※1 サビ前の中国音階的なメロディーはポスト・パンクやそれと関係の深い70~80年代のジャーマン・ロックを連想させ、そういった雰囲気を濃厚に備えるバック・トラックの雰囲気とうまく繋がっている(歌メロとトラックの間の接着剤として機能している)ように思われる。

※2 個人的には小池桂一の伝説的ドラッグ・マンガ「ウルトラヘヴン」を強烈に連想させられる。渦巻/曼荼羅エフェクトが一瞬巻き戻りすぐに回転を再開するような演出も見事で、音飛び感のあるビートや、制作者であるYunomiがいう〈音源が左右の耳に届く数ms(ミリ秒)の時間差〉〈全ての音は遅れてる〉といった話をよく体現しているように思う。

※3 脚韻の巧みさはもちろんのこと、最初のサビの〈choose me〉が次のサビでは〈修理〉〈熱中して〉に移し替えられるような仕掛けも素晴らしく、しかもそれらがアーティスト・イメージや世界観を損なわないかたちで活きているのは見事というほかない。

※4 音楽などで一般的にいわれる〈中毒性〉は〈やめられない止まらない(しかし大した害はない)〉くらいの〈習慣性〉を表すことが多く、医学薬学でいうところの〈用量を越えると健康被害が生じる〉的な危険なイメージは伴わない場合が殆どだが、“Unison”はそういう言葉本来の意味での特性を良い具合に匂わせている印象があって素晴らしい。

※5 ここでいう〈親しみやすさ〉には絵や演者の可愛らしさ(様々な意味で)といった音以外の魅力も含まれる。こういった部分で訴求力が担保されていれば、音楽が特殊で敷居の高いものであっても聴く動機が生まれ、繰り返し接しているうちにいつのまにか耳が鍛えられてしまうことも多いし、実際そういうふうにしてシーンが成熟してきた面も少なからずあると思われる。

※6 “Ahoy!! 我ら宝鐘海賊団☆”はももクロ“猛烈交響曲・第七楽章「無限の愛」”(2012年)やSound Horizonなどを連想させるシンフォニック・メタル的な楽曲で、明確なコード進行の快感を前面に押し出した(アニソン~アイドル・ソングとしては定番の)曲調は“Unison”の攻めた音楽性とは対極に位置するものといえる。ただ、歌メロの質に関しては一貫するものがあって、それが上記のようなシーンの連続性や可能性を象徴してもいると思われる。

 


RELEASE INFORMATION

リリース日:2021年8月11日
配信リンク:https://marine.streamlink.to/unison

TRACKLIST
1. Unison
2. Unison (Instrumental)

作詞・作曲:Yunomi