2017年にそれまで在籍していたバンドを脱退し、2018年よりソロ・シンガーとして活動を開始させたチアキ。これまで舞台に挑戦したり、客演やNHKの番組で歌唱を披露したりしつつ、配信曲を3曲リリースしてきた彼女が、ようやく初の配信限定ミニ・アルバム『DOOR』をリリースした。

しかしコロナ禍による制作の延期があり、その最中にはさまざまな事態に直面し、完全自主制作である本作の制作進行は困難を極めたという。そんな長い月日をかけて出来上がった『DOOR』について、Mikikiでの連載〈チアキの! 夢と魔法の映画感想文〉担当編集でもある筆者が、よく知った関係だからこそ話せるリアルな制作秘話を訊く。

チアキ 『DOOR』 チアキ(2021)

 

制作途中で自分の好きなものが分かってきたら、やりたいことの方向性が見えていった

――『DOOR』すごく良かったです。歌がうまい人はいくらでもいるけど、ちーちゃん(チアキ)ならではの魅力というのは歌に乗せて感情を、時に丁寧に表現したり、時に爆発させたりすることだと思っていて。今作でも、ちゃんとそのどっちもがあって。

「本当に? よかった~。ありがとうございます」

――ソロ活動になってからは曲はどうやって作ってたの?

「例えば“生活”とか“向かい風”(配信シングル『向かい風 / Blueberry Night』収録)は作ろうと思って作った曲ではなくて、スタジオに入ってピアノを弾いてたらあふれ出てきちゃった曲。こんなコード好きだな、と思って歌ってたら歌詞も付いてきて、さらっと出来たね」

――こういう曲が歌いたい!と思って作った曲は?

「ないね。そもそも自分が歌いたい曲を作る、という考えがないかもしれない。どちらかというと歌で表現をすることの方が大事で、そっちの方が生きてる感じがする。それに人の曲を歌うのが好きなんだろうね。人の世界を表現するのが好き」

――それは前のバンドの活動からも、今回、凹川拓真さん(みどりかわさん)の曲を表現してるところからもよく分かります。でも、同時にチアキ特有の世界観もあるでしょ。

「そうだね。だから『DOOR』を作ってるうちにいろいろやりたいことが出てきたから、今後はもう少し肩の力を抜いて、そっちの方の表現にも挑戦しようと思ってる」

――特に歌詞は、これは実体験だろうなというものもあるし、ストーリーを作ったんだろうなというものもあるし。そこはどう作り分けてるの?

「書き溜めてる歌詞は自分の心から出てきちゃった系が多いね。今回で言うと“曇天”がそう。反対に、トラックに合わせて歌詞を入れるみたいな時は、曲のイメージでストーリーを書くことが多いね」

――“曇天”は詞先なんだ。

「そう。それ以外は拓真さんか私の曲が先にあるね」

――これまでライブではキーボードやギターで一人の弾き語りもしてきたし、バンドやキーボードの伴奏があるパターンもあったけど、どれがやりやすい?

「それについては、今模索したいと思っている。だから今度ライブがあるけど、それを機にしばらくお休みしようと思っているところで。もちろん何も考えずに歌に専念できるのは誰かに演奏してもらう時なんだけど。

ただ、歌・音楽だけは続けたいという思いがあって。『DOOR』を作るにあたって、共同で作ってくれた凹川拓真さんが音楽性や人間的な趣味嗜好を知ろうとしてくれて、その中で自分の好きなものが分かっていったのね。〈こういうコード進行が好きなんだね〉とか。そうしたら制作に関しては少しずつラクになっていったし、やりたいことの方向性が見えていった」

――凹川さんのユニット・みどりかわさんの最近の楽曲は、暗めで不思議な雰囲気のものが多いけど、チアキの曲はそういうわけでもなく。

「そうだね。私は単純にみどりかわさんの曲がめっちゃ好きで、暗い曲も優しい曲も好き。特に『o to si a na』(2015年)っていうアルバムが好きで。急に友達みたいなノリで連絡が来て、曲を聴いたらすごい良くて。それで東京でのライブの際に観に行って、そこから仲良くなっていったんだよね」