©Ilaria Ieie

世界のハートを掴んだ怒涛のイタリアン・センセーション! 華やかでモダンで最高にグラマラスな新時代のロックスターがいよいよ日本に本格上陸するぜ!

華やかなロックスターのオーラ

 5月に開催されたヨーロッパ最大の音楽祭〈ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト〉において、今年は異例の番狂わせが勃発した。アバやセリーヌ・ディオンをはじめ多数の国際的スターを輩出してきた同コンテストの歴史は60年以上に及ぶ。各国のお国柄を窺わせるポップソングから大仰なシアトリカル系、おふざけから色物まで、とことん振り切った個性派アーティストが一堂に会する国際見本市として愛されてきた。そのキャンプなお祭りムードはNetflix配給の映画「ユーロビジョン歌合戦~ファイア・サーガ物語~」(2020年)にも描かれている通りだ。が、2021年は従来のポップ系シンガーではなく、イタリア代表のロック・バンドが決勝戦のラストに登場。そのパワフルな演奏と艶やかなカリスマ性でもって、会場はもちろん、TVやネットで観ていたオーディエンスまでもノックアウト。見事優勝を果たしてしまった。

 その優勝グループ、マネスキンはイタリアはローマ出身の4人組。久方ぶりに登場したセックス・シンボルという肩書きがまさにピッタリなダミアーノ・デイヴィッド(ヴォーカル)を中心にした、全員が20代に入ったばかりのグループだ。紅一点のヴィクトリア・デ・アンジェリス(ベース)は美形なのに機会があれば口を開けて舌を突き出す奔放なワイルド系。ギターのトーマス・ラッジは、他のメンバーといつもジャレ合ったりフザケてばかりいるグループのムードメイカー。一方ドラム担当のイーサン・トルキオは、ちょっぴり神経質そうで生真面目な印象だ。優勝が決定した際には、他の3人が抱き合って大喜びしているのとは対照的に、彼だけひとり床に座り込んで呆然としていたのが印象的だった。

 そんな異ベクトルが激しく交錯するバンドに内包されたエネルギーはとにかく強力で圧倒的。受賞曲“Zitti e buoni”(ジッティ・エ・ブオーニ=〈黙ってイイ子にしてな〉という意味)の早口言葉のようなイタリア語の響きも新鮮だった。そして何より突然現れた華やかなロックスターのオーラに当てられて、一瞬でファンになったという人々が続出したのだ。

 

成功までの足取り

 年齢的には若いが、4人のミュージシャンとしてのキャリアはかなりのもの。結成されたのは2015年というから、いまから約6年前のこと。当初はローマの繁華街などに繰り出し、路上演奏で腕を磨いていたそうだが、2017年に出演したTVオーディション番組のイタリア版「Xファクター」をきっかけにブレイク。番組内で演奏したカヴァー曲(フォー・シーズンズの“Beggin’”、ブラック・アイド・ピーズの“Let’s Get It Started”、キラーズの“Somebody Told Me”など)や、デビュー・シングルとなるオリジナル・ソング“Chosen”を収録したEP『Chosen』も大ヒット。本国イタリアを中心に快進撃をスタートさせている。

 TVのコンテスト番組出身者と言えば、デビュー時をピークに、その後どんどん人気が下降していくパターンが多いが、彼らの場合は、そこから着実にオリジナリティーを積み上げ、評価や知名度をアップさせていった。2018年に発表した初のフル・アルバム『Il ballo della vita』(イル・バッロ・デッラ・ヴィータ=〈人生のダンス〉)は、イタリアの国内チャートで1位を記録。“Morirò da re”(伊2位)や“Torna a casa”(伊1位)といったシングル・ヒットも次々と放たれた。当時のサウンドは、現在よりもポップで、マルーン5やブルーノ・マーズ、エクストリームらを彷彿とさせるファンク寄り。また曲によってはレゲトンやラップなども取り込んで、多様なポップ・ロックを鳴らしていた。実際、影響されたアーティストとして、彼らはブルーノ・マーズをはじめ、レッチリ、フランツ・フェルディナンド、アークティック・モンキーズ、デヴィッド・ボウイ、ハリー・スタイルズなどの名を挙げている。

 

恐れずにやっていい

MÅNESKIN 『Teatro d’ira - Vol. I』 RCA/ソニー(2021)

 だが、今年3月にリリースされたセカンド・アルバム『Teatro d’ira - Vol. I』(テアトロ・ディーラ=〈怒りの劇場〉)では、よりヘヴィーなサウンドへと進化。各メンバーの演奏力の向上もあるはずだが、ノリ一発ではなく、じっくり演奏を聴かせるスタイルへと成長を遂げ、シンプルだが統一感のあるマネスキンらしいサウンドの確立に至った。グラムやハード・ロック的な煌めきを纏いつつも、イタリアらしさを失わず、かつモダンなヘヴィー・ロックとして聴かせている。彼らの若さや直感、本能の為せる技とも言えるだろうか。伝統芸能としてのロックではなく、ワクワク胸躍らせる新鮮なヘヴィー・ロックをサラリとやってのけている。

 そんな彼らに対する世界の反応も早かった。ユーロヴィジョンが終わるや否や、受賞曲“Zitti e buoni”はヨーロッパ各国で大ヒット。TikTokから火が点いた前述のカヴァー曲“Beggin’”と共に世界のバイラル・チャートを席巻した。さらに続いてシングル・カットされた“I Wanna Be Your Slave”も全英TOP5入り。現在、全世界のチャートで猛威を奮っている。そのニュー・ヴァージョンには、イギー・ポップがデュエット参加という嬉しいサプライズも付いてきた。イギーの代表曲“I Wanna Be Your Dog”(ストゥージズ)と被るタイトルやテーマというのもあって実現したコラボだと想像されるが、あの生きるレジェンド・ロッカーが共演してくれたのだから、マネスキン株がいっそう跳ね上がるのも当然だろう。国際的な認知度やステイタスはぐんぐん右肩上がり、いまやスーパースター街道をまっしぐらといった様相だ。

 ユーロヴィジョンでは、優勝者として2度目の“Zitti e buoni”を披露した際にダミアーノが〈ロックンロールは不滅だ!〉と叫んだことでも大きな話題を撒いた。と同時に、ダミアーノが男性メンバーたちとキスしていたこともネットをザワつかせた。ごく自然な喜びのキスのようにも見受けたが、LGBTQ+の人々をサポートする意図も込められていたという。LGBTQ+に対する偏見が根強いポーランドのステージでも、ダミアーノは男性メンバーとキスをして〈こんなこと恐れずにやっていいんだ。誰を愛しようと自由なんだ!〉と叫んでプロテスト。そんな多様性をサポートし、自由を愛する姿勢もマネスキンらしさ。それは彼らの歌詞のみならず、ファッションやメイクを見ても一目瞭然だろう。従来のロック・スタイルのみならず、グッチやエトロをファッショナブルに着こなし、クールにキメまくるマネスキン。久々にドキドキさせられる大物ロック・アイコンの登場だ。

マネスキンの作品を紹介。
左から、2017年のEP『Chosen』、2018年のアルバム『Il ballo della vita』、2021年のアルバム『Teatro d’ira - Vol. I』(すべてRCA)

 

イギー・ポップが在籍したストゥージズの69年作『The Stooges』(Elektra)。“I Wanna Be Your Dog”を収録。