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Photo by Linda Brownlee

今まで以上のハードワークをこなすのが僕らアーティストの使命

――分かりました。ちなみにパンデミックは、広く知られているあなたの規則正しい生活にも影響を及ぼしたんでしょうか?

※デーモンはツアー中を除いて月曜から金曜、9~5時をスタジオで過ごす

「ハハハ。大丈夫だったよ。僕は毎日家族8人のために料理をしていたから、その点では大きなチャレンジを突きつけられたけど、それも楽しかったし、ロックダウン中も朝早く起きて、毎朝海で泳いで、ヨガをやって……本当の話、僕の日課は全く変わらなかったな。というか、ほかに何もやることが無いし、逆に生産性は向上した(笑)。邪魔をするものは何もないからね」

――こういう特異な状況下でこそクリエイティブであり続け、記録を残すことは重要ですよね。

「うん。非常に重要だね。それどころか、普段より一生懸命作品作りに取り組まなければならないと思うんだ。この間にカルチャーの規模は一気に縮小されてしまって、今まで世界中に張り巡らされていたカルチュラルなコネクションが、断ち切られてしまったよね。そして現時点でも、まだまだ修復には程遠い。だから今まで以上のハードワークをこなすのが僕らアーティストたちの使命であって、そうすればいつの日か再び、みんなで集まって時間を共有し、我々が交わしていたカルチュラルな対話や意見交換を再開できるんじゃないかと、希望を抱いているんだ」

――先ほど『Song Machine』の話が出ましたが、全くアプローチは異なるものの、『Song Machine』も究極的にはパンデミック下の世界の記録でしたよね。

「そうだね」

――本作と『Song Machine』の間に、何らかの接点があると思いますか?

「そうだな。これは何にでも当てはまることで、音楽を作ることはヨガを続けることに似ていて、料理にも同じことが言えるんだけど、定期的に実践して練習を続ければ、からだが急に動かなくなったりはしないんだ。常にからだが解れていて、リラックスした状態に保てる。そういうことなんだよ」

――このアルバムには、全編を通じて、随所に水が流れる音が挿入されています。これらもアイスランドで録音されたものですか?

「そうだね。それぞれ録音された場所は違って、例えば滝の下だったり、浜辺だったり、山の頂で風が吹いている時に録音したものだったり、或いは鳥の鳴き声だったり……。アルニ(・ベネディクトソン)というアイスランド人の友人がいて、彼は経験豊かなフィールドレコーディングのアーティストでね。たくさんの映画で活躍しているんだけど、彼がこのアルバムで使ったフィールドレコーディングを、一手に引き受けてくれたんだよ」

――全ての曲が水によってつながっているような印象を与えていますよね。

「ああ、僕もそう思う。ふたつの世界が出会う場所に立つということが、僕にとっては最近すごく重要性を増しているんだ。そういう場所に身を置いている時が、僕は一番ハッピーなんだよ。そして、海辺で過ごすのも好きだからね」

 

2020年と2021年は世界にとって大きな意味を持つ

――次にアートワークについて伺います。ジャケットやブックレットに使われている美しい写真は、全てマートン・ペルラキ(Merton Perlaki)というフォトグラファーが撮影しています。本作のために撮り下ろしたんですか?

「ああ。全てデヴォンの、僕が住んでいるエリアで撮影されたんだ。アイスランドではなく。あっちには行けなくなってしまったからね。でもデヴォンとアイスランドには間違いなく近似性があるし、僕にとってはいい体験だった。

フォトグラファーは、深夜の3時頃に僕の家の周辺をうろついて写真を撮っていたよ。ある夜何かが光って目が覚めて、〈いったい何ごとだ?〉とビックリして外を見たら、彼が谷底で撮影していて、フラッシュが光っていたんだ(笑)」

――フォトグラファーに好きに撮ってもらったということですね。

「そういうことだよ。素敵なコラボレーションだったし、あれらの写真を別途手に入れたいと思っているんだ。美しい仕上がりだからね。それに11月にロンドンのギャラリーで展覧会が予定されているから、欲しい人は誰でも手に入れられるんだよ」

――ジャケットには、記念碑というか墓石にも見える岩の写真を使っていて、〈Damon Albarn 2021〉と、あなたの名前と共に制作年も刻まれています。どんな意図があるんですか?

「あのジャケットについてはみんなでじっくりと検討して、僕と一緒にこのプロジェクトに携わっていた人たちが、ああいう形にすることを強く望んでいたんだ。僕自身はただあの写真が気に入っていただけで、自分の名前も日付けも、特段添えたいとは思っていなかったんだけどね。ただみんなは、僕はひとつの記録作品を作り上げたわけだから、こういう形で提示するべきだという意見だった。

確かに、2020年と2021年は世界にとって大きな意味を持つわけで、そういう意味では、〈2021〉と記すことでこのアルバムを特定の時期にしっかりと固定し、つなぎ留めているんだよ」