ブルックリン拠点のSSW=Tomberlinの2ndアルバムは〈誰がこのアルバムを聴くというのか……〉という自虐的なタイトルだが彼女なりの遊び心だろう。卓越したソングライティングは言うまでもなく素晴らしい。バンドサウンドを取り入れた今作には、1stにはない深みや繊細な表現の背景には静かに燃える情熱が感じられる。後半の多重録音を用いた手法で声のハーモニーやピアノの音色に心をも浄化させる。Kings Of ConvenienceやAdrianne Lenkerを手掛けたPhilip Weinrobeの手腕も見事。今年のインディー・フォークを代表する作品だ。

 


フロリダ州ジャクソンヴィルで生まれたシンガー・ソングライターのセカンド・アルバム。スティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスの影もちらつくミニマルなサウンドスケープが印象的なフォークという趣で、シンプルに見えて多くの要素を重ねたアレンジの複雑さが際立つ。深く内観したような言葉選びが光る歌詞は哀愁で溢れ、ニック・ドレイクやジョニ・ミッチェルが脳裏に浮かぶ世界観を築き上げている。