アメリカのシンガー・ソングライター、エンジェル・オルセンの2年ぶりのアルバムは、端的に言うと傑作である。2021年4月に同性愛者だと公言した時期に書かれたという楽曲群で構成された内容はとても感動的だ。ひとつひとつの言葉を噛みしめるように吐き出す彼女の歌声は、達観に至った者だけが漂わせる凛々しさで満ち満ちている。同性愛者としての自分を受け入れるまでの紆余曲折と、みずからの心を認めたからこそ出逢えた美しい光景と情動が描かれた言葉に涙を隠せなかった。そうした言葉を彩るサウンドはカントリー色が強く、筆者からするとラヴェンダー・カントリーなど同性愛に肯定的なカントリー・バンドを連想させるものだ。感情の機微を饒舌に紡ぐ多彩なメロディーも素晴らしい。