『bedtime story』以来となる約1年ぶりの新作は、熱量の高い4曲入りのEP。このタイトルを付けるだけで自然と肩に力が入るであろう“東京”は、サビのドライヴ感とアウトロの轟音パートが印象的で、〈闇に撃ち放つ 太陽の照明弾〉という歌詞通り、先行きの見えない世界を照らし出すようなインパクトがある。原曲のストリングスを省き、ソリッドな3ピースの演奏で仕上げたSEKAI NO OWARI“天使と悪魔”のカヴァーもいい。

 


スコーンと晴れた爽やかな空と東京の街。始まる新しい季節。テトリスやパズルのごとく、自分の居場所を探してはどこかにすっと収まる季節。全てが新しくて美しくて、ちょっぴり不安や緊張はあるけれど、それ以上の期待や希望があって大きな問題は何もない。

リーガルリリーのヴォーカル/ギター、たかはしほのかのどこまでも無邪気で汚れのない歌声は、まるでそんな新生活の光景を思い起こさせる。しかしその歌声は、無邪気すぎるあまり時に恐ろしさすら感じてしまう。特に、マイナー調の荒々しい演奏にメジャー調のメロディーを歌うヴォーカルが載るのを聴くと、名画と言われる〈モナ・リザ〉の笑顔にどこか不気味さを感じるように、どこか恐ろしさを感じてしまうのだ。

リーガルリリーのファーストEP『the World』は、“東京”“地獄”“天国”、そして“天使と悪魔”と、曲名からしてコンセプチュアル。天国と地獄と現在地。プラスとマイナスとゼロ地点。明と暗と無限に広がるその間。世界はただ希望に溢れているだけではなく、たくさんの絶望も存在していて、そのどちらにも正義があり、どちらもが正解で、世界はそのどちらをも内包している。そういったコンセプトは曲名だけでなく演奏そのものやジャケットにも表れているし、世界の終わり(現SEKAI NO OWARI)のカヴァー曲“天使と悪魔”の歌詞にも通じているものだ。

希望に満ち溢れた世界には必ず影がある。しかし裏を返せば、今生きている世界がどれだけ汚くて生きにくくとも、自分さえ無邪気でいれば、世界はそれだけで美しいと言っているようにも聴こえるのだ。