〈流水不腐〉を体現するカルテットが本格始動
nagaluレーベルからファースト・アルバム『星を漕ぐもの』をリリース!
ギターの藤本一馬、ピアノの栗林すみれ、ダブル・ベースの西嶋徹、ドラムの福盛進也。シーンで確固たる個性を確立している4人が集まったグループがレムボートだ。
栗林「去年の1月だったか、一馬さんとデュオをやって、その日に徹さんが聞きに来てくれたんです。それで、同じ日に公園通りクラシックスで（佐藤）浩一さんとデュオをしていた進也さんに電話をしたんですよ。そして、この4人でもやりたいねという話になったんです」
西嶋と福盛は藤本一馬カルテットのメンバーであるなど、付き合いは密。SOMETHIN’COOL発の5作品をはじめリーダー作を活発に出している栗林は、2019年にミュンヘンでウォルター・ラング（昨年12月に逝去）と福盛と3人でライヴをした事が縁で、その輪に加わった。そのレムボートの最初のライヴの感想を問うと、全員が「気持ち良い」という言葉を口にした。
福盛「ふわーという不思議な感覚を覚え、気持ち良かったですね」
栗林「私は目の病気をして調子が悪かったのにも関わらず、すごい気持ち良く演奏できたんですよ。そんな体調ではちゃんと演奏できないと思っていたところ、とても幸せに演奏でき、3人のことが本当に大好きになりました」
西嶋「なんとなくふわりとしていて、気持ちいいなと思いましたね。もともと一馬君のカルテットでずっとやっていたので、すごいニュートラルな感じですうっと入っていけました。なんか温泉に入る感じ、でしたね」
藤本「僕も最初から気持ち良かったですね。皆素晴らしいコンポーザーでもあるので曲を皆で高め合うというか、その中にインプロヴィゼイションも当たり前のように入ってくるんですが、そんな感じでサウンドを編み上げていくのはすごい幸福な体験でした。4人で、一つの物語を作っていくようなライヴでしたね」
そして、2回目のライヴを終えた時には、レコーディングをする話が出たという。ちなみに、そのグループ名は〈手漕ぎ舟〉を意味するエスペラント語が引用された。
藤本「それは、徹ちゃんがつけてくれました」
西嶋「皆でグループ名を付けましょうとなって、いろいろ案を出したんです」
福盛「もともと、徹さんの“星を漕ぐもの”という曲がこのグループを象徴する曲だと4人とも感じていたんですよ」
取材には、メンバー4人で和気あいあいと対応する。相手のファースト・ネームで呼び合う会話が示唆するように、その第一作『星を漕ぐもの』における4人の重なりは実に自然。そんな演奏は確かなインタープレイを孕むものの、その総体はたおやかに流れ、聴く者を優しく包む。それは4人がサウンドを俯瞰するような視点で音を出し合い、また全員が余韻とか余白という部分に自覚的であるからのように思える。
藤本「このカルテットは全員がリーダーなんです。それぞれの曲を演奏し合うことで同じ綱を渡り、全員でゴールを目指していくという感覚に幸福を覚えますね。全員がリーダーである事が、この4人だと自然に成り立つんです」
『星を漕ぐもの』は2枚組で、福盛進也の新機軸レーベルであるnagaluの第3弾作品となる。4人が持ち寄った確かな風情を抱えた楽曲のもと、語りつくさない美と静かなスリルが悠々と開示される。だからこそ、そこに宿る魔法は持続し、聞き手の想像性が入り込む余地も存分に出てこよう。そして、ああこんなジャズも今は出てきているんだという感慨にも繋がっていく。
福盛「曲の構成や編成はnagaluの中では一番ジャズっぽいのに、この4人で演奏するといわゆるジャズにはならず、新たな可能性を示すことができる。そこが魅力でもあり面白さだと思います」
藤本「音の響きとかを共有できる安心感があります。それって、あえてエゴをなくそうというよりはこの4人でやるとそういう状況に導かれるということかもしれませんね」
西嶋「いい日本酒を飲んだ時に水みたい、と言ったりするじゃないですか。これ見よがしに美味しいでしょという感じではない味わいがあると思います」
栗林「いいバンド。皆、最高だと思います」
PROFILE: レムボート (Remboato)
現在のジャズ・シーンにおける重要プレイヤー／コンポーザー4名、藤本一馬（ギター）、栗林すみれ（ピアノ）、西嶋徹（ベース）、福盛進也（ドラムス）が集結したスーパー・グループ。2021年3月よりこのメンバーで活動をスタート。透明感に溢れる叙情的かつ骨太なサウンドは、ライヴを重ねるたびにスケールを増してきている。nagaluレーベルのコンセプトである〈流水不腐〉を体現するカルテット。
LIVE INFORMATION
Remboato『星を漕ぐもの』リリースコンサート
2022年2月27日（日）東京・渋谷 公園通りクラシックス
開場／開演：15:00／15:30
http://koendoriclassics.com/
