超待望のサード・アルバムがいよいよ完成! 楽観主義から導き出したかつてない自信を胸に、新たな手合わせから創造した力強いダンス・ミュージックで踊れ!
ラディカルな楽観主義
改めて振り返れば、2020年3月にリリースされたデュア・リパのセカンド・アルバム『Future Nostalgia』は、良くも悪くも絶妙なタイミングで届いた一枚だったと言えるだろう。前年から先行ヒットの“Don’t Start Now”や“Physical”が下地を作ってきたなか、パンデミックに伴う最初のロックダウン期間と重なったことで、予定されていたプロモーションやツアーは中止や延期に見舞われている。一方でポジティヴに捉えれば、大多数の人が否応なく画面を眺める時間を増したであろう時期に、未来的でノスタルジックな親しみやすいサウンドが現実逃避の手段となり、アルバムが不安を振り払うためのダンス・レコードとして機能したのは間違いない。結果的には“Break My Heart”“Levitating”……と数珠繋ぎのヒットが続き、翌年のグラミーで〈最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム〉、ブリット・アワードで〈最優秀ブリティッシュ・アルバム〉を受賞するまでもなく、同作は2020年を代表する名作として確固たる評価を獲得した。
その後はリミックス展開やリパッケージで熱狂をエクステンドしながら、延期を繰り返していたツアーも2022年に敢行。2023年の夏には映画「バービー」からの“Dance The Night”で全英No.1に輝いているが、その頃にはすでに次作は着々と進行していたのだろう。そのように入念な構想を経て完成したのが、このたびリリースされるサード・アルバム『Radical Optimism』である。
本人いわく新作は「サイケデリック・ポップを注入した英国のレイヴ・カルチャーへのトリビュート」とのことで、昨秋に全英2位を記録した先行シングル“Houdini”は奇術師ハリー・フーディーニ(脱出パフォーマンスを得意としていた)に引っ掛けた挑発的で勇ましいダンス・ポップ。ここではケヴィン・パーカー(テーム・インパラ)とダニー・L・ハールをプロデューサーに初起用し、ソングライターには“New Rules”や“Don’t Start Now”で実績のあるノルウェーのキャロライン・アイリン、さらにカナダのトバイアス・ジェッソ・Jr.(アデル他)を迎えている。
それに続いた今年最初のシングルは、2月のグラミー授賞式で初披露された強靭なディスコの“Training Season”。つまらない相手への不満を歌った内容で、「デートが数回うまくいかなくて、最後のデートがいちばんキツかった。翌朝スタジオでキャロラインとトバイアスにデートの話を訊かれて、私は即座に〈Training Season is over(研修期間は終わり)〉と宣言した。友達との楽しいひとときのように笑いがこみ上げ、そこからすぐに出来上がった曲」だという。