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インタビュー

矢川葵『See the Light』昭和歌謡を歌い継ぐソロアイドルが、堂島孝平による初オリジナル曲を含むファーストEPを語る

 歌っている女の子を身近に感じては恋の妄想を膨らませたり、自分勝手に浮かれてみたり切なくなったり。浸っている世界のなかで、送り手と聴き手、私とあなたが1対1の関係だった80年代のアイドル・ポップを実体験していたティーンは、楽曲を通じてみんなそういう甘い気持ちになっていたことだろう。矢川葵は、そんなリアルタイマーからすれば娘ぐらいの年頃にあたる世代だが、その〈ファンタジー〉とも言えるような80年代アイドルの世界観にときめきを覚え、自身で歌うことによってさらに楽しさを知った。

 「歌っているときは、理想のかわいい女の子になれる瞬間というか、普段の私はそんなにキャピキャピした感じではないので、〈こういう女の子になれたらよかったな〉みたいな気持ちを歌のなかで叶えさせてもらえっていて……楽しいです」。

 昨年5月30日に活動を終了したMaison book girlのメンバーのなかでも、どこか古風であどけないルックスと、純乎たる歌声でファンを惹きつけていた彼女だが、グループの活動終了からほどなくして音楽活動再開を発表した際、掲げたテーマは〈大好きな昭和歌謡を現代に歌い継ぐソロ・アイドルになる〉ことだった。小さい頃は松浦亜弥に憧れ、母親の影響で松田聖子をはじめとする80年代アイドルにも親しみ、グループ活動時にはお誕生日イべントなどでカヴァーを披露してきた。

 「ひとりで歌うとなったら、ずっと好きだった松田聖子さんの曲とかがいいなって、毎年イべントでは歌わせてもらってたんです。グループがなくなって自分ひとりでやることになったときも、やっぱりそこでやっていたように歌えたらいいなって」。

 ソロ活動を始めるにあたって募ったクラウドファンディングでは、目標の3倍以上となる1,000万円超の額=大きな期待を集め、プロジェクトは進んだ。12月には松田聖子“瞳はダイアモンド”、年が明けて2月には中森明菜“スローモーション”のカヴァーを配信。MVも制作され、そこでは視線を釘づけにする艶やかな表情も見せてくれた。そしてこのたび、その2曲にオリジナル1曲を加えたファーストEP『See the Light』が到着。初めてのオリジナル曲“ほんとはThink Of You”は、堂島孝平の作詞作曲によるものだ。

 「オリジナルを誰に書いてもらいたい?って訊かれたとき、真っ先に〈堂島孝平さんにお願いしたいです!〉とお話ししました。ただ、自分から〈こういう曲が欲しい〉と注文したことがなかったので、なんて言って進めたらいいんだろう?って。80年代アイドルのキラキラした感じがいいとか、春っぽい感じの可愛らしい曲がいいですみたいな、最初はすごくアバウトな注文をしました(笑)。そこから堂島さんが〈たとえば春っぽい曲だとどういう曲が好き?〉って訊いてくださったり(答えは南野陽子“吐息でネット”)、〈架空のCMソングっていう体で作ったらイメージしやすいかも?〉っていう提案をいただいたり、それでいろいろ考えて〈喫茶店〉というテーマがいいんじゃないかってことになったんです。私も古い喫茶店に行くのが趣味なので、実際に行ったことはないですけど、〈銀座のパーラー〉をイメージして堂島さんに作っていただきました。歌詞の語尾も〈……だわ〉とか〈……ね〉とかイマドキの女の子があまり使わないようなかわいい感じにしたいってお願いして」。

 80年代アイドル・ポップ流儀に則った煌びやかなサウンドと弾むリズムに乗せ、友達以上恋人目前の2人がテーブルを挟む微笑ましい風景が描かれた“ほんとはThink Of You”。『See the Light』では「自分でも満足いく作品が出来ました」と語る。

 「グループのときからずっと応援してくれる方がいて、その人たちがいなかったらひとりで戻って来なかったと思います。また会いたいなっていう気持ちが原動力になってるので、少しでも長く歌えたらいいなって思うし、そうですね、安泰だとは思ってないです、全然(笑)。次のオリジナルはもっと大人っぽい曲がいいかなとか、ずっと興味をもってもらえるように、自分をプロデュースしていかなきゃって思っています」。

 こんな曲を歌ってほしかったという期待に応えつつ、まだまだいろんなことに応えてくれそうな器量を十分に感じさせてくれる『See the Light』。聴き終えたそばから〈もっと聴きたいな〉って、耳が言ってくる。 

 


矢川葵
大阪出身のソロ歌手。2014年に〈ミスiD 2015〉のファイナリストに選出され、同年にMaison book girlのメンバーとして活動を開始。グループ在籍時から昭和歌謡や80年代アイドルへの造詣の深さで知られてきた。2017年にTomgggのコラボで“ON THE LINE”をリリース。2021年5月のグループ活動終了を経て、同年9月に〈昭和歌謡を現代に歌い継ぐ〉ことをコンセプトとしたソロ・アイドルとしての活動再開を発表。12月に松田聖子のカヴァー“瞳はダイアモンド”、今年2月に中森明菜のカヴァー“スローモーション”を連続で配信する。3月27日に東京・キネマ倶楽部での初ワンマンライヴ開催も控えるなか、このたびファーストEP『See the Light』(anon)をリリースしたばかり。

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