ウカスカジー、5年半ぶりのアルバム『どんなことでも起こりうる』​のリリースを記念して、タワーレコードではフリーマガジン〈TOWER PLUS+〉の臨時増刊号〈別冊TOWER PLUS+〉を配布中! ここでは中面のコラムを特別掲載いたします。別冊TOWER PLUS+は、タワーレコード全店にて12月1日(水)より配布中です!
※タワーレコードオンラインは除きます。※別冊TOWER PLUS+は無くなり次第終了となります。※天候や交通事情により配布が遅れる場合がございます。※現在、一部店舗が営業時間短縮中でございます。詳細はこちらをご確認ください。https://tower.jp/store/

ウカスカジー 『どんなことでも起こりうる』 トイズファクトリー(2021)

Mr.Childrenの桜井和寿とラッパーGAKU-MCによるユニット、ウカスカジーから約5年半ぶりとなるニューアルバム『どんなことでも起こりうる』が到着! 2019年以降に発表された楽曲に加え、カバー曲や新曲を含む14曲を収めた本作には、先が見えない時代を照らし、聴く者の心にポジティブな力を与えてくれる〈歌〉が漲っている。

時代は大きく動き続け、想像もしてなかった状況に直面することもある。もちろん上手くいかないことだってあるし、不安に負けそうになることもあるだろう。それでも僕たちは声の力、言葉の力を信じ、未来に向かって進んでいく。負けたっていい。思い通りの人生でなくてもいい。次のチャンスに精一杯、立ち向かっていこう――彼らの音楽を浴びていると、そんなパワーが自分の身体から湧き上がってくる。こんなにも解放的で前向きな気分になれたのは、本当に久しぶりだ。

Mr.Childrenの桜井和寿とラッパーGAKU-MCによるユニット、ウカスカジーからニューアルバム『どんなことでも起こりうる』が届けられた。前作『Tシャツと私たち』(2016年7月)以来、約5年半ぶりとなる本作には、2019年に配信限定リリースしたミニアルバム『金色BITTER』に収録された7曲に加え、2019年のツアーに密着した映像作品「ウカスカジーの大冒険~TOUR “WE ARE NOT AFRAID!!”~」の特典CDにデモ音源として収められた“コエノチカラ”、前回のツアーの移動中のキャンピングカーで制作されたという“PLEASE SUMMER BREEZE”、2022年にカタールで行われる「2022 FIFAワールドカップ」に向けた“勝利の笑みを 君と ~日本サッカーのために~”の新録バージョン、さらにシュガー・ベイブの“DOWN TOWN”、坂本九の“上を向いて歩こう”のカバーも収録。2019年以降のウカスカジーの軌跡を刻んだ本作は、「コロナ禍で塞がった気持ちを鼓舞するというかまとわりつく霧のようなものを少しでも晴れさせい!という想いで一生懸命つくりました」(ウカスカジー)というコメントが示す通り、なかなか先が見えない状況を明るく照らし、リスナーを〈楽しいこと、ハッピーなことを見つけにいこう〉というポジティブな気分に導いてくれる。

アルバム『どんなことでも起こりうる』は、“コエノチカラ”からはじまる。70年代のソウルミュージックの滋味を現代的なポップスに結びつけたサウンドのなかで桜井とGAKU-MCは、現状に対する不満や疑心暗鬼、現実から目を逸らしそうになる自分自身を見据えながらも、〈歌うんだ自由に〉〈その声で その魂で〉とリスナーを力強く鼓舞する。ゴスペルを想起させるコーラス隊の声も、チアフルなパワーに溢れている。

続く“PLEASE SUMMER BREEZE”は、アコギ、鍵盤ハーモニカの響きに導かれたミディアムチューン。歌詞の主人公は、猛暑に見舞われた都会で、日々の仕事に向き合う〈僕〉。若い日の素敵な夏の思い出を描きながら、〈Please Summer Breeze/風よ吹け 嫌なことなんか全て蜃気楼の彼方へ〉というラインを渾身の歌声で響かせる。フォーキーな音像からはじまり、最後は壮大なロックサウンドへと変化していくプログレッシブな構成にも心を奪われる。

2曲のカバー曲も、アルバムの大きな聴きどころ。“DOWN TOWN”では、GAKU-MCがオリジナルのリリックを加え、〈週末の街にくりだそう!〉という華やかな気分を盛り上げる。キーボードと歌ではじまる“上を向いて歩こう”では、フォークロック的なアレンジと桜井、GAKU-MCがバトンを渡すように紡ぐ歌によって、原曲の新たな表情を引き出している。共通しているのは、日本のポップスの歴史に刻まれている名曲であること、そして、この時代を生きる人々の生活や感情を彩る、普遍的な魅力を備えていることだろう。

本作のために制作された新曲についても記しておきたい。まずは“青春 FOREVER”。バンジョーを取り入れた有機的なトラックのなかで歌われるのは、青春時代に思い描いていた理想と大人になった自分の現実。どんな人であっても――もちろん桜井とGAKU-MCも――〈あの日描いた僕の未来像〉と現在の自分の状況のギャップを感じているはず。後悔や諦めに逃げそうになることも多い日々を描きつつ、それでも二人は〈まだ遅くない。青春は終わってない〉というメッセージを込めた歌を響かせている。

“Let’s get together~ウカスカクラスター~”は、ライブでのパフォーマンスを思い起こさせる、豊かな高揚感に満ちた楽曲だ。ギター、ドラム、ベース、管楽器、歌声が生み出すオーガニックなグルーヴとともに放たれる〈一緒んなって歌えばハッピーが感染して/ウカスカジーがクラスター〉は、このアルバムを象徴するラインの一つだろう。

ウカスカジーは本作『どんなことでも起こりうる』を携え、今年12月から来年1月にかけて全国ホールツアー〈ウカスカジーTOUR 2021-22 アディショナルタイム〉を開催。このアルバムに込められたオフェンシブな姿勢、フィールドを駆け回るような自由奔放な音楽をぜひ、たくさんの音楽ファンと共有したいと思う。