Mikiki編集部員とTOWER DOORS担当・小峯崇嗣が最近トキめいた邦楽曲をレコメンドする毎週火曜日更新の週刊連載〈Mikikiの歌謡日!〉。今回は第77回です。紹介した楽曲はSpotifyのプレイリストにもまとめているので、併せてお楽しみください。 *Mikiki編集部
【天野龍太郎】
PUNPEE feat. 5lack “Wonder Wall”
(私的に)今週の一曲! 板橋の兄弟がやってくれました。〈玉々同じの穴兄弟です〉〈薄い壁を隔て 俺のAV勝手に盗むなよ〉〈見た目が違う俺ら2人は、道外れた弟の様でさ〉などなど、最高なラインばかり。PSGの『DAVID』(2009年)から11年、思えばずいぶん遠くまで来ましたね……。なんて、勝手に自分のことのように感慨深く思いました。泣ける。PUNPEEのニューEP『The Sofakingdom』から。
GOODMOODGOKU “Playlist”
GOODMOODGOKU、2020年のシングル第3弾は、なんとダンス・ナンバー。ドレイクの“Passsionfruit”みたいですね。YouTubeのコメントに〈君はMY Favorite playlistって歌詞やばいな〉と書いてあるのですが、まったくの同感。ちょっと意味がわからないところも含めて最高。配信リンクはこちら。
Leon Fanourakis “NO LIGHTS / TOBASE!”
この国のラップ・シーンのジョーカーの一人、Leon Fanourakisから届いた2つの新曲。地下で蠢動するダークな欲望が吐き出されています。配信リンクはこちら。
LEX “Romeo & Juliet”
LEXのニュー・アルバム『LiFE』から、甘くてファンキーなラップ・チューン。LEXって、曲によってぜんぜんちがう顔や魅力を見せてくれる、不思議なラッパーだと思いました。『LiFE』では、大好きなC.O.S.A.が参加した“F*CK (feat. C.O.S.A. & ACE COOL)”がお気に入り。
ODOLA feat. 城戸あき子 “Bathtime”
Pamくん × 沼澤成毅くんのODOLAが、10月14日(水)、ついにファースト・アルバム『Grooovin’ Blue』をリリース! そちらから、元CICADAの城戸あき子さんをフィーチャーした一曲のミュージック・ビデオが発表されました。Pamくんのビートと沼澤くんのエレピの見事なコンビネーション、どんどん洗練されていっていますね。配信リンクはこちら。
Tsudio Studio feat. HALLCA “Promise of Summer”
Tsudio Studioさんの新曲は、なんと元EspeciaのHALLCAさんとコラボレーションしたもの。びっくりしました。ドリーミーなサウンドとオートチューン、ノスタルジックなメロディー、サックス・ソロなどなど、あいかわらずツジオさんのシグネチャー・サウンドが素晴らしい。〈次こそは最高の夏にする〉というのは、今年誰もが思っていることかも。猫 シ Corp.のリミックスも最高! 12インチ・シングルもLocal Visions × Hiraeth Recordsでリリースされます。
Kaede “ジュピター”
NegiccoのKaedeさんがリリースする9月8日(火)にリリースするミニ・アルバム『秋の惑星、ハートはナイトブルー。』から、ウワノソラの角谷博栄くんが手掛けた楽曲が届けられました。ラテン調のAORで、メロディーは角谷くんらしい、清々しいもの。緩急自在のアレンジも感動的。
YOASOBI “群青”
ブルボン〈アルフォート〉のCMソングだというYOASOBIの新曲。エレクトロニックなサウンドと分厚いユニゾンのコーラス(人の生の歌声)が組み合わさった、無機性と有機性を行き来するハイブリッドな感覚がおもしろい。
evening cinema “純愛のレッスン”
evening cinemaが先日リリースしたミニ・アルバム『AESTHETICS』から。原田夏樹さんのヴォーカルの、もんのすごい色気といったらないです。
Naive Super feat. sugar me “Keep Mine No Hidden”
Pictured Resortなどで活躍するYushi Ibukiによるソロ・プロジェクト、Naive Super。sugar meを客演に迎えたこの新曲はドリーミーな浮遊感と、現実の都市の生活感覚とが同居しているような、不思議なサウンド。配信リンクはこちら。
【鈴木英之介】
Gotch “You”
デッドなドラムの響きとクリーン・トーンのギターの間から現れる、ソフトなGotchの歌声にまず意表を突かれ、心を掴まれてしまう。そしてその声で紡がれるメロディーも上品な甘さをたたえており、良質だ。またそれらを肉付けするアレンジや音作りにも、バンドのときとは明確に異なる志向性とこだわりが感じられる。USのインディー・ロックと日本のシティ・ポップをブレンドしたような、メロウでありながらエッジのきいたそのサウンドは、彼のレーベルに所属する岡田拓郎の『Mornig Sun』辺りにも通ずるかもしれない。
Ogawa & Tokoro “Shinmaiko”
名古屋の大学生2人による宅録ユニットがカクバリズムから放った、極上のバレアリック・チューン。洒脱なコード展開や波音のエフェクト、くぐもっていて浮遊感のあるギターの音色などから、細野晴臣・鈴木茂・山下達郎による名盤『Pacific』やスティーヴ・ハイエットの『Down On The Road By The Beach』(邦題『渚にて…』)に通ずるようなリゾートムードが感じられる。旅行に出ることもままならぬ今だからこそ、目を閉じてこの音世界に身を委ね、イメージの旅を楽しみたい。
牛尾憲輔 “a shelter”
agraph名義でも活躍する電子音楽家が手掛けた、Netflixオリジナル・アニメ「日本沈没2020」のサウンドトラックからの一曲。大きな流れをなしている楽曲群のなかから一曲だけを切り出して紹介することにどこまで意義があるのか心許ないが、個人的に全41曲のうち最も牛尾の美意識が凝縮されていると感じた一曲をここにあげた。繊細なノイズが織り成す層の隙間に美しいピアノの打鍵音が響くさまが、近年の坂本龍一の作風を想起させる。作品鑑賞後に聴いて音楽と紐づけられたシーンを追想するのももちろん良いが、あえて作品を観ずに音だけを聴いてあれこれと想像を巡らせるのもまたオツなものかもしれない。