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コラム

ビー・ジーズ(Bee Gees)の偉大な名曲たちをバリー・ギブ(Barry Gibb)のセルフ・カヴァー集と振り返る

バリー・ギブが贈るビー・ジーズの偉大なソングブック

 50年超のキャリアを誇るバリー・ギブは、ビー・ジーズの結成メンバーの一人であり、弟のモーリス&ロビンと共にロックンロール史において最大の成功を収めたヴォーカル・グループの一員である。セールスや受賞歴を挙げていけばキリがないが、現在までに2億枚を超えるアルバム・セールスを上げ、グラミーは8回受賞したほか〈特別功労賞〉や〈生涯業績賞〉も授かっている、94年には〈ソングライターの殿堂〉、97年には〈ロックの殿堂〉入り。弟たちが亡くなってグループの活動は永遠に失われてしまったが、ただ一人残されたバリーは18年にチャールズ皇太子よりナイトの爵位を授与され、いまや〈サー・バリー・ギブ〉と呼ばれる存在である。

 1946年に生まれたバリー・ギブは英国領マン島出身のマンチェスター育ち。49年位は双生児のロビンとモーリスが生まれている。初年時代から教会の聖歌隊で活動を始めたギブ3兄弟だったが、58年には父親の仕事の都合からオーストラリアのクイーンズランド州に移住。そこで兄弟はグループを結成し、バリー・ギブ& ザ・ビー・ジーズとして63年にレコード・デビューを果たしている。当初は兄弟以外にも演奏陣がメンバーに連ねる体制で活動し、エヴァリー・ブラザーズやビートルズに触発されながら活動を続けていった。やがてブライアン・エプスタインの目に留まって英国へと帰国することになり……と、バリーとビー・ジーズの長く濃く波瀾万丈なヒストリーはここから始まるのだが、67年に英ポリドールからワールドワイド・デビューを果たした彼らはソフト・ロック~ハーモニー・ポップ寄りの音楽性で最初の大成功を収めている。この時期の彼らは日本でもレコード・デビューし、特に映画「小さな恋のメロディ」(71年)によって広く知られる存在となった。

 その後の活動低迷などを経て、75年に渡米した彼らはアリフ・マーディンの導きによってファルセット・ヴォーカル&ファンク・サウンドというソウル・グループ風のスタイルに大きく転換。ここで訪れたディスコ・ブームと映画「サタデー・ナイト・フィーバー」(77年)によって、ビー・ジーズは英国時代よりも一段階上を行く世界的なブレイクを果たしたのだった。

 こうした2度に渡る黄金期を経た80年代以降は、アダルト・コンテンポラリーな方向性にシフトしつつ、メンバーはプロデュース業やソロ活動に着手。浮き沈みもありつつ幅広い世代の支持を得ていくのだが、03年にモーリスが他界してグループは解散状態に。その後バリーとロビンのみで09年に活動を再開するも、今度は12年にロビンがこの世を去ってしまう。

BARRY GIBB 『Greenfields: The Gibb Brothers Songbook Vol.1』 Capitol/ユニバーサル(2021)

 モーリスやロビンを失って以降のバリーはプロデュースも含むマイペースな活動に移行していたが、16年には実に32年ぶりのセカンド・ソロ作『In The Now』を発表。このたびリリースの『Greenfields: The Gibb Brothers Songbook Vol.1』は、それから約5年ぶりのアルバムということになるから近年の彼にしてはハイペースなのかもしれない。そこで披露されているのは、バリーが単独/もしくは兄弟と書いてきた(主に)ビー・ジーズの名曲たちをアメリカーナ系アーティストとのコラボでセルフ・カヴァーしたものだ。もともとのきっかけは息子から聴かされたクリス・ステイプルトンの楽曲に惹かれ、そのプロデューサーであるデイヴ・コブにコンタクトを取ったところからこの作品はスタートしたという。ビー・ジーズを一面的にしか知らない人なら意外な展開に思われるかもしれないが、もともとブルーグラスやカントリーをルーツに持つバリーだけに、このアイデアはいたく気に入ったようだ。

 「ナッシュヴィルのRCAスタジオに足を踏み入れたその日から、アルバムが自然と一つの形になった。デイヴとスタジオに立ち寄ってくれたアーティストの皆には感謝しかないよ。彼ら全員が時間と才能を惜しみなく提供してくれて、言葉では言い表せないほどインスピレーションを与えてもらった。モーリスとロビンもいろんな理由でこのアルバムを愛してくれたことだろう。このアルバムに3人で一緒にやれていたら……いや、一緒にやったと思っている」。

 中身の詳細は隣のページに譲るとして、多くの才能たちと名曲を再解釈した『Greenfields: The Gibb Brothers Songbook Vol.1』は全英アルバム・チャートで初登場1位を獲得したばかりで、これはバリーにとってソロでは初の全英No.1アルバムとなった(ビー・ジーズでは5曲のシングルと79年作『Spirits Having Flown』が全英1位を獲得している)。もちろん〈Vol.1〉というからには、〈Vol.2〉〈Vol.3〉……にも十分に期待していいだろう。ビー・ジーズが紡ぎ出してきた美しく多面的な世界への再評価はまだ始まったばかりのはずだ。

関連盤を紹介。
左から、ビー・ジーズのベスト盤『The Ultimate Bee Gees』(Reprise)、バリー・ギブの2016年作『In The Now』(Columbia)

 

デイヴ・コブの手掛けた近作。
左から、ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンドの2019年作『Brighter Days』(Provogue)、クリス・ステイプルトンの2020年作『Starting Over』(Mercury Nashville)

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