コラム

般若の生き様が刻まれたドキュメンタリー映画「その男、東京につき」

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般若のドキュメンタリー映画「その男、東京につき」を先行プレヴュー!

 近年は俳優としてドラマや映画にも出演し、自身のMVでもシリアスからユーモラスまで屈託なくその演者ぶりを見せてきた般若だが、もとよりパーソナルな部分を好んで露出するわけでもなく、その見えざる内面をここまで率直に語る被写体としての姿はそうそうお目にかかれないわけで、その一点だけにおいても、これは十分に見応えのある作品と言えるのかもしれない。この年末から全国公開される映画「その男、東京につき」は、さまざまな経験をくぐり抜けて念願の日本武道館でワンマンを行った男のドキュメンタリー作品だ。

 彼が日本武道館での単独公演〈おはよう武道館〉を行ったのは、2019年の1月11日。この映画ではライヴ当日の模様をパフォーマンスも含めてインサートしながら、その楽曲のバックグラウンドや当時の出来事を本人や関係者が振り返ることで、結果的に般若という男のライフ・ストーリーを追体験できるという構成になっている。武道館という場所はジャンルを問わず多くの音楽アーティストにとって格別な思いとこだわりを引き寄せてきたものだが、般若がなぜ武道館をめざすようになったのかの経緯も、段階的に浮き彫りになっていくという格好だ。

 何より、楽曲の中で断片的に触れられてきた壮絶な過去について般若自身が赤裸々に語っている。“家族”で描かれた父親への想い、“素敵なTomorrow”でコミカルに明かされていた壮絶ないじめ経験、さらには音楽との出会いとジレンマ。高校時代にRUMIと組んだグループ〈般若〉のMCというスタート地点については、そのDJを務めていたBAKUが思い出の扉を開き、いまや語り草となっているラジオ番組の生電話出演時の不遜な様子については、そのとき受話器の向こう側にいたZeebraが改めて懐かしむ。さらに三軒茶屋から東京のシーンに(文字通り)殴り込んだ妄想族の時代について、メンバーのGamiが口を開いているのも興味深い。現場で交流の生まれたAIが楽しそうに当時の般若の〈怖さ〉を振り返っているのも貴重だ。このあたりは当時の日本におけるヒップホップ~クラブ・シーンのザワザワした空気感も含めて思い出せる人も多いのではないだろうか。

 一方、転機になったエピソードなども挿みつつ、ソロ・アーティストとしてグングン頭角を表していく姿については、ファン目線から彼のことを見つめてきた世代が証言を寄せている。武道館公演にもゲストとして出演を果たしたt-Ace、R-指定、T-Pablowといったスタイルの異なる後進たちが、彼の背中をそれぞれの角度からどのように見ていたのかも実に興味深いポイントだろう。なお、映画には武道館のステージ裏の模様もフィーチャーされているので、当日のライヴを現地や映像作品で体感した人ならより楽しみも増すはずだ。

 もちろん、このドキュメンタリーの芯になるのは単なる回顧ではない。そして般若にとって武道館がゴールじゃないのは、当日のステージでも改めて宣言した通りだ。撮影がコロナ禍の状況下でも行われていたこともあり、結果的には彼が現在と未来に寄せる想いもドキュメントされる形になった「その男、東京につき」。ぜひ劇場でこの熱い重みを体感してほしい。

般若の近作。

 

般若の日本武道館公演の模様を収めたDVD「おはよう武道館」(昭和レコード)

 

 


CINEMA INFORMATION

「その男、東京につき」
【出演】般若、Zeebra、t-Ace、R-指定(Creepy Nuts)、T-Pablow、Gami、BAKU、松井昭憲、ほか
【監督・編集】  岡島龍介
【撮影監督】 手嶋悠貴
【エグゼクティブプロデューサー】 ショガト・バネルジー、ジョン・フラナガン、福井靖典、松本俊一郎
【プロデューサー】 上田悠詞
【製作】  A+E Creative Partners
【協力】 昭和レコード
【配給】 REGENTS
【配給協力】 エイベックス・ピクチャーズ
■12月25日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
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