発表。メジャー契約を獲得した2018年にはEP『Yungblud』とフル・アルバム『21st Century Liability』をリリースし、国内外の大型フェスに出演を果たす。2019年のEP『The Underrated Youth』が全英6位まで上昇し、マシン・ガン・ケリー“I Think Im Okay”など数多くのコラボを経験。今年に入ってブリング・ミー・ザ・ホライズン“Obey”への客演も話題となるなか、セカンド・アルバム『Weird!』(Interscope/ユニバーサル)を12月4日にリリースする。

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