PR
コラム

ジョナス・ブルー(Jonas Blue)『EST.1989』日本のファンに向けた新作が証明するサウンドの進化とポップセンスの真髄

進化し続けるサウンドでダンス・ミュージック界をリードするDJ/プロデューサー、説明不要のジョナス・ブルーから日本のファンに向けてアルバムが届いたぞ!

 外側に向かって言葉だけが一人歩きしすぎたせいでEDMやトロピカル・ハウスといったワード自体が極端に使われなくなって久しいが、どのように呼ばれようといわゆるエレクトロニック・ダンス・ミュージックは鳴り響き続けているし、その言葉の内側にあるサウンドやスタイルはもっと多様でそもそも時代と共に変化を続けているものである。そんなわけで、現在のダンス・ミュージック界をリードしているトップDJ/プロデューサーのジョナス・ブルーに関しても、多彩なサウンドを模索しながら着実にキャリアを前に進めているのは言うまでもない。

 そもそも89年生まれのジョナス・ブルーことガイ・ジェイムズ・ロビンは、クラブに行ける年齢になる前からパソコンで曲作りに没頭し、イビザ島のクラブ・ライフを描いたTV番組「Club Reps」に夢中になっていたという根っからのダンス・ミュージック・ラヴァーだ。14歳の時に地元のクラブでDJを始めるようになって以降、別名義での動きなどもありつつ、フロアやリスナーを楽しませるべく研究と研鑽を重ねてきた結果が、母親が大好きだったというトレイシー・チャップマンの88年ヒットをトロピカル・ハウスでカヴァーした“Fast Car”(15年)であった。ダコタの歌う同曲でポジティヴァからデビューするや全英2位を獲得し、以降も“Perfect Strangers”(16年)や“Mama”(17年)などをコマーシャル・ヒットに送り込んだ彼は、持ち前のダンス・ミュージック愛をポップソングの範疇で機能させるべく、積極的に多彩なコラボレーションを繰り広げていく。

 そのポップセンスを集大成したのが18年のファースト・アルバム『Blue』であり、とりわけジャック&ジャックをフィーチャーした“Rise”であった。これは後にIZ*ONEの歌唱ヴァージョンも作られて日本でも大人気となり、アルバムはダンス系作品としては珍しく日本ゴールドディスク大賞で〈Best New Artist〉を受賞している。楽曲の世界総再生数が100億回を超える彼が日本においてもいかに広い間口で親しまれているかは、18年の〈ULTRA JAPAN〉、19年の〈フジロック〉や〈めざましサマーライブ〉といった出演フェスの振り幅からも明白だろう。そして、2021年4月に自身最大規模の来日ツアー〈The Blueprint 2020 Japan Tour〉も控えるタイミングで、日本のファンのためだけにアルバムがリリースされた。

 生まれ年に由来して名付けられた『EST.1989』は、『Blue』以降にリリースされたクラブ/ストリーミング・ヒットを中心に、最新トラックやリミックス、初音源化ヴァージョンなどを集めた一枚だ。とりわけマックスの歌うグルーヴィーなディスコ・ファンク・タッチの“Naked”(20年)はまた新しいジョナス像を見せてくれるものだし、パロマ・フェイスを迎えたアップリフティングなハウス“Mistakes”(20年)も従来の清涼感をより突き詰めた出来映えで最高。もともとクレイグ・デヴィッドや韓国のGOT7、最近ではエイバ・マックスらの楽曲制作も手掛けているだけに、彼のポップな懐は思った以上に深かったというわけである。

 2020年式のトラックではレトロヴィジョンとのキャッチーなコラボ“All Night Long”、ティファ・チェンを迎えたミッドテンポの“Billboard”も強力。それに加えてMK(マーク・キンチェン)&ベッキー・ヒルとの人気曲“Back & Forth”(18年)やアーリッサとの“Hearts Ain't Gonna Lie”(18年)などアルバム未収録だったヒットも収録されている。他にも出世作“Fast Car”のライヴ・セット用トラックが初音源化されていたり、ビートレスのチルな雰囲気に仕上がった“Naked(Poolside Acoustic Mix)”も聴きものだ。ティエスト&リタ・オラやIZ*ONE、HRVYとの既発曲もまとめて収録されており、この機会にまとめて楽しむのも良し。ツアーの行方はさておき、フロア以外にもフィットする最高にポップで楽しい一枚であることは間違いないだろう。

TOWER DOORS