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聴くものの振れ幅はイカれてる

――sashiさんは?

sashi「僕は多分、中学でX JAPANにハマったのが最初ですね。でも、中学はバスケ部でリア充一直線だったから、バンドをやろうとかまったくなくて。

その後、田舎の中学から都会の校則の厳しい高校に行って教師や不良にぼこられたり、性病をうつされたり等々、現実社会での洗礼を浴びて。で、その頃ハードコアとかに出合って、音楽にのめり込んでいきました」

――sashiさんはたくさん音楽を聴かれていますよね?

sashi「僕、もともとリスナー体質で。そのへんのプレイヤーよりディープなリスナーのほうが音楽詳しかったりするじゃないですか。僕はそういう感じで。

音楽雑誌もヘビーな読者で、『SNOOZER』、『CROSSBEAT』、『DOLL』、『blast』、『GrindHouse』、『ミュージック・マガジン』、『rockin’on』などを愛読していて。MTVやスペースシャワー、Viewsicなども1日流しっぱなしにしてました。そこでのインプットが多かったから、今、曲を作れているのかもしれないです」

――ミュージシャンやバンドで言うとどの辺が好きでしたか?

sashi「さっきレイン君が言ったアーティストも全部好きですし、特にコーンは自分にとってのアイドルで。日本で言うならジャニーズの嵐みたいな存在でした。マッシヴ・アタック、スクエアプッシャー、エイフェックス・ツインの三大天も好きだし、haruka nakamuraとかビョークも。ハードコアもJ-Popも好きです。最近だとアルカとかカニエ・ウェストもやばいと思う。我ながら聴くものの振れ幅はイカれてると思います。

好きなものに共通しているのは聴いていて没頭できるもの。BGMとして音楽はあまり使わないですね。あ、でも〈セックス on the Nujabes〉はやったことあります。あまりよくなかった記憶がありますが」

 

楽器のできない天才sashiの作曲

――そういうリスナーとしての蓄積があって、今、音楽を作れているところも大きいですか。

sashi「蓄積もそうなんですが、2005年から2006年頃、曲を作らざるを得ない状況になったんですよ。前身のバンドにはコンポーザーがいたんですけど、就職で辞めてしまって。そのときにレイン君に〈絶対サトシ君が曲作るべきだよ〉って煽られて」

――お前がいちばん音楽を詳しいんだからって?

レイン「そうそう。こだわり強いしうるせーから(笑)」

『TOKYO VIRUS LOVE STORY』収録曲“change”

――一緒にバンドやるようになった人たちは、音楽の趣味が合ったということ? それとも、人間的な面白さを優先しましたか?

sashi「どちらを優先ということでもなくて。似たような格好した暇を持て余してるやつらが集まって、同じ音楽経験を共有していけば、自然に趣味が合ってくる気がします。あとは、そこを幹にして細分化していくだけで」

――楽器は何をやってました?

sashi「僕は全く何もやってないです」

――そうなんですか!? それはびっくりしました。

sashi「もしかしたら天才なのかもしれません。もしそうだったら教えてください。違う場合は魔法がとけるので教えないでもらえると……。

ただアカデミックな素養がゼロだから手法はめちゃくちゃらしく、メンバーにはクソミソにやり辛いと言われます。〈黙れ愚民!〉と思っていますが」

――レインさんはsashiさんの曲を聴いていかがでしたか?

レイン「さすがとしか思いませんでしたね(笑)。ドレッドヘアでダボダボの服着て、水色のShadow Slasher(バイク)に乗って、ティンバーランドの白いブーツ履いて、文学が好きで、家でピザ食べて、ゲームしてる男の音楽でした。

こんな機会だから初めて言いますけど、当時から気後れしちゃうぐらい才能は感じてますよ、そりゃ。だから一緒にやってますし。

僕、色々な音楽シーンに顔を出すことが多い方だと思うんですけど、それぞれの界隈に行くと、ちっちゃいコミュニティーの内側でどんぐりの背比べしてるように見えちゃうんです。音楽的にもそのコミュニティー内だから許される雰囲気のものばかりで。サトシ君は昔から、そういうジャッジがめちゃめちゃ厳しかったですね。かくいう僕もコミュニティーってどうでもいいところがあって、ライバルは本気でNetflixやミッキーマウスだと思ってます」