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大人になっていくことへの不安を映した“フェーダー”

――mzsrzは〈micro music(ミクロ・ミュージック)〉というコンセプトのもと、DECO*27さんサウンドプロデュースによる、聴き手一人ひとりの心の機微に寄り添うような歌を届けていますが、皆さんもこれらの楽曲で描かれているような、もやもやした感情を抱えていたりするのでしょうか?

大原「(深くうなずきながら)抱えまくりです!」

よせい「実際に“夜明け”や“ノイズキャンセリング”に関しては、DECO*27さんが私たちの話を聞いたうえで作ってくださったので、私たちの気持ちも入った曲になっているんです。その意味ではみんなの抱えているものも入っていると思います」

――では、今回のアルバム収録曲のなかから、自分自身が抱えている気持ちにとりわけ寄り添ってくれていると感じる楽曲を、一人ずつ紹介していただけますでしょうか。

よせい「どの曲もそうなんですけど……特に今回のアルバムのリード曲になっている“フェーダー”は、歌詞の最初のフレーズ〈待ちに待った未来は ちゃんとあっていますか〉からすごく共感しました。私はありがたいことに、いまこうして歌のお仕事をさせていただいていますが、現実的には家族からの反対があったりもして、親からは〈普通の仕事をして〉と言われてたりもしているんですよ。でも、私はそこで〈普通って何だろう?〉と思って」

『現在地未明』収録曲“フェーダー”
 

――よせいさんはmzsrzに加入する以前から、ソロで弾き語り活動などを行っていましたけど、まだご両親からは心配されている。納得してもらえるような理解は得られていないんですね。

よせい「で、いざ自分が歌手活動するとなったときに、〈本当にこれでいいのかな?〉とか〈私がいる意味があるのかな?〉と思うことが、いままでに何度かあったんですよ。そんなことを考えていたタイミングに、この“フェーダー”のデモをいただいて。ゆゆんもこの曲を聴いた瞬間に泣いたらしいんですけど、私もすごく共感したんです。今回のアルバムのタイトルが〈現在地未明〉なんですけど、本当にいまの私の現在地はあっているのかを考えさせられたし、この曲が自分の気持ちにいちばん重なりました」

ゆゆん「この曲のレコーディングをしたのは(2021年の)夏頃だったんですけど、私はそのとき、(出身地の熊本から)上京して間もない頃だったので、心が不安定で切羽詰まっていたんですよ。だから〈待ちに待った未来は ちゃんとあっていますか〉という歌詞を聴いた瞬間、デモ音源だけど私に語りかけているように感じて、感情がブワッと溢れて泣いてしまって。すごく救われました」

――“フェーダー”は、皆さんのように若い世代の人が成長して〈大人〉になっていくことへの不安を表現していると同時に、あの頃の気持ちを忘れてしまった〈大人〉にも刺さる内容になっていて。その意味でmzsrzの楽曲は幅広い世代に届くものだと、この曲を通して改めて感じたんですよね。

一同「ありがとうございます!」

よせい「さっき作山が話していたように、実際にファンの方々からSNSで直接感想をいただくことも多いのですが、私たち世代だけでなく、いろいろな世代の方に届いていることは実感していて。私たち自身も等身大の気持ちで1曲1曲歌っているんですけど、すごくありがたいなと思っています」

 

砕け散った心を歌った“パントマイム”

――大原さんは先ほど深くうなずかれていましたが、どの楽曲が自分の抱えている気持ちにシンクロしましたか?

大原「私は“パントマイム”という曲です。私は本当に友だちを作るのが苦手で……(苦笑)。でも、小学生の頃まではみんなとしゃべるのが大好きで、友だちがすごく多かったんです。ただ、その頃は友だちと浅く広く付き合う感じだったので、すれ違いやケンカしてしまうことも多くて、そのたびに辛い思いをしていたんです」

『現在地未明』収録曲“パントマイム”
 

――それでだんだん人付き合いが苦手になったんですね。

大原「この曲には、ガラスが割れた音みたいな効果音が入っていて、その音が鳴るたびに、その当時の私の砕け散った心や、友情がパリッと割れたときの情景が思い浮かんでしまって。だからあの頃を思い出して辛くなる曲でもあるんですけど、そんな経験をしてきたせいか、いまはmzsrzのメンバーや地元の友だちを含め、少数の友だちと深く付き合うようにしているんです。

歌詞も〈触んないでよ〉や〈量んないでよ〉みたいに、相手との距離を取ってしまうような言葉が多くて。私もいまはちょっと知り合っただけの相手には踏み込んでほしくなくて拒絶してしまうから、すごく共感できて。〈DECO*27さんはなんで私のことを知ってるんだろう?〉と思いました(笑)」

 

自分の抱えているもやもやをスッとなくしてくれる“フィルター”

――続いて作山さんはいかがですか?

作山「私は“フィルター”という楽曲にすごく助けられました。この曲は相手に思いが届かないもどかしさを歌っていて。私は今年が高校受験の年だったんですけど、受験のストレスで親や周りの人に対して態度が悪くなった時期があったんです。そんなときにこの“フィルター”を聴いて、本当は感謝しているけど八つ当たりしてしまう、自分の本当の想いを届けられないもどかしさと重なって。自分のことを代弁してくれているような気がしました」

『現在地未明』収録曲“フィルター”
 

――“フィルター”はTVドラマ「部長と社畜の恋はもどかしい」のエンディング主題歌ということもあり、もどかしい関係性が歌詞のモチーフになっていますが、たしかにそれは家族や友人にも重ねられますね。

作山「あと、私がいちばん好きなのが〈その天秤に揺られながら夢を見ようよ〉という歌詞のところで。その部分はみんなの歌声が水のようにきれいで、音程も一音ずつ上がっていくので、聴いていると天国に導かれるような、心が浄化されるような気持ちになるんです。そこで自分のもやもやがスッとなくなる感じがして、助けられました」

よせい「この語彙力が彼女の強味です(笑)」

 

“夜明け”では、自分を助けてくれた音楽や友だちへの感謝を外に出せた

――実果さんはどの楽曲が自分の気持ちに寄り添ってくれていると感じますか?

実果「私は“夜明け”の〈絶望を照らした偶然が まだ大丈夫って笑うんだ 夜明けの歌〉という歌詞がすごく好きで。〈絶望を照らした偶然〉というのは、私にとってはオーディションや、いままで聴いてきた音楽、友だちや先生だったりして、歌っているといろんなものが思い浮かんでくるし、それに向かって歌っている感じがするんです。それまでは自分の〈好き〉を共有したくて歌っていただけだったんですけど、その人たちへの感謝の気持ちを初めて外に出せたので、すごく大切な曲です」

――誰かに届けるために歌う。そうした歌手としての心構えが得られたわけですね。

実果「それと私は自分が悩んでいることを他の人に話すと、その人も嫌な気持ちになってしまうんじゃないかと思って、ずっと抱え込んでいたんです。だからこの曲の〈辛くたってひとりで抱え込んでいたんだ〉という歌詞を聴いたときに〈それだ!〉と思って(笑)。私にとってはすごく刺さる歌詞だし、みんなでまっすぐ前に全力で届けている感じがして、大好きです」

 

いじめられていた経験がフラッシュバックした“アンバランス”

――最後にゆゆんさん、“フェーダー”についてもお話しいただきましたが、他の楽曲ではいかがですか?

ゆゆん「“アンバランス”ですかね。この曲の歌い出しの歌詞、〈つい選んだの甘い甘いご褒美は〉を見たときに、これは自分の過去だなと思いました。私は小学生のときにいじめを受けていた経験があって。そのときに、自分の身を守るために、みんなから距離を取ったんですね。ターゲットが私じゃなくなったとしても、その誰かを助けようとすると、またいじめられるのが怖いから、もう誰にも関わらないでおこうって。ターゲットが自分じゃなくなって、そのときの安心してしまった気持ちが、なんとも言えず〈甘い甘いご褒美〉に重なったし、そのあとの歌詞も私がいじめられていた頃の心情を表しているように感じて、すごく怖くなりました」

『現在地未明』収録曲“アンバランス”
 

――ちょっとしたバランスの変化で立場が逆転してしまう、まさにアンバランスな世の中の理不尽ややるせなさが描かれた楽曲ですよね。ただ、mzsrzの楽曲は最終的には前を向いているものが多くて、それを多感な年頃の皆さんが歌っていることも大きな魅力だと思います。

よせい「歌っている私たち自身が、どの曲にも共感して、愛せているので、本当にいろんな方に届いてほしいですし、私たちと同じ気持ちになってくださったら嬉しいなと思います」