
ここまで自分たちが進化するなんて思わなかった
――個人的にはサヴェージズやアイドルズといった、あなたたちからしたら下の世代のアーティストとムードやスタイルをシェアするようなモダンなエッジ、瑞々しさが今作のサウンドには感じられます。あなたが聴いている音楽や、どのようなバンドやアーティストからインスピレーションを受けているのか教えていただけるとうれしいです。
「若手のバンドの音楽はたくさん聴くけど、私がインスピレーションを受けるのは、私が若いときにインスピレーションを受けていた人たちがほとんど。そのインスピレーションが、ミュージシャンとしての私のアイデアに磨きをかけてくれるんです。私が聴く若手のバンドたちも、私が聴いてインスパイアされてきたバンドやアーティストの影響を受けているしね。もちろん、聴いていて興奮する若手バンドのレコードもある。でもやっぱり、影響源は彼らではなく、彼らよりも前の時代に存在していると思う。少なくとも、私にとってはね」
――もし、いまおっしゃったように、若手のバンドからはどちらかと言うと影響を受けていないのだとしたら、なぜ今回のレコードからはモダンなエッジや瑞々しさが感じられるのだと思いますか?
「トピック的にそうなのかもしれない。自分がいま関係している、もしくは少なくとも知っていること、そして私たち全員ができるであろうことについて語られているから。歌詞の力強さのおかげで、バンドのエネルギーがものすごく高まったと思う。だからこそ、とてもエネルギッシュで力強いサウンドのレコードが出来上がったんじゃないかな。
私たち自身も、このレコードでここまで自分たちが進化するなんて、そしてこんなに素晴らしくレコードが受け入れてもらえるなんて想像もしていなかった。25年も活動していて、いまだにそんな瞬間を経験できるのはすごく刺激的だし、素敵だと思う」
――今作のサウンドについてはどんなアイデアやコンセプトがありましたか? 制作中にはロキシー・ミュージックをよく聴かれていたそうですが、今作はこれまでのアルバムと比べてもサウンドがワイドで、イクレクティックで、かつハードコアな印象を受けました。
「メンバーそれぞれが、自分たちが何をやりたいというバラバラのアイデアを持っていた。でもさっき話したように、いざこのレコードをみんなで一緒に作りはじめると、私が思いついたメロディーと歌詞の力強さが、ある種の方向性を自然と定めたんです。それがこのレコードのサウンドを決定づけた。サウンド的には特に大きなプランはなくて。私のメロディーと歌詞を耳で聴いていくうちに無意識にこうなっていったんです」
より良い世界へ――私はかなりの理想主義者
――ちなみに、“The Men Who Rule The World”はPファンクのマザーシップのコンセプトにインスパイアされて生まれた曲だそうですね?
「私は『The Jump (With Shirley Manson)』というポッドキャストをやっていて、そのなかで仲間のミュージシャンたちとソングライティングについて語っているんだけど、あるとき素晴らしいアーティストであるジョージ・クリントンと一緒に座って数時間話をするという幸運に恵まれて。
その収録が終わってすぐ、私はバンドがこの曲の作業をしていたスタジオに駆けつけた。そしたら、そこで出来上がっていたのは、クレイジーなストンプだった。ファシスト政権がブーツを履いて歩いているみたいな。それを聴いた私の脳のなかで、ノアの箱船のような物語のヴィジョンが思い浮かんだんです。ジョージ・クリントンと私が母船に乗り宇宙から地球に到着し、美しく神聖なものすべてを救う。どこか他の場所で再生するため、強欲で汚染されたものすべてを地球に残し、すべての動物、昆虫、苗を乗せて宇宙へ飛び立つ、という話」
――今作のデラックス・エディションにはボーナス・トラックとしてデヴィッド・ボウイの“Starman”のカヴァーが収録されています。〈Some rock ‘n’ roll ’lotta soul, he said〉〈Let the children lose it / Let the children use it / Let all the children boogie〉と、本物のロックを子供たち、つまり新しい世代に説くラインは、今作のリリースに際したあなたたちの情熱やモチヴェーションと重なるところもあったのでは?と想像しました。その点については、いかがですか?
「そうだと思う。あの曲は、若者たちがより多くの機会を持ち、より健康的な環境で生きることができるように、より良い惑星を残したい、という私たちの心からの願望が表現された曲だから。彼らの前の世代がより他人に対して寛容であれば、彼らの世代も性差別的な考えや憎悪を持つことをやめるようになると思う。それが私たちが未来に臨むこと。今回のレコードでは、そのもっとも重要な願望が表現されている。
この歳でそんな理想を語るなんて、考えが甘いと思われるのもわかっているんです。でも私は、アーティストとしてかなりの理想主義者だし、それはいまも昔も変わらない。私は私たちの背中を追うすべての人々のために、より良い地球が生まれることを望んでいるんです。
あと、カヴァーをするときは、ただそのアーティストをコピーするだけでなく、その曲に自分らしさをもたらすことが大切なこともわかっていたし、それをしなければカヴァーの意味がないこともわかっていた。私は彼の作品をとてもよく知っていて、彼の影響を深く受けているんです。“Starman”をカヴァーするなら、自分が何をしたいかは自分にとって明確だった。それが実現できて、すごく誇りに思う。
私からの敬意の印としてこのカヴァーを彼自身が聴くことができたらいいのにと思うけど、リスナーの元に届くだけでもすごくうれしい」
――本日はありがとうございました。
「こちらこそ。また日本に行けるのを心待ちにしています」
RELEASE INFORMATION

GARBAGE 『No Gods No Masters』 Stun Volume/Infectious Music(2021)
リリース日:2021年6月11日
配信リンク:https://garbage.lnk.to/NoGodsNoMasters
TRACKLIST
1. The Men Who Rule The World
2. The Creeps
3. Uncomfortably Me
4. Wolves
5. Waiting For God
6. Godhead
7. Anonymous XXX
8. A Woman Destroyed
9. Flipping The Bird
10. No Gods No Masters
11. This City Will Kill You
デラックス・エディション
12. No Horses
13. Starman
14. Girls Talk feat. Brody Dalle
15. Because The Night feat. Screaming Females
16. On Fire
17. The Chemicals feat. Brian Aubert
18. Destroying Angels feat. John Doe & Exene Cervenka
19. Time Will Destroy Everything