天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴のものを紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。ロシアによるウクライナ戦争が、音楽シーンにも大きな影響を及ぼしています。3月4日の〈Bandcamp Friday〉では、ウクライナを支援する動きがたくさん見られましたね。一方、ロシア国内ではユニバーサル、ワーナー、ソニーというビッグなメジャーレーベルが業務を停止。欧米のアーティストのライブもどんどん中止されています。今後、どうなってしまうのでしょうか……?」

田中亮太「先週の話題といえば、日本でも公開された映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の影響でニルヴァーナの“Something In The Way”(91年)のストリーミングサービスでの再生回数が急増、というものがありましたね。自分は映画を未見なんですが、劇中で印象的に使われているそうです」

天野マット・リーヴス監督は脚本の段階から“Something In The Way”に言及していたらしく、ロバート・パティンソンが演じたバットマン役のキャラクター造形にも深く影響を与えたそうです。また、リドラー役のポール・ダノも役作りの面でこの曲からインスピレーションを受けていたみたい。映画のトーンを決めた一曲なのでしょうね」

田中「『THE BATMAN-ザ・バットマン-』で初めて聴いて好きになった、という若い世代のリスナーも多いんでしょうね。どういう使われ方をされているのか、映画を観るのが楽しみです。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

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Oliver Sim “Romance With A Memory”
Song Of The Week

田中「〈SOTW〉はオリヴァー・シムの“Romance With A Memory”です! オリヴァー・シムはThe xxのボーカリスト/ベーシストですが、バンドからはロミー(Romy)も2020年にソロデビューしています。『I See You』(2017年)以降、3人は個人としての時間を過ごしていたそうで、いまバンドはそういう時期なのでしょうね。ロミーのソロシングル“Lifetime”(2020年)は思いっきりアッパーでダンサブルな路線の名曲でしたが、オリヴァーのソロデビュー曲“Romance With A Memory”はThe xxとも異なるムードでおもしろいと思います」

天野「この曲はジェイミー・xxがプロデュースしているので、ほぼThe xxなんですけどね(笑)。とはいえ、やっぱりオリヴァーの曲だな、と思いました。彼が大好きなホラー映画や彼自身の人生からインスピレーションを得た曲だそうで、ホラー映画的な雰囲気と60年代のポップソングを思わせるソングライティングがユーモラスでキュートな形で結実していますよね。オリヴァーのボーカルはスコット・ウォーカーっぽいダンディーな感じが増していて、ムードがすごい。ロミーのソロ活動も楽しみですが、オリヴァーはオリヴァーで独自の路線を歩んでいきそうでわくわくします」

 

Megan Thee Stallion & Dua Lipa “Sweetest Pie”

天野「今週の2曲目は2人の女性スターによるコラボ曲。メーガン・ザ・スタリオンとデュア・リパという米英のラッパー&シンガーがタッグを組んだ“Sweetest Pie”です。煌びやかなシンセと軽快なギターを効果的に使ったディスコポップ的なサウンドが最高。音楽性的には『Future Nostalgia』(2020年)以降のデュア・リパのダンサブルなモードにメグが加わった、という印象です」

田中「確かに。とはいえメーガンのスタッカートが利いていてリズミカルなラップは、こういう跳ねたビートのトラックにマッチしていますよね。もともと、デュア・リパの『Future Nostalgia』の収録曲“Levitating”にメーガンのラップを乗せたファンメイドのリミックスがバイラルヒットしたことを受けて、メーガンが〈デュアとコラボしたい〉と語ったことから、実際の共作に繋がったそうです。メーガンはこの曲を〈私とデュアという感じのサウンド〉と気に入っているんだとか。“Sweetest Pie”はメーガンのきたるニューアルバムに収録予定とのことです!」