連載

【ろっくおん!】第39回 ビートルズ『1』DX版より、ジョージのレーベルから発表されたスプリンターの74年作を愛でるべし!?

ロック好きの大学生が集まって放課後タイムにダラダラおしゃべり! 専攻科目よりも皆さんロック史の研究に夢中なようですね!!

高い空にうろこ雲が淡い模様を描いている秋晴れの午後。ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。

 

【今月のレポート盤】

SPLINTER The Place I Love Dark Horse/Big Pink/ヴィヴィド(2015)

梅屋敷由乃「皆さ~ん、お疲れ様です!」

戸部小伝太「これは会長殿。どうしたのですか、松茸でも拾ったような顔をされて」

梅屋敷「えへへ、さっそく『The Beatles 1: Deluxe Edition』を手に入れちゃいました!」

鮫洲 哲「マジかよ!? つうか、俺も買う予定だけどな!」

梅屋敷「ロッ研に入って以来、もっとも嬉しいお買い物かもしれません」

戸部「ちょっと先輩方、何を血迷っているのですか。いま我々が本当に愛でるべきリイシューはこれでしょうが!」

鮫洲スプリンター!? 何だこの冴えない2人組は? 知らねえっつうの!」

梅屋敷ビートルズと関係のある方々なのですか?」

戸部「大アリですよ! ジョージ・ハリスンが設立したダーク・ホースの第1弾アルバムとして74年にリリースされたのが、何を隠そう彼らの『The Place I Love』ですぞ」

鮫洲「大アリってほどでもねえけど、確かにちょっと気になるな」

戸部「ふふ。第1弾ということで相当気合いを入れていたのか、ジョージみずからがプロデュースを手掛けたばかりか、プレイヤーとしてもハリー・ジョージソンという変名で全曲に参加していますぞ!」

梅屋敷「あら、それは凄いですわ! お紅茶を煎れるのでぜひ聴かせてください」

戸部「もちろん! そもそもスプリンターとはサウス・シールズ出身のビル・エリオットボブ・パーヴィスが70年代初頭に組んだデュオで、2人の作曲センスにジョージが惚れ込み、自身のレーベルに引き入れたようですな。その後、ダーク・ホースから3枚のアルバムを発表するも、大した話題にはならず……」

鮫洲「ダーク・ホースって、アティテューズとかケニ・バークとかヤバイ作品を出しているのに、大ヒットと呼べるリリースはないもんな」

戸部「左様。そのダーク・ホースを離れた後も、スプリンターは何枚かアルバムを作っているのですが、実は我が国とも縁が深く、日本制作のシングルでは中村雅俊ゴダイゴのカヴァーも披露していますぞ」

スプリンターによる中村雅俊“いつか街で会ったなら”のカヴァー

 

梅屋敷「ええっ!? でも私、残念ながら彼らのことをちっとも存じませんでした」

戸部「まあ結局のところ、地元でも日本でも鳴かず飛ばずのまま、84年には解散していますからね」

梅屋敷「ですが、この『The Place I Love』はとても素敵じゃありませんか! ビートルズやバッドフィンガーら英国ポップの流れを汲みつつも、どこかUS西海岸的な軽さや大らかさが感じられますわ」

鮫洲「つうか、フォーキー・ポップとちょいとメロウなAORの中間を行くようなサウンドは、まさにダーク・ホース時代のジョージっぽいよな」

梅屋敷「そういえば優しい歌声も似ていますわね」

鮫洲「随所でジョージお得意のスライド・ギターが入るせいか、まるで彼のソロ作を聴いているような気もしてくるぜ」

戸部「実際にゲイリー・ライトビリー・プレストンジム・ケルトナーなど、当時のジョージのソロ・アルバムに参加していたメンバーが顔を揃えていますからね。そういう聴き方もアリでしょう!」

梅屋敷「それを考えると、ヒットする要素はたくさんあったはずなのに、なぜ彼らはブレイクしなかったのでしょう。私、何だか悲しくなってきました」

戸部「まあ、すべてにおいて程々な感じがインパクトに欠けたのでしょうな。その中庸さがまたジョージ・ワークスらしくて、我輩にはたまらないのですがね」

鮫洲「流石に『The Beatles 1: Deluxe Edition』の話題性のデカさと比べるのは酷だけど、でもスプリンターのほうが何となくロッ研っぽいな」

梅屋敷「今日はコデータさんのおかげで良い作品と出会えました!」

戸部「いや、まあ、それほどでも……ゴホン」

 柄にもなく照れるコデータが可愛らしいじゃないですか。気付けば日も暮れてきたので、本日はこれにてお開きといたしましょう。 【つづく】

 

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