Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。連載100回を超え、5人が1曲を厳選し計5曲を掲載してまいります。 *Mikiki編集部
【酒井優考】
ar syura “Ego hobo”
以前もご紹介したAki Kawano(ベース/ヴォーカル)とyohkyu(コンポーザー)によるユニットの配信シングル第4弾。個性的で透き通るような声とちょっと不思議な楽曲からは、例えばトルネード竜巻などの系統を思い出すんですが(ごめんなさい、○○っぽいとかあんまり言いたくないんですが)、オートワウ系の効いたベースを聴くともっとブラック寄りの影響も感じられて、要するにめちゃくちゃカッコいいです。ベースのそういうところは1曲目の“ruler”にもあったんですが、でもこれまで4曲とも絶妙にテイストが違っていて、今後どんな作風が出てくるのか期待しています。
【天野龍太郎】
藤井 風 “きらり”
千葉雅也が〈ポップ史へのランダムアクセスがよろけるメロディーになる。歴史が終わった後の音楽だ。時間が蒸発した後の迷宮〉と評し、とんでもない展開(転調、メロディー、アレンジ)に誰もが驚いたOfficial髭男dismの新曲“Cry Baby”もすごかったのですが、彼のファンとしては、やっぱりこの曲を取り上げないわけにはいきません。前シングル“旅路”に続く、藤井 風さんの新曲“きらり”。冒頭の〈さらり〉がタイトルの〈きらり〉の到来を予感させるのが見事で、擬音語や擬態語を見事に歌詞に落とし込んだ、彼らしい歌詞にはっとします。プロデューサーは名タッグのYaffle。今回は、4つ打ちのさわやかなダンス・ナンバーですね。配信リンクはこちら。
【鈴木英之介】
yohei “Edge of Your Dream”
リリースは4月末なのだが、ゴールデンウィークを挟んで紹介できずにいたので、今回ぜひ紹介したい。東京出身で現在は米LAを拠点に活動する作曲家/プロデューサー、yohei(鹿野洋平)による新曲。なんとウィルコなどでの活動で知られる、ギタリストのネルス・クラインが参加している。スライド・ギターの効いた陶酔的なアレンジや、ブルージーでありながら浮遊感を湛えた和声進行が、どこかジョージ・ハリスン“I'd Have You Anytime”などを彷彿させる。本人も〈コード感に秘密がある〉とTwitterで綴っており、その仕掛けについて惜しげもなく解説してくれている。それを踏まえてもう一度聴くと、この曲がよりマジカルに感じられるだろう。
【小峯崇嗣】
浦上想起 “爆ぜる色彩”
TOWER DOORSのほうでも以前から注目してきた、多重録音の音楽家、浦上想起が2021年初のシングル“爆ぜる色彩”をリリースしました。〈内省から外界へどのくらい音を拡充できるだろう、ということに挑戦した楽曲〉と自身が語る意欲作。その言葉通り、曲が進むにつれてさまざまな表情を見せる、カラフルで鮮やかなポップソングに仕上がっています。細部までこだわり抜かれた一音一音が歯車のように合わさり、壮大で複雑怪奇な機械が動き出すかのような彼の音楽には、毎度のこと驚かされます。
【田中亮太】
Subtle Control “NEOW”
Turntable Filmsのフロントマン、井上陽介のソロ・プロジェクトによる初のデジタル配信シングル。すべて自身で演奏したという各楽器の音色/フレーズが持つ品の良さに、襟元を正される。そして、Xylomania Studio LLCの古賀健一が手掛けたミキシング/マスタリングも素晴らしい。ありとあらゆる家具や調度品が的確に配置された居住空間のようなプロダクションにまず耳を奪われるが、井上の歌声に宿るソウルからは、その部屋で暮らす人の息吹が聴こえてくれる。これは名曲。