90年代から都内や横浜などでゲリラ的な活動を開始し、栗原務(LITTLE CREATURES)らとのNoise On Trashでも活躍してきた詩人・音楽家、山崎円城。聴くものの脳内にさまざまなイメージを浮かび上がらせる彼のスポークンワードと世界観は国外でも高い評価を得ている。
そんな山崎円城を中心とするグループ、F.I.B JOURNALの最新作『現象 hyphenated』が4月にアナログ化される。美容ブランドOSAJIのCEO/ブランドディレクターを務める茂田正和とのコラボレーション作品となる本作のテーマは〈聴く美容〉。ジャズパンクを謳うF.I.B JOURNALと美容ブランドによる異色のコラボレーションは、レコードというフォーマットを通じてどのように表現されるのだろうか。
今回は山崎とは活動最初期からの縁であり、1997年からはリーディングイベント〈BOOKWORM〉の初期の主催を共に務めていた青柳拓次との対談を企画。知る人ぞ知る90年代のスポークンワード/ポエトリーリーディングシーンの話から、サブスク時代の作品制作に至るまで、その対話は多岐にわたった。〈言葉〉に対するふたりの詩人の思想が浮かび上がる対話をお楽しみいただきたい。

社会への疑問から紡ぎ始めた言葉
――おふたりが初めて会ったのはいつごろなんですか。
山崎円城「大学でLITTLE CREATURESの栗原(務)と友達になったんですよ。そのころ青柳くんの家に栗原と一緒に遊びに行くタイミングがあって。確か青柳くんがブリストルから帰ってきたころだったのかな?」
青柳拓次「ああ、そうだったかも。雑誌『SWITCH』の旅の取材から帰ってきたばかりだったと思う」
――青柳さんはそのときのことを覚えてますか?
青柳「覚えてますね。確か僕は寝起きで、何かレコードをかけたんですよ」
山崎「寝起きでマーヴィン・ゲイをかけたんです。当時横浜のバーで働いていて、そこにレコードがたくさんあったんですね。マーヴィン・ゲイもそこでよくかけてたんだけど、夜に聴く音楽という印象があったので、寝起きでマーヴィン・ゲイを聴く人には初めて会ったなと思って(笑)」
――そのころ円城さんはもう音楽活動を始めていたんですか。
山崎「自分は川崎南部の出身なんですけど、工業廃水に飲み込まれて友達が亡くなってしまったことがあるんです。それに対する社会への疑問みたいな感覚があって、青柳くんと会う前から言葉を紡ぎ始めていました。実家にオルガンがあったので、それで音を鳴らしながら思いを言葉にし、テープにそれを吹き込んだのが最初でした」
――音楽活動という感覚でもなかった?
山崎「そうですね。ヒップホップもまだ聴いたことがなかったし、自分のなかのモヤモヤを成仏するためだけにやっていました。そのテープを栗原に聴かせたら〈おもしろい〉と言ってくれたんですよ」
――栗原さんはすでにLITTLE CREATURESでメジャーデビューしていたころですよね。
山崎「そうなんです。LITTLE CREATURESのメンバーにこんなものを聴かせるのはどうかと思ったんですけど(笑)。栗原に言われてMTRを買ってみて、それでいろいろ録っているうちに栗原と一緒にやることになりました。それがNoise On Trashになっていくんです」