78本指のギタリスト、22個のドラムを乱れ打つドラマー、そしてキーボード奏者という3体のロボットに自身の楽曲を演奏させる——当初は単曲企画だったものの、(ロボットをすべて買い取りたいと言わしめるほど)コンセプトをいたく気に入ったスクエアプッシャーが、その勢いのままに計5曲を書き下ろした『Music For Robots』。〈機械演奏〉をテーマにしているという点で、古くはフランク・ザッパ『Jazz From Hell』、近年だとパット・メセニー『Orchestrion』も想起させるものだ。作品全体を覆う美しいコード・ワークは代表曲“Lambic 9 Poetry”のそれだが、「今回のプロジェクトでは、馴染み深い楽器が、これまで不可能だった方法で演奏されている」と本人が語る通り、“You Endless”の後半部分に顕著なライヒのミニマリズムが暴走するような楽曲群は、人力演奏不能な領域へ突入。ジャズ〜フュージョンの範疇を見事なまでに拡張しているとも言える。さらっとクラシックのスコアも書き上げそうな、スクエアプッシャーことトム・ジェンキンソンの、作家性の高さを改めて確認できる作品だ。
▼関連作品
左から、フランク・ザッパの86年作『Jazz From Hell』(Barking Pumpkin)、パット・メセニーのDVD「The Orchestrion Project」(Warner Bros./ワーナー)
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