食品まつりのリリースも話題を呼んだオレンジ・ミルクの首領キース・ランキンが、ヴェイパーウェイヴの決定打となった前作に続いて矢継ぎ早に完成させた新作。ジューク/フットワークとのリンクからは逸脱しながら、無邪気なMIDIオーケストラの追求する和声の先には、OPNの『R Plus Seven』を追随しながらその実態を暴くようなハイパーリアリティーな瞬間が淡々と連なっていて、実にスリリングだ。ミュータントなネクスト感を競うレースが早くも出口を失うなか、ここに不敵な佇まいで鳴り響くムジーク・セラピーはその終着駅にもなり得るし、主題通りに深読みせずともMIDIエレクトロニカ~チェンバー・ポップ好きには普遍的な良作としても当然の如く受け入れられるだろう怪作でございます。