1年半ぶりの5作目。ジャズやネオ・ソウルやクラブ・ミュージックといった彼の源泉となる音楽からのエッセンスは感じるものの、どのカテゴリーに寄せているでもない、Kan Sano流ポップスの現時点での完成形といえる充実作だ。楽曲はこれまでになくビートは強めでBPMも早めなものが多い印象。ローファイ・ヒップホップのマナーに則りつつ、泣けるほどノスタルジックな心象風景をピアノで描く“On My Way Home”や、SNSの既読という卑近なトピックを抒情的なフックに昇華するハウス“She's Gone”など、身体を踊らせつつもどこかに心が引っかかったままになる世界観は、シルキーな吐息の歌声と合わさることでその効果を倍増する。アルバム単位で浸り尽くしてほしい逸品。