Page 2 / 3 1ページ目から読む

すべてを肯定して

 ジャンルにこだわらず、幅広く音楽を聴き続けている豊崎。このアルバムには、そんな彼女のミュージック・ラヴァーぶりが反映された楽曲が多く収められている。まずは“MORNING:GLORY”(作詞 : 古屋真、作曲 : さかいゆう、編曲 : 臼井ミトン)。ソウル・ミュージックに根差したメロディーラインと、AORやネオ・ソウル系の流れを汲むアレンジが印象的な、洗練されたポップソングだ。

 「以前からさかいゆうさんのファンで、普通にライヴにも行ってたんです。さかいさんの洋楽的なセンスが大好きなので、そのことをお伝えして作曲していただきました。アース(・ウィンド・アンド・ファイアー)っぽい感じというか、ファルセット気味で歌ったんですけど、サウンドともマッチしていて、すごくカッコ良く仕上げていただきました。歌詞に関しては、私、早起きしてゆったり過ごすのが好きなんですよ。窓を開けて、天気がいいだけでハッピーだし、コーヒーを淹れて、朝ご飯をゆっくり食べて。完全に〈モーニング・グローリー〉だし(笑)、〈新しい一歩を踏み出す〉〈旅がまた始まる〉というテーマにも合ってますね」。

 心地良いステップを踏むエレピのフレーズに導かれた“Cheers!”は、作詞を土岐麻子、作/編曲をトオミヨウが担当。軽やかさと切なさが共存するヴォーカルが響く珠玉のナンバーだ。煌びやかな東京の風景と共に大人の恋愛シーンを描いた歌詞も、豊崎のリクエストによるものだという。

 「土岐麻子さんの音楽はずっと前から聴かせてもらっていて、トオミさん、土岐さんが一緒に作る音楽が本当に大好きで。〈大人の恋愛〉をテーマにした曲を入れたいと思ったときに、〈絶対、土岐さんがいいです!〉とお願いして。オンラインで打ち合わせさせてもらったんですけど、〈東京タワーが大好きなんです!〉みたいな私の話をニコニコと聞いてくださって、本当に素晴らしい歌詞を書いていただきました。トオミさんのメロディーとサウンドもカッコ良くて、イントロが始まった瞬間、〈はい、優勝!〉という感じでした(笑)」。

 さらには、「ボカロっぽい雰囲気もあるし、ここまでヴォーカルを加工したのも初めて。〈ヴァーチャル・豊崎さん〉がいる、まさに挑戦の曲ですね」という“ライフコレオグラファー”、〈この道の端を 手繰り寄せてみて 繋がってるよ 信じる声は今も〉というリリックが胸を打つ“TONE”、EDMのテイストを採り入れたトラックと「このアルバムで伝えたいことを総括したような」歌詞が合わさるエンディング曲“March for Peace”などを収録。この『caravan!』を作り上げたことで彼女は、アーティストとしてのネクスト・フェイズを歩んでいくことになりそうだ。

 「時代的にも私の人生的にも、このタイミングでCDをリリースできることは奇跡だと思っていて。世の中も私も変わっていくけど、すべてを肯定して進んでいきたいです」。

『caravan!』に参加したアーティストの関連作。
左から、UNISON SQUARE GARDENの2020年作『Patrick Vegee』(トイズファクトリー)、クラムボンの2015年作『triology』(コロムビア)、さかいゆうの2021年作『愛の出番 + thanks to』(newborder recordings)、臼井ミトンの2015年作『Singer Song Traveler』(Tuff Beats)、土岐麻子の2021年のカヴァー集『HOME TOWN ~Cover Songs~』(A.S.A.B)、ハンバート ハンバートの2020年作『愛のひみつ』(ZENRYO/SPACE SHOWER)、たむらぱんのベスト盤『tamuLAPIN』(コロムビア)