
BiSが言うと下ネタにならない
――それぞれのオリジナル曲についても訊かせてください。“割礼GIRL”は皮をかぶらなくていいんだよというメタファーではあると思うんですけど、わりとダイレクトに割礼について歌っていて。大森さんがBiSに書くということで意識したことはありますか。
大森「逆にBiSが言うと下ネタにならないっていうのはありますよね。ZOCが割礼と言うと変なリアリティーが出ちゃうけど、BiSが言うとそんなに生々しさが出ない」
――たしかにそれはありますね。
松隈「最近のBiSではこういうのはやってなかったですよね。さすがだなと思いました」
――曲の最後に全員が大声で何かを叫んでますよね。
大森「渡辺さんに思ってることを叫んでくださいということで、はいどうぞって言って録りました。渡辺さんには内容を伝えずに(笑)。歌詞も事前に何も言わずに渡しましたね。怒られるかなと思ったんですけど、『なんか手厳しいね。大丈夫です』って感じでした」
――BiSはきつめの言葉を歌ってもなんだかユーモラスになるし、エモーショナルになりますよね。それは大森さんの指摘でなるほどなと思いました。
大森「でも意外と歌詞には品もありますよね。そこは考えました。松隈さんが提供してくれた“嫁がケツ噛まれた”の歌詞も好きでしたよ」

それでも毎日おしよせてくるトラブルが/まじやばい
――“BEGGiNG”も攻めた内容ですよね。
大森「もう予言かと思いました」
松隈「いつものパターンで僕が最初に歌詞を作るんですけど、これはすごかったですね。ZOCさんとのコラボだけど、狙って書かないほうがいいかなと思っていて。その頃、ちょうど隣の家の犬にうちの嫁がケツ噛まれたんですよ」
大森「かわいそう」
松隈「そこから僕のまわりに一か月くらいめちゃくちゃ不幸が訪れたんです。大森さんの前で言うのもなんですけど、今回の曲を作り始める時期だったので、ZOCの霊みたいなものに取り憑かれたのかなと」
大森「いや、逆に松隈さんのせいかもしれないな(笑)」
松隈「いやいやいや。それで不幸なことばっかり書いて、それを渡辺がもうちょっとストーリーにして。結果、すごくZOCらしい曲になってしまった(笑)」
大森「渡辺さんの心の叫びみたいですよね。〈それでも毎日おしよせてくるトラブルが/まじやばい〉って。〈仕事どころじゃない/お腹痛え〉とかも、渡辺さんって心あるんだと思いました(笑)」
――もちろん松隈さんや渡辺さんのパーソナルな面も出てると思うんですけど、マインドで繋がってるところがあるからか、松隈さんの言うとおり、完璧にZOCらしい歌詞になりましたよね。
大森「炎上したとき、〈もうやめて/諦めて/常識は持ち合わせてない〉って巫まろとふたりで仲よく歌ってました(笑)」
――炎上前にできていた歌詞だったんですね。本当に予言的。
松隈「ハマりすぎてやばかったです」
――〈それでも毎日おしよせてくるトラブルが/まじやばい〉への心の込め具合が歌からガンガン伝わってきますからね。
大森「トラブルが押し寄せてきますからね……」
松隈「メンバーの歌も個性的で。歌割りを考えるのも楽しかったです」
大森「にっちやんも曲に合ってますね」
松隈「みんなハマりましたね。ずっと録っていくならその後の戦略も考えますけど、一発勝負なので、全員がいまこの曲で生きるような歌を選びました」
――巫まろさん(ZOC)は松隈さんがやってこなかったタイプのボーカリストじゃないですか?
松隈「そうそう。まろちゃんがこっちのやりかたを少し剥がしてくれたというか。ほかの子は扱いやすかったというか、まろちゃんはいい意味で使いづらかったというのはあります。逆におもしろい使いかたができるなと思いましたね」