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〈完璧じゃない〉2人のラブストーリー

――今回は全編日本語詞であることがポイントで、Kentaさんのオリジナル曲では初なんですよね。そして、その歌詞がまた素晴らしい。ラブソングではあるのですが、難しい局面を迎えた2人のことを歌っていて、歌詞にもあるとおり〈宙ぶらりん〉な関係性が描かれています。

Kenta「“Strawberry Psycho”にも、ちょっとそういうところがあったと思います。この曲は、完璧な2人のラブストーリーじゃなくて、2人とも〈完璧じゃない〉ということを感じながら、その関係性をどう続けていくかというステージにいる、もっとリアルな2人の物語なんですね」

――イマジネーションで書いたんですか?

Kenta「イマジネーションもありますね。ただ、“Strawberry Psycho”では自分が足を踏み入れたことないような世界を描いたんですけど、この曲は部屋でコーヒーを飲む場面から始まるように、より身近なものを作りたいというイメージでした」

――そのアイデアはどこから出てきたのでしょう?

Kenta「具体的にどこから来たのかはわからないんですけど、最近はこういう歌詞を書くことが多いですね。自分の生き方、学業のことや人間関係、それにコロナ禍など、人生において思い通りにいかないこと、〈完璧じゃないこと〉って、誰にでもあると思うんです。常にハッピーではいられないし、常に笑顔でいられるわけでもない、というか……。なので、ストレートなラブソングもいいのですが、いまの僕が書きたくなるのはもっとリアルな歌なんです。たぶん、そういった最近の僕の考えや経験が反映されていると思いますね」

――なるほど。最近は物事に白黒つけたがる人が多いと思うのですが、現実の世界で生きていくことってそうじゃないですよね。グレーゾーンやグラデーションがたくさんあって、〈0か1か〉では決められないことが多い。“Stay with me”は2人のことを歌った小さな物語ですが、そんな現実が表れていると思います。

 

KOSEN

コピーライター浦野紘彰と生んだ情感豊かな日本語詞

――作詞については、Kentaさんの英語詞を浦野紘彰さんと日本語詞に変えていったそうですね。コピーライターである浦野さんとの作業も、Kentaさんにとって新しいチャレンジだったのではないかと思います。

Kenta「そうですね。まず、浦野さんに曲の背景やストーリーをお伝えして、英語を日本語に変えていきました。なかでも〈Forever don’t seem too long with you〉というフレーズを日本語にするのが難しくて……。でも、浦野さんが出してくれたアイデアが素晴らしかったんです。

歌っていてすごくいいなと感じますし、ユニークな表現が多くて、僕が書いたときの気持ちが残されていながらも新しいストーリーが生まれていて、素敵だなと思います」

――2人で試行錯誤してこの日本語詞が出来たんですね。

Kenta「KOSENさんやチームのみんなにも相談して、助けてもらいながら作りました。日本語って難しいですよね(笑)」

KOSEN「英語詞の節回しからなるべく離れないように、違和感のない日本語の節回しをプリプロで探ったりして、何パターンも歌ってみたよね」

――僕が一番のキラーフレーズだと思ったのは、〈解けない魔法はいらない〉というラインです。二重否定なので日本語としておもしろいですし、歌詞に合わせてメロディーが上昇していくので、すごく印象に残りました。ここが、さっきKentaさんがおっしゃった〈Forever don’t seem too long with you〉にあたる部分ですよね。

Kenta「僕も、そこはすごいと思います(笑)」

――Kentaさんは、英語詞とはまた異なる世界が描かれたこの日本語詞について、どう感じていますか?

Kenta「魔法がかけられた感じですね。さきほど言ったように、元の英語詞は自分に近い場所で展開されるストーリーをイメージしていたのですが、日本語詞はより大きなアイデアや世界を描いていて、開放感があります。この曲の新しいインタープリテーション(解釈)が生まれたと思いますし、大好きな曲になりました」

――ドラマティックで、一本の映画の脚本のようですよね。さらに、〈春色の服とか〉から始まる四季の移ろいを歌ったブリッジは歌のリズムも変わるので、アクセントになっていて印象的です。

Kenta「元々は、秋から冬にかけてのサンクスギビングやクリスマスの頃をイメージしていた部分です。でも、あの日本語詞になったことで、いつ聴いてもいい曲になったと思います。春に聴いてもいいし、夏でも……〈ノリノリの夏〉って感じではないけど(笑)。ゆったりした夏にも合いますよね。すごく好きなパートです」

――日本語詞を歌ってみていかがでしたか? 日本語の響きや語感を活かした歌詞なので、難しかったのではないでしょうか?

Kenta「チャレンジでしたが、新鮮でしたね。これまでも部分的に日本語に置き換えた曲は歌っていたんですけど、歌い方やノリ方には毎回苦労していたんです。今回は全編日本語詞なので、デモを録る時はワンラインずつ録っていきました。英語のリズムから抜け出すのは難しかったですね。でも、新しい経験で、すごく勉強になりました。

僕にとって日本語詞の曲を作ることはゴール(目標)のひとつだったので、それに一歩近づけたかなと思います」