wrap around her words
[緊急ワイド]女性ラップ、百花繚乱
それぞれのスタイルと言葉を携えて、彼女がマイクを握りはじめた!
★Pt.2 日本語ラップ・シーン賑わせるS7ICKCHICKs、LOW HIGH WHO?の新星・春ねむりなど女性ラップの注目リリース
★Pt.3 泉まくら、MCpero、MICHINO、Y.I.M…多種多様に花開いた女性ラッパーたちの、いまチェックしとくべき12作品
lyrical school
パイオニアが綴る〈アイドル・ラップ〉の新たなガイドブック
「本当にいろんなスタイルの方が活躍されていて、ラップ・シーンが盛り上がってきていると感じます。その中でも、男性中心というイメージだったり、〈ラップってこんな感じでしょ?〉みたいな固定観念をリリスクが壊していけたらなぁと思います。ラップは、もっとハッピーで、自由に楽しめるっていう一面を持っていることを、リリスクの音楽でわかってもらえたらなって。ラップ界を盛り上げる一翼を担いたい!」(minan)。
満を持して今年メジャー・デビューし、4月の第1弾シングル“RUN and RUN”の縦型スマホ推奨MVが大きくバズったことも記憶に新しいリリスクことlyrical school。2010年にtengal6として始動し、いわゆる〈アイドルラップ〉の草分けとしてさまざまな変遷を経て現在は(写真左から)mei、ami、hime、minan、ayakaで活動する5人組だ。5月には初の主演映画「リリカルスクールの未知との遭遇」が公開され、7月の“サマーファンデーション”、10月の『マジックアワー/格好悪いふられ方 -リリスクの場合-』とコンスタントなシングル発表を受けて、このたび届いたのがメジャー・ファースト・アルバム『guidebook』だ。
これまでも著名なラッパーやトラックメイカー陣が楽曲面をバックアップすることでアイドル好きの間に止まらない注目を集めてきたリリスクだが、今回は“リリシスト”を提供した大江千里×GAKU-MCをはじめ、韻シスト、connie、かせきさいだぁ、サイプレス上野らも作家として迎え、メロディーの良さも意識しながら曲ごとのカラーをさらに強化。一方で、初期作から関わっていた泉水マサチェリーや呂布(KANDYTOWN)の参加もあって、名作『CITY』の頃のフレッシュネスを改めて思い出すというヘッズも多いのではないだろうか。
もちろん、もともとプライヴェートで「ラップ以外はあまり聴かない」というhimeが昨年12月に加わってラップ面を増強しつつ、歌唱面をリードするminanが「歌はとにかく私が引っ張っていくという気持ちでやっています。私たちはラップ・グループだけど、歌パートも大切なので、そこを疎かにしたくない。ラップはもちろん、歌も聴かせたいです」というように、5人各々の嗜好や持ち味のグラデーションが、リリスクの独自性を導いているのは言うまでもない。時に饒舌に、時にメロウに、日常の何気ない彩りをドラマティックに描き出す作品性の高さはやはり唯一無二だ。
なかでも、サイプレス上野が作詞したALI-KICK製の“プレイルーム”は「聴いたらわかるくらいヒップホップ感強めで、個人的にもめちゃくちゃラップしやすかった」(hime)という通りの出来だし、himeの声ネタ風のフックをあしらった泉水マサチェリーによる“GOLDEN”あたりも日本語ラップ好きを明快にキャッチするだろう。さらにminanがソロで歌うパートもかっこいい “ラストソング”は、「ラップの譜割りやフロウも難易度が高めで、私たちもテイクを重ねたぶん聴き応えがあると思うし、メロディーも切なくてずっと聴いていたくなるような曲」(minan)、「かなり難しかったので、挑戦した一曲です。アイドル・ラップでもここまでできるんだぞとこの曲で伝われば嬉しいです」(hime)と語るように、変則的なビートと歌とラップが良いバランスを作り上げた新境地だろう。
「リリスクのアルバムは、どれも、アルバム丸ごとでひとつの物語が描かれているようなものになっていますが、今回は特にそうだと感じています。過去、現在、未来という時の流れの中で変わっていくもの、変わらないもの、変わらないでほしいものがある。でも何があっても、リリスクが想像する未来はいつだって明るいんです」(minan)。
いずれは「自分で書いたリリックを自分でラップして、歌って、自分で作ったトラックに乗せたいです。いまMPCを勉強中なので、それで演奏もして全部できるようになりたい」(minan)と述べるように、次作への意欲も窺わせるリリスク。結成6周年を突破して見据える今後がまた楽しみになってき た。
『guidebook』に参加したアーティストの関連作を一部紹介。