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コラム

ジェイムス・アーサー(James Arthur)『It’ll All Make Sense In The End』全てに意味がある――辛い道のりを歩んできた歌い手の心境

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全てに意味があったことがいつかわかる

なかでも冒頭の“Running Away”は、深刻な心の問題と向き合わずに逃避してきた自分を戒めて、過去のあやまちを振り返り、ピュアな気持ちで音楽を作っていた頃に立ち返りたいと訴え、本作の道筋を予告しているかのような曲だ。以下、子供時代の体験、音楽業界での体験、さまざまな人間関係を精査し、まさにセラピーのセッションのような曲が続くのだが、今回は特に、自分を無条件に支えてくれている周囲の人々に言及し、感謝を捧げ、究極的にはラブソングに落とし込んだ曲が多いという点を特筆するべきだろう。

『It’ll All Make Sense In The End』収録曲“Running Away”
 

自分の心をいまにも爆発しかねない手榴弾に例える“Medicine”然り、〈世界が崩れ落ちたように感じるときも君がいてくれれば無傷でいられる〉と歌う“Avalanche”然り、逆に自分も他者の支えであろうとしている“Always”然り……。

『It’ll All Make Sense In The End』収録曲“Medicine”
 

またアコギのピッキングでシンプルに仕上げた“Emily”ではいつか授かるかもしれない子供に宛てて、親になる資格を持ちえる人間でありたいと歌い、“September”でも家族を持ちたいという願望を覗かせているなど、未来に向ける眼差しはいたってポジティヴ。バラード仕立てのフィナーレ“Take It Or Leave It”でジェイムスは、やはりポジティヴに解釈できるタイトルのフレーズ――日本語なら〈全てに意味があったことがいつかわかる〉といったニュアンスだ――でアルバムを締め括っている。追い詰められて苦しみもがきながらも、その苦悩は無駄にはならない、いつか全てが腑に落ちる日が訪れるだろうと、自他に言い聞かせるようにして――。

『It’ll All Make Sense In The End』収録曲“Emily”
『It’ll All Make Sense In The End』収録曲“September”
 

じゃあ彼は今度こそ自分のダークサイドと決別できたのか? アルバムはクリアな回答を与えてはいないし、そこまで単純な話でもないのだろう。でも、壁に直面しようと道を誤ろうとジェイムスには音楽という命綱があって、救いの手を差し伸べてくれる人がいて、必ず帰ってこられる場所があることを本作は物語っている。それに、前述した未来志向の言葉にも、明らかにこれまでとは異なる心境にあることが窺えるように思うのだ。

 

マネスキンとの意外な関係

そういえば、イタリアから現れた今をときめくバンド、マネスキンのフロントマン=ダミアーノ・デイヴィッドが最近のインタビューで、人生で最初に夢中になったアーティストとして、なんとジェイムスの名前を挙げていた。思えばマネスキンも「Xファクター」のイタリア版を介してデビューに至っており、こぶしが効いていてラップに近いダミアーノの歌い方には、ジェイムスのそれと通ずるところがある。未来のロックスターをインスパイアするという意外な貢献をしたことを知れば、彼も大いに元気付けられるんじゃないだろうか?

 


RELEASE INFORMATION

JAMES ARTHUR 『It'll All Make Sense In The End』 Columbia(2021)

 リリース日:2021年11月5日
配信リンク:https://JamesArthur.lnk.to/ItllAllMakeSenseInTheEnd_ALMK

TRACKLIST
1. Running Away
2. Wolves
3. Medicine
4. September
5. Always
6. Emily
7. Last Of The Whiskey
8. Never Let You Go
9. 4000 Miles
10. Deja Vu
11. Ride
12. Avalanche
13. SOS
14. Take It Or Leave It

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