ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズ(Durand Jones & The Indications)『Private Space』ヴィンテージ志向と野心的試みが交錯する新鮮なソウル

2021.08.23

Evening Scandal.
ヴィンテージなサウンドと熱気漲るヴォーカルでモダンな支持を獲得してきたドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズがついに待望のサード・アルバム『Private Space』をリリース! ソウルフルな個性を守りつついよいよ野心的なその中身は……

 ドラン・ジョーンズとアーロン・フレイザーを中心に結成されたモダン・ヴィンテージなソウル・グループ、ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズが待望のサード・アルバム『Private Space』を完成した。もともとルイジアナの教会で育ったドラン・ジョーンズ(ヴォーカル)がシンガーを志して入学したインディアナ大学ジェイコブズ音楽院にてアーロン・フレイザー(ドラムス/ヴォーカル)、ブレイク・レイン(ギター)と出会った2012年にこのソウル・グループの物語は始まった。2016年にはわずか452ドルの制作費で完成させたという逸話のあるデビュー作『Durand Jones & The Indications』をコールマインからリリース。当時はダップトーンやビッグ・クラウン系列のソウル・リヴァイヴァリストたちがリー・フィールズやチャールズ・ブラッドリーらの作品を送り出し、メジャーなフィールドにおいてもリオン・ブリッジズやブリタニー・ハワード(アラバマ・シェイクス)らが大きな脚光を浴びていた時代。ドランたちもそうした流れで注目され、初作に収録の“Groovy Babe”がCMで使用されて一躍スポットを浴びる結果となった。

 ツアーなどで話題を集める傍ら2019年にはデッド・オーシャンズを経由して2作目『American Love Call』をリリースし、ここではフォーク・ロックも導入した結果ニュー・ソウル時代にも近づいたポップ/ロックなアプローチにも持ち味を拡張。さらにはシンガーとしての単独曲を発表しはじめていたアーロンが今年に入ってダン・オーバック(ブラック・キーズ)のプロデュースによるファースト・ソロ・アルバム『Introducing...』を発表し、ここでは往年のサザン・ソウルへの敬意とヴィンテージな機材への憧れから古今のセッション・プレイヤーを迎えた作りとなっていた。こうした経緯を踏まえて登場したのがバンドとしての待望のサード・アルバムとなる『Private Space』だ。

 60~70年代ソウルへの憧れがさまざまな角度から定着してポップ・フィールドでも普遍化されたことで、かつてのようなソウル・リヴァイヴァリスト自体のアドヴァンテージのようなものは薄れている昨今ではあるが、ここにきて彼らはオマージュの対象を広げてサウンドの振り幅を臆せず広げ、愛するオリジネイターたちの作法とモダンなアティテュードを巧みに融合させている。メロウに滑り出す幕開けの“Love Will Work It Out”はボビー・コールドウェル“What You Won't Do For Love”を下敷きにしたTK様式のメロウ・チューン(微かにカーティス・メイフィールドっぽいアレンジも素晴らしい)。続く“Witchoo”ではスペイシーなディスコ・ビートを大胆に導入し、ファルセット&チャントも絡めて煌めくダンスフロアへと身を任せている。70年代のフィリー・ソウルにまで愛を捧げた及ぶプライヴェート・スペース向けのアダルトな佳曲が並び、終盤にはルーサー・ヴァンドロス風味の“Sea Of Love”まで飛び出してきてビックリ。ラストの雨が降りそうな“I Can See”も実にドラマティックだ。総じてマニアックな引用ではなく美しい歌唱を伴いつつ定番への憧れを表現したようなオマージュが続くため、ソウル・ファンならずとも微笑ましい瞬間が楽しめる、実に気持ちのいい一枚となっている。

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