シューゲイザー的轟音サウンドに、儚く透明感のあるヴォーカル。そして突き刺すような歌詞。これまで3枚のミニ・アルバムで唯一無二のサウンドを奏でてきたガールズ・3ピース・バンド、リーガルリリーが、2020年2月5日(水)に初のフル・アルバム『bedtime story』をリリースする。
改めてリーガルリリーとはどんなバンドなのか、そして『bedtime story』はどんなアルバムに仕上がったのか。たかはしほのか(ヴォーカル/ギター)、ゆきやま(ドラムス)、海(ベース)の3人に話を訊く。
女性こそロックをやったほうがいい
――昨年リリースされたファースト・シングル『ハナヒカリ』は衝撃的な音と歌詞で。と同時に、音も声もすごく良くなっていて成長も感じました。
たかはしほのか「はい。音は良くなりました」
――それまではシューゲイザー特有のジャギジャギ感とかハイの音が多めな印象だったんですけど、もっとこう……。
ゆきやま「旨味たっぷりな?」
――そうですね(笑)。幻想的で全体が包まれるようなものを感じました。で、『ハナヒカリ』はメジャー・デビュー作品でもあったと思うのですが、メジャーというフィールドに立ってみて、これまでと何か変わったことはありましたか?
たかはし「メジャー/インディーというよりファースト・シングル、ファースト・アルバムということが大事だと思っていて。スタッフの方々は増えましたけど、好きなことをよりやりやすくしてくれる方たちばかりで」
ゆきやま「友達が増えたみたいな感じだよね」
――なるほど。それと成長という意味では、昨年末に行われたワンマン・ライブ〈羽化する〉ではパフォーマンス面でも大きな成長を感じました。すごく進化しましたよね。
ゆきやま「(笑いが止まらなくなる)」
――大丈夫ですか(笑)?
ゆきやま「なんかうれしいなと思って(笑)」
――(笑)。ファースト・シングルのリリースと、それを引っ提げてのワンマンがあり、そして待望のファースト・アルバム『bedtime story』がリリースになります。で、その前に改めてリーガルリリーとはどういうバンドなのか、聞かせていただければなと思います。例えば、親戚の集まりで〈バンドやってるらしいね。どんなバンドなの?〉って訊かれたら、自分たちのことをなんて説明しますか?
たかはし「割とよく訊かれるんですけど、私は〈女の子がロック・バンドをやっているんだよ〉って言いますかね。女の子がロック・バンドをやるのはすごくカッコいいと思うので、いつもそう言ってます」
ゆきやま「うんうん」
――ロックを〈女性がやる〉というのが重要ですか?
たかはし「はい。女性こそやったほうがいいと思うんです。ロックってすごく強いし、表現として外に出しやすいジャンルだと思うし。男の人は自分の不安なところとかを内に秘めて、あまり人に言わないじゃないですか。プライドを持っているからなのか……わからないですけど(笑)。女子って、いま考えていることとか、いま不安に思っていることとか、あとは人の悪口とか、いろんなことを〈女子のなか〉で話せるんですよね」
ゆきやま「だから、女子会のグルーヴだよね」
たかはし「そうそう! 女子会のグルーヴ!」
――女子会のグルーヴをロック・サウンドに乗せて出している、と。
たかはし「はい」
海「そもそも女子会のグルーヴがロックだもんね」
たかはし「そう! 女子会はロックなんですよ」
――男だから参加したことがなくてわからないですけど、そうなんですね。
ゆきやま「そうなんですよ。これは男子には教えないほうがよかったかな(笑)」
たかはし「みなさんは、例えばカフェとかで女子会をすると思うんですけど、私たちはスタジオで女子会をしていて。練習の前とかにけっこう話をするんです。何の話するっけ?」
ゆきやま「〈それかわいいねえ!〉とか」
たかはし・海「そうそう!」
ゆきやま「でも、そういうことに紛れてニュースの話をしたりもするし、〈最近テンション低いんだよね……〉とかも話すし」
たかはし「〈えー、それって低気圧のせいじゃない?〉みたいなね。よく〈女々しい〉って言うじゃないですか。あれは男の人が男らしくないからマイナスなイメージですけど、女の人は同じことをしても女々しくならないんです。それがすごくいいなと思っていて」
――そういう女子会のノリとか女々しさが、作品作りやライブ・パフォーマンスに活きているんですか?
ゆきやま「活きてるよね。だってそういう話をしてから音を合わせるとより楽しい」
たかはし「考えたことなかったけど、たしかにね」
何でも全部話そう
――なるほど。じゃあ、女子会のグルーヴでロックをやっているリーガルリリーが、活動するにあたってのテーマとか決まり事はありますか? 結成時の高校の時の話でもいいですし、一昨年に海さんが正式に加入されて改めて話したことでもいいです。
たかはし「精神的な話になりますけど、〈何でも全部話そう〉ってなりました」
――海さん加入時にですか。
たかはし「はい。それまで、音楽を作る上でバンド・メンバーと話すことはあまり意味がないと思っていて、意思疎通をそんなに取らずに音楽をやっていました。2~3年前までは人と話すことに興味がなかったんですよね。だけど人と話すことって作品を作る上ですごく大切なんだなって思って。話す時に呼吸を合わせることが、そのまま音楽になるんじゃないかなって」
ゆきやま「あると思う」
海「それこそ女子会のグルーヴじゃないですけど、日ごろから何でも話していると、曲作りの中でも〈あっそれいいね!〉って言葉のキャッチボールがスムーズにできるんじゃないかなって思います」
たかはし「そうそう。逆にシーンってなって空いた間とか、気まずくなっちゃった感じとかも音楽になるし、おもしろいなって思います。長く一緒にいると話してるうちに考えが変わってくることもあるし。だからスタジオの前とか移動中とか、よく話すようになりました。内容は本当にどうでもいい話なんですけど、そういうのがいちばん大事だったりしてね」
ゆきやま・海「(うなづく)」
――〈話す必要がない〉と思っていたたかはしさんが、なぜ〈何でも話そう〉と思うようになったんですか?
たかはし「そのきっかけは何だったんだろう……。普通に性格が大人になったのかな。人と話していなかったのは19歳くらいまでなんですけど、20歳になってから変わりました。環境とかかな……」
ゆきやま「海ちゃんが入ってから変わったような気がするな」
たかはし「ああ、怖くないなって思えるようになったんです」
ゆきやま「この3人だったら、何かを発言した時に怖い球が返ってくることがないんですよね。だからそのままの自分でいられる。自分にとってすごくくだらないことでも大丈夫っていう安心感がある」
海「たしかに(笑)」
たかはし「高校までって、家族に何かを発言しても怒られちゃったりしてさ」
ゆきやま「ちゃんとしてないとダメだったよね。〈あ、その感じはダメなのかあ〉っていうラインがあって」
たかはし「だけどこの3人だとそれがないから」
ゆきやま「ある程度、雑でもいいっていうのは救いだよね」
――たかはしさんとゆきやまさんの2人体制だった頃から比べて、3人体制は違いますか?
たかはし「そうですね。より自由に、気を遣わなくてよくなった。いや、気は遣うんですけど」
ゆきやま「変な気遣いはなくなったね。それが気持ちよくなった」
――というのを聞いて、海さんはいかがですか?
海「いま〈ああそうなんだ!〉と思いながら聞いていて。前を知らなかったので」
ゆきやま「海ちゃんは褒めるのがめちゃくちゃ上手で。『ホメラニアン』ってラジオ番組も好きだしね(笑)」
海「そうそう(笑)。でもなんでなんだろうね。自分は普通にしてるから、わからないけど」
ゆきやま「でもそれがフィットしてるよね」
海「くだらないことを言ってくれるっていうのは逆にうれしいです。気を遣われてないというか、気を遣う・遣わないの塩梅がちょうどよくて気持ちいいじゃないですけど」
できるだけ寿命を延ばしたい
――海さんが加入して、3人ですごくいい関係性が築けてるのが伝わってきました。
たかはし「あと、バンドの目標としては当然売れたいと思っていて、そういう話もみんなでして。この世に生を受けたからにはできるだけ寿命を延ばしたくて」
――え? たかはしさんの寿命ですか?
たかはし「はい、私という雰囲気の寿命です」
――雰囲気の寿命……??
海「作品が売れて、生き続けて、その雰囲気がずっと残るってこと?」
たかはし「そう!」
――ワンマン・ライブ〈羽化する〉のMCで「このあと何十年もバンドをやっていきたい」と話してましたよね。そういうところにも繋がりますか?
たかはし「はい、そうです。それに人生、バンドしかやることがないし、バンドしかおもしろくないので」
――〈売れたい〉というのは、もう少し具体的に言うとどういうことですか?
たかはし「売れないとずっとはやっていけないし、自分にとっても意味がないと思うんです。例えば私の歌が〈自分の子供に聴かせたいな〉っていう鼻歌だったら子供に聴かせればいいですけど、私は〈みんなに聴かせたい〉って思うので、そのためにも売れたいです」
ゆきやま「うんうん」
――より多くの人に聴いてもらいたいから売れたいし、自分の寿命も延ばしたい。
たかはし「そうです! ろうなくなん……」
ゆきやま・海「老若男女!」
たかはし「……に聴いてもらいたいんです」
すべての曲にストーリーがある
――バンドのテーマがわかってきました。では、今回リリースされるファースト・アルバムの『bedtime story』というテーマはいつ生まれたんですか?
たかはし「全体の8割くらいを作り終えたくらいのところで生まれました」
ゆきやま「プリプロが終わった頃ですね」
――なぜこの『bedtime story』というタイトルになったんですか?
たかはし「このアルバム名を付けてくれたのは海ちゃんで、これは最後の曲の“bedtime story”が出来た後だっけ」
海「出来る前じゃない? いちばん最後の曲が出来る前に『bedtime story』というアルバム名が付いて、〈いま作ってるこの曲も“bedtime story”っていう曲名かもね〉って話をしたよ」
たかはし「そうだそうだ」
――海さんは〈羽化する〉というライブのタイトルも付けたと聞きましたが、ネーミングセンスがあるんですね。
ゆきやま「あるんですね」
海「みんながやらないようなことを、合間を見てやっていくみたいなことですかね(笑)」
たかはし「でも本当に〈bedtime story〉という言葉がしっくり来て。〈bedtime story〉というのは、夜寝る前に親が子供に読んであげる本のことらしくて、今回の曲はみんな絵本のようなイメージがあったので」
ゆきやま「一言ですべてを言ってくれたよね」
海「もともとアルバム自体を〈絵本〉とか〈宝物〉になったらいいねって話をしていて。曲たちが並んできて、〈すべてにストーリーがある〉って考えたら〈bedtime storyなんじゃない?〉って思えてきて」
たかはし「しかも、この『bedtime story』というアルバム名を海ちゃんから聞いた後に、〈そういえば私“ベッドタウン”っていう曲作ったわ〉っていうことも思い出して」
海「その曲も元は入るはずじゃなかったもんね」
――曲順も“ベッドタウン”から始まって、最後の“bedtime story”へ向かう流れだし、歌詞も〈夜〉から〈夜明け〉に向かっているような流れで、すごく美しいなと思いました。
ゆきやま「うんうん! 全部並べてみたらそうなってたね」
たかはし「曲順もすぐに決まったね。でもそれは無意識のうちになっていて」
海「前の曲のアウトロから次のどの曲のイントロが来たら合うか、並べたんだよね」
――このアルバムが〈『bedtime story』だ〉と決定づけるような曲はありましたか?
たかはし「“子守唄のセットリスト”?」
海「うん。私のなかでは“子守唄のセットリスト”という曲の存在が大きくて。もともと〈子守唄のセットリスト〉という言葉は曲名じゃなくてアルバム・タイトルにしようかななんて話していて」
たかはし「!! そうだ!!」
ゆきやま「そうだったね!」
海「でも、アルバム名ならもっとシンプルなほうが伝わるんじゃないかっていう話をして。〈子守唄〉とか〈絵本〉に通じるもの、例えば〈夜〉とか〈母親〉、〈物語〉とか、そういうキーワードを合わせていって、『bedtime story』というアルバム名を提案したんです」
映像が降りてくる
――さっき〈すべての曲にストーリーがある〉という話が出ましたけど、たかはしさんの詞は〈降ってくる〉と聞きました。それってどういうふうに降ってくるんですか?
たかはし「まず、映像がいきなり頭のなかに降りてくるんです。それはいままで自分が見たことのないような世界で、それをどう私の言葉で表現しようかなって思いながら歌詞を書いていくんです。よく妄想をしていて、そういう見たことない世界が思い浮かぶことってありませんか?」
――妄想はするけど、凡人なので映像が思い浮かぶってことはないです……。そこにメロディーはいつ付くんですか?
たかはし「一緒にメロディーも付くんです。最近は詞が呼び起こしてくれることが多いかな。だから、歌詞を書くのとメロディーを作るのは同じ作業なんですけど、オケを作るのはまったく別の作業なんです。でも、いちばん大事なのは最初に頭のなかのイメージを思い浮かべること」
ゆきやま「もう想像するだけで感動できるような?」
たかはし「そうそう」
――それはメンバーがいるところでも降ってくるものなんですか?
たかはし「スタジオでパッと歌詞を書くことなかった?」
ゆきやま「すぐに曲が出来た時はそういうことが起きてたのかもね」
たかはし「“bedtime story”の歌詞とメロディーはレコーディングする時にその場で付けたんですけど、まさにそんな感じでした。セッションで育てたオケに、メロディーと歌詞を即興で入れたんです」
曲作りに影響を与えたアーティストたち
――今作の楽曲作りはいつしてたんですか?
ゆきやま「(2019年の)7月の終わりくらいから始めて、8月でバーッと形にして、9月でレコーディングか」
たかはし「そうだね。アルバムを作ろうっていう1年くらい前から、元となる曲の欠片たちはたくさん作ってたんですけど、それを集めて曲にするっていう作業はその2か月くらいでやりました。いちばん最近ゼロから作った曲は“1997”かな。プリプロ・スタジオで思い付いちゃった曲です」
ゆきやま「不協和音のリフだけがあって」
たかはし「当時ブラーとかデスキャブ(Death Cab For Cutie)とかをすごく聴いていて、その影響で〈こういう曲絶対入れたい!〉って思って。そしたら全然違う曲調になりました(笑)。あとは“林檎の花束”も最近作ったね」
海「“そらめカナ”は?」
たかはし「あれはガレバン(GarageBand)で作ったね」
ゆきやま「あと“bedtime story”もだよ」
たかはし「最近作った曲も多かったです(笑)」
――ブラーとかデスキャブのように、曲作りの期間に影響されたアーティストっていますか?
たかはし「Ki/oon Musicのスタジオに昔のレッチリ(Red Hot Chili Peppers)のアルバム(『Freaky Styley』)があって、それが超カッコよくて! ギターはジョン・フルシアンテじゃなかったけど、それにはすごく影響を受けました。あれ、まだ返してないや(笑)」
ゆきやま「借りてたの(笑)。アルバムを作ってる時は、何かとほのかの原点回帰が多かったよね」
海「そう、〈これ原点回帰だね~〉ってよく言ってた!」
たかはし「言ってたね。あとはビルト・トゥ・スピルをめっちゃ聴いてました。あとダイナソーJr.とか、ペイヴメントとか……工藤祐次郎さんとか……。あ、相対性理論をめっちゃ聴いてました。私、相対性理論っていうバンドを知らなくて、友達に教えてもらったら、やくしまるえつこさんの声がすごく良くって」
ゆきやま「その辺は制作期間中によくほのかから聞いた名前だね」
たかはし「Apple Musicの2019年に私が聴いた曲のランキングを見たら、相対性理論が結構多くて。『シンクロニシティーン』を延々リピートしてました」
海「それ私もいちばん聴いてる!」
――なんだか意外な組み合わせですね。
たかはし「そうですよね(笑)」
スタッフとのコミュニケーションが良い音に繋がる
――レコーディングに関してはいかがでしょう。最初に言ったように、声も音もこれまでからかなり進化したように感じたのですが、今作で気を遣ったところはありますか?
たかはし「自分の歌がどれだけきちんと再現できるか、ということには気を付けました。良い意味で〈普通の声〉になってくれたんですよ。今回はエンジニアさんと相性が合いましたね。エンジニアさんへの伝え方がうまくなったのかな」
――伝え方というのは、先ほどのコミュニケーションをするようになったという話とも繋がりますね。
たかはし「そうですね。そういうところも変わったかもしれない」
ゆきやま「楽器の音を作ってくれるテックさんともいっぱい話すようになったよね。ギター・テックさんとずっとバンドの話をしてたし」
たかはし「そうだね」
海「レコーディングの時にいろんな場所へ合宿に行って、一緒に夜ご飯を食べたり、晩酌したりしながら、本当に他愛もないことを話して。やっぱりそういうことが音にも活きてるんだと思います」
たかはし「ギター・テックさんも、ドラムスの音作りをしてくれた人も、みんな話が合う人で。だから例えば〈もっと軽い感じ〉って言っても、その〈感じ〉の部分をちゃんとわかってもらえるんです。それってすごくやりやすくって。同じ音楽を通ってきている人たちだから、言葉で表現しやすいし。ドラムスはどうだった?」
ゆきやま「私もドラム・テックの人とよく話をして。『ハナヒカリ』からドラムスの音を作ってくれてる三原(重夫)さんという方は元スターリンのドラマーで、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のドラム・テックもされてた方なんですけど、〈ずっと聴けるドラムスの音〉というのを研究されてたらしくて。〈それめっちゃおもしろい!〉と思って、よく話して、曲のイメージを共有してました」
海「ベースの音も、曲によって歪ませ具合とか、音の丸みを変えていて。例えば“子守唄のセットリスト”なら音の角がない、包み込むようなイメージがあったので、〈もっと温かくしたいんですけど〉みたいな伝え方をすると、それがちゃんと伝わるんです。“そらめカナ”だったら〈もっと戦闘機みたいな音にしたいんです!〉とか。そういうのがスムーズに伝わるのが、こちらもやっていて楽しかったです」
ゆきやま「よく擬音で会話してたよね。〈ダン!が欲しいんですよ〉とか(笑)」
――(笑)。それで抽象的にならないんですね。声に関してはどういうオーダーをしましたか?
たかはし「声はお任せしてました」
ゆきやま「でも、声に関してもエンジニアさんの曲の汲み取り方がすごくうまくて、私たちの気が付いてないところまで気付いてくれました。〈リーガルリリーにはこういうのが合う!〉ってやってくれたよね」
たかはし「そうなんです。天才だなーって思ってました(笑)」
――3人もすごいんだと思いますけど、スタッフさん方もすごいんですね。
たかはし「スタッフさんすごいんです」
海「音源音源してないというか。音源のなかにもライブ感があって、そういうテイクを良かったと言ってくれる人たちでした。だから良さがより引き出されたというか」
ゆきやま「そう! みんなが良さを引き出してくれました! だから本当にみんなで一緒に作ってる感じだったよね」
たかはし「楽しかったー。いままででいちばん楽しかった。生きてるなかでいちばん楽しかったかもしれないです」
たくさんのキュンキュンが詰まった『bedtime story』
――こうして『bedtime story』が出来上がったわけですが、今作はお客さんにどういうふうに聴いてもらいたいですか?
たかはし「何にも考えないでいる時に流れてきて、ハッと気付かされるような音楽の衝撃がいちばん好きなので、そうやって聴いてもらえたらいいなって思います。やっぱり音楽って余裕がないと聴けないものなので、何も考えてない時の刺激みたいになれたらいいなって」
――たしかに、ふとした時にドキッとするポイントはありますよね。
たかはし「後々になって〈あ、これ刺激になるね〉って気付くんですよね」
――それは音ですか? 言葉ですか?
たかはし「自分にとっても刺激になるものを全部音楽にしているので、私からしたらすべてかな」
ゆきやま「そうだよね。キュンキュンポイントだもんね」
たかはし「そう。私たちはキュンキュンポイントって呼んでいて、キュンキュンしたものを入れているんです」
――3人でそういう部分は共有してますか?
一同「はい!」
海「〈ここキュンキュンするよね~〉ってね」
たかはし「そうそう! 好きな漫画の話でも何でも、ずっとキュンキュンするポイントの話をしてます(笑)。残酷なのにキュンキュンするところとかもあったり」
海「胸が苦しいポイントね」
ゆきやま「ああ~キュンキュンしてきた(笑)」
一同「(笑)」
――そういうポイントが、無意識の刺激になってるんですね。それでは最後に……昨年末のワンマン・ライブが〈羽化する〉というタイトルでしたが、3人は羽化したんですよね?
ゆきやま「めでたく(笑)」
たかはし「しました! でも、ライブが終わったらちょっと落ち込み気味だよね。〈終わっちゃった〉って」
海「何だろうね、虚無感じゃないけど。〈私最近、自己肯定感めっちゃ下がったんだよね……〉とかみんなで言って(笑)」
たかはし「そうそう(笑)。〈本当、自分って意味あるのかな……〉とか」
海「でもアルバムも出来ちゃったし、羽化もしちゃったし、やることはたくさんあるんですけどね」
――ひと段落ついてしまった?
たかはし「かなあ」
ゆきやま「燃え尽き症候群かもしれないですけど」
たかはし「周りのいろんなバンドも、ワンマンとかが終わるとこういうことがあるみたいで、そういう話も共有しました。でも〈それなら大丈夫か!〉みたいなね」
ゆきやま「スタジオに行くにも体調崩したりね」
たかはし「そう、だから羽化したのに羽の方向が定まってないというか」
海「まだ羽が柔らかいんじゃない(笑)?」
たかはし「羽がふやけててどうすればいいかわからない(笑)。いまは乾燥中? いや、風に慣らしてるところです、たぶん」
ゆきやま「この前のスタジオ楽しかったけどね。やっと動けるようになってきた」
――で、これからどんな蝶になるんですか?
たかはし「蛾にはなりたくない(笑)。シンプルな羽がいいな」
ゆきやま「おおーいいね」
海「まあ派手な羽も似合わないしね(笑)」
ゆきやま「モンシロチョウみたいなね。白いの好きだな、私」
――何十年も続けるんですもんね。
たかはし「だから飽きない模様がいいですね。親によくカラフルは飽きるって言われたし。でもいろんなところへ飛んでいくうちにいろんな色が着いていってしまうかもしれないので、3人の頑固さを合わせて、それぞれがパーツになって、ひとつの色を守っていきたいと思います」
ゆきやま「これもキュンキュンする話だね(笑)」
LIVE INFORMATION
ファースト・フルアルバム リリース記念全国ワンマンツアー
リーガルリリーpresents「bedtime story」
3月1日(日)北海道・札幌ベッシーホール
3月6日(金)石川・金沢vanvanV4
3月7日(土)新潟・GOLDEN PIGS BLACK STAGE
3月14日(土)広島・セカンドクラッチ
3月15日(日)福岡・BEAT STATION
3月19日(木)宮城・仙台enn2nd
3月27日(金)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
3月28日(土)大阪・梅田CLUB QUATTRO
4月3日(金)高松・DIME
4月8日(水)東京・マイナビBLITZ赤坂
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