
50年という時間をかけてユニヴァーサルな支持を獲得してきた日本の音楽界の至宝。その進化と深化の過程を確認できるアニヴァーサリー作品が登場!
はっぴいえんどの一員として日本語ロックの礎を築き、ソロ・アーティストとしては日本人ならではのエキゾチック・サウンドを発明。さらにYELLOW MAGIC ORCHESTRAではテクノ・ミュージックのムーヴメントを引き起こし、ふたたびソロに転じた後は、エレクトロ・ファンク、アンビエント~エレクトロニカなどさまざまな変遷を経て、自身のルーツである20世紀半ばの音楽に回帰……したかと思いきや、昨今は改めて打ち込みの音楽に興味が戻り――と、風の吹くまま気の向くまま、音楽的な興味に従いながら刺激的かつ独創的なクリエイティヴを続け、世界中のミュージシャンに多大な影響を与えている細野晴臣。デビュー50周年イヤーの活動を音源/映像化した作品が次々とリリースされ、ポピュラー・ミュージックの巨人の存在感に今また注目が集まっている。

東京・恵比寿ザ・ガーデンホールで行われたイヴェント〈祝!細野晴臣 音楽活動50周年 × 恵比寿ガーデンプレイス25周年『細野さん みんな集まりました!』〉、六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー・スカイギャラリーで催された記念展〈細野観光1969-2019〉など、50周年を記念したイヴェント/ライヴが数多く企画された2019年。今回届けられた映像作品は、「細野晴臣50周年記念特別公演」(11月30日、東京国際フォーラム ホールA)、「イエローマジックショー3」(12月1日、東京国際フォーラム ホールA)、ドキュメンタリー映画「NO SMOKING」の3作。これらは「Hosono Haruomi 50th ~ Music, Comedy and Movie」としてボックスにまとめられてもいる。

細野晴臣 『あめりか / Hosono Haruomi Live in US 2019』 スピードスター(2021)
さらには、ライヴ盤『あめりか / Hosono Haruomi Live in US 2019』も登場。2019年6月に行われたUSツアーから、LAのマヤ・シアター公演における18曲を収めており、細野にとってソロでは初のライヴ・アルバムとなる。リトル・リチャードの歌唱でも知られる“Tutti Frutti”のカヴァーで幕を開ける本作は、2010年代以降の細野晴臣の音楽の変遷、そして、〈ルーツに戻りつつ、先に進む〉という絶妙なバランス感覚を実感できる作品だ。軸になっているのは“Ain’t Nobody Here But Us Chickens”“Angel On My Shoulder”といったブギウギやロックンロール。また、初のソロ作『HOSONO HOUSE』をリメイクした『HOCHONO HOUSE』のヴァージョンで演奏された“薔薇と野獣”“住所不定無職定収入”からは、音楽的な地層の繋がりを感じ取ることができる。
ラストはYMO時代の名曲“Absolute Ego Dance”。曲が始まった瞬間に大きな歓声が沸き、細野の音楽が年齢、国境を超えて支持されていることがリアルに伝わってくる。アメリカ音楽への憧憬から始まり、テクノロジーの発展と自身の音楽観の深まりによって進化を繰り返してきた細野の音楽は、50年という時間をかけてユニヴァーサルな価値を獲得してきた。本作はその事実を証明している。
細野晴臣の近作。
左から、2013年作『Heavenly Music』、2017年作『Vu Jà Dé』、2019年作『HOCHONO HOUSE』(すべてスピードスター)
『Hosono Haruomi 50th ~Music, Comedy and Movie~』の中身をそれぞれ紹介
2000年代後半以降の細野のライヴ活動を支えてきた高田漣(ギター)、伊賀航(ベース)、野村卓史(キーボード)、伊藤大地(ドラムス)と共に行った50周年特別公演を完全収録。細野が幼少の頃から親しんでいたミッド・センチュリーのブギウギ、ラテン、ロックンロールのカヴァーを中心に、“Body Snatchers”“Sports Men”などのソロの名曲も。リズムの揺れまでも計算に入れた緻密な演奏と、リラックスしたトークのコントラストも楽しい。
過去に2度放送された〈イエローマジックショー〉の舞台版とも言える公演を収録。小山田圭吾、安部勇磨(never young beach)、清水ミチコ、清水イチロウ、ジョイマン、高橋幸宏、豊崎愛生、ナイツ、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、星野源、水原希子、水原佑果、Little Glee Monster、U-zhaan、宮沢りえ、ロッチらが出演し、コントあり音楽ありの演芸大会が繰り広げられる。YMOによる“Cosmic Surfin’”“Absolute Ego Dance”の遠隔セッションなど超貴重な記録も。
1947年に東京で生まれ、海外のポピュラー音楽に親しんだ幼少期から始まり、はっぴいえんど/YMOの結成秘話からソロ・アーティストとしての変遷まで、50年に及ぶ活動を貴重な映像やインタヴューと共に追体験できる。なかには、2019年のロンドン公演で細野、高橋幸宏、坂本龍一が5年ぶりに共演した際の映像も。細野自身の人生を辿ることで、20世紀後半から21世紀にかけての音楽の移り変わりを感じられるのも興味深い一枚となっている。


