時間や感情の移ろいと個々の進化によって、強く濃く深まってゆく青の物語――待望の新作『Blue Cresc.』は彼女たちの過去も現在も未来も描き出す傑作となった!

 「新しい、大きな一歩を踏み出せた大切な一年でした。いままで一緒に歩んできてくれたファンだったりスタッフさんだったり、いろんな方々に改めて〈大きな幕開け〉を見せられた年だったと思います。そういう気持ちにみんながなれるように〈悲しいことも苦しいも乗り越えてちゃんと強くなっているよ!〉と強く歌ったら、それに負けじと目の前にいるみんなが全力で返してくれて。感謝と強さの一年でした」(綾瀬志希)。

 前年末の傑作EP『#0F4C81』を受けて始まったCYNHN(スウィーニー)の2021年。5~6月には久々の東名阪ツアーを行い、9月には渋谷WWWXでのワンマン〈Our Blue〉も行うなど、活動にブレーキのかけられた前年と比べれば動きのある一年だったのは確かだろう。そのなかでも定評のある音楽性はやはり彼女たちの色を強く特徴づけるもので、ケンカイヨシやmol-74、トオミヨウ、蒼山幸子、草野華余子といったクリエイター陣と手合わせした『#0F4C81』はもちろん、メイン・ソングライターの渡辺翔がメンバー個々の心情を転写したようなシングル“AOAWASE”は、〈青い未完のヴォーカルユニット〉を謳う彼女たちに相応しい繊細な名曲だった。それらの成果を丹念に織り合わせたのが、今回のニュー・アルバム『Blue Cresc.』である。

CYNHN 『Blue Cresc.』 I BLUE(2022)

 フル・アルバムとしては初作『タブラチュア』(2019年)から2年7か月ぶり。それ以降の傑作シングル群“2時のパレード”“水生”“ごく平凡な青は、”やEP所収の曲も現体制での〈-ν-〉ヴァージョンとして新録され、そこに3つの新曲も加えた充実の内容は、〈ブルークレッシェンド〉と読むタイトルの通り、さらに強く、濃く、深まっていく青を体現している。

 「クレッシェンドが〈だんだん強く〉という意味であるように、青々しく未完だった『タブラチュア』までのCYNHNが、“2時のパレード”から違った青に変化して大人になっていく様を重ねて考えています」(青柳透)。

 「ひとつの終わりでもあり始まりでもあるような作品になったと思います! 既発曲たちを再録音したヴァージョンは、その時々の出来事を思い出しながらレコーディングしました。また新曲はどれもいままでと違った新しいCYNHNを表現できそうな曲で、これからの展開も楽しみになっています」(月雲ねる)。

 そんな新曲のうち最初に先行配信されたのは、以前“2時のパレード”のリミックスも手掛けたKan Sanoの作編曲による“レア”。夢心地なシンセやリズムの出し入れを伴ったチルな意匠とCYNHNらしい情緒が混じり合う雰囲気が新鮮だ。

 「〈青藍とけ込み更新中〉の音がクジラの声のように聴こえるところや、2番Aメロのリズムにポタポタ、ちゃぽん、という雫の落ちる音が入っているのがとても好きです。普通なら使わないような音が要所要所に入っていて聴きどころがたくさんあります! 雨が降っているみたいな裏打ちのハイハットも入ったり、すべての音がすごくいい世界観を出していて、そういった〈物語性〉みたいなものを聴いてもらいたいなと感じました。歌も歌詞も普段とはまた違う一面を見せているので、いろんな方向でレアです」(綾瀬)。

 「“2時のパレード”のパラレルワールド的な世界観の歌詞なので、繋がりを探すのも楽しいと思います。歌の面では、ブレイクの〈笑おう〉から最後までを正直何回も録り直しました。ファルセットを使わないでギリギリ歌えるくらいの高音なのでライヴでも必死に歌っています。そのため音源とライヴでギャップがあるので、ぜひどちらも聴いていただきたいです!」(青柳)。