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インタビュー

諭吉佳作/menが語る起点としてのCornelius、緻密なデザイン・センスに貫かれた同時リリースのデビューEP

諭吉佳作/men『からだポータブル』『放るアソート』

 静岡出身、2003年生まれの音楽家、諭吉佳作/menがデビューEP『からだポータブル』と『放るアソート』を2作同時にリリースする。中学生からiPhoneのGarageBandを使った作曲を始め、〈未確認フェスティバル〉で審査員特別賞を受賞。2019年にはでんぱ組.incに楽曲提供をするなど、次世代を担う才能として高い注目を集めてきた。

 「最初に自分から音楽を聴いたのは小学生のときのボカロ曲なんですけど、当時は〈カラオケで歌うのが楽しい〉みたいな感覚が強くて。でも、中2でCorneliusの『Mellow Waves』を聴いたときに、音としてすごく気持ちが良いと思ったんです。それまでは〈自分が気持ち良く歌うために作る〉というのが自分の音楽制作においての普通だったけど、〈音として心地よいものを作るほうが自分は好きかもしれない〉と思いはじめて、そこが活動のスタートになった気がします」。

諭吉佳作/men 『からだポータブル』 トイズファクトリー(2021)

 今回届けられる2作品のうち、『からだポータブル』には制作ソフトをLogic Pro Xに移行してから作られた8曲を収録(“外B”のみそれ以前の楽曲)。ジャズのピアノ・トリオを下敷きにしたようなアンサンブル、愁いを帯びつつもポップなメロディー、独自の言語センスを感じさせる歌詞が絡み合い、フリーフォームな展開と緻密なサウンドデザインで構成された楽曲からは、非凡なセンスが感じられる。

 「最初の頃は言葉を扱うことがやりたくて音楽を作っていた部分が大きくて、まず言葉を書いて、そこにメロディーを乗せてたんですけど、最近はまずトラックを作ってみて、メロディーを乗せて、そのリズムに合う歌詞を作ることが多くなりました。歌詞にテーマとか意味はあんまりなくて、発声したときに気持ち良いかどうかで作ってるし、何に対してもそこまで意識はしてないかもしれない。私の曲は1曲のなかでリズムが変わったり、サビがこないでどんどん別のメロディーになったりすることが多いけど、それも〈その曲にとっての普通〉だと思ってやってることが多いです」。

 言葉数の多さと浮遊感のあるウワモノの組み合わせから〈rei harakamiアレンジのボカロ曲〉といった印象を受ける“ムーヴ”、ドラム以外の音がすべてフルートで作られている“まま”、何度となく転調を繰り返す“ショック”、坂元裕二の朗読劇の主題歌として書き下ろされた“はなしかたのなか”など、アイデアの詰め込まれた楽曲たちはどれも秀逸。小さい頃にピアノを触っていたくらいで、音楽理論は全然わからないというが、それでいてこの完成度というのはやはり驚かされる。

 「“ムーヴ”は方向性を決めて歌詞を作ることにゲーム性を見い出して、〈これをクリアしてやろう〉みたいな感覚だったりもします。楽器を弾きながら作ってるわけじゃないので、作り終わったあとで〈ここも転調してたんだったな〉って思い出したり、全部が意図的ではなかったりもするけど、そういう安易な突っ走りみたいなものがなくなったら、何にもできなくなりそうだなって」。

諭吉佳作/men 『放るアソート』 トイズファクトリー(2021)

 一方の『放るアソート』は、長谷川白紙や崎山蒼志、でんぱ組.inc/虹のコンキスタドールの根本凪、トラックメイカーのabelestやKabanagu、ヒップホップ・バンドAFRO PARKERと、ジャンルレスなアーティストとのコラボ作品で、より自由度の高い創作を展開。根本とのユニット、ミドルエステート名義の“たべられる♡/たべられない?”については、「やりたかったことがひとつ叶った」という。

 「これまででんぱ組.incに提供した曲は〈諭吉佳作/menっぽいものを作らせてもらった〉という形だったけど、今回は根本さんの力をお借りして、自分がアイドル側にお邪魔させていただこうという思いで作りました。誰かと一緒に曲を作ると、自分の知ってるところではないところに行けて、別の自分になれたりするのが楽しいです。新しい音楽を作ると新しい自分が一個増えて、自分の体がどんどん大きくなっていくというか。そういう感じなんだと思います」。

 


諭吉佳作/men
静岡出身、2003年生まれのシンガー・ソングライター。2018年、中学生のときに出場した〈未確認フェスティバル〉で審査員特別賞を受賞。SoundCloudや〈Eggs〉に楽曲を投稿し、後者では年間ランキング2位を獲得。2019年はabelest、崎山蒼志とのコラボ曲を発表し、でんぱ組.incへ楽曲提供も行う。2020 年は963“lumen”の作詞を手掛けたほか、雑誌「文學界」「ユリイカ」へ寄稿。2021年には〈坂元裕二 朗読劇2021「忘れえぬ 忘れえぬ」〉の主題歌と劇伴を担当。さらにはAFRO PARKERやfishbowlの楽曲に招かれるなど活動の場を広げるなか、2枚のデビューEP『からだポータブル』『放るアソート』(共にトイズファクトリー)を5月26日にリリース予定。

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