菊地成孔が新たなバンド〈ラディカルな意志のスタイルズ〉を立ち上げ、2022年9月14日(水)に東京・渋谷のWWW Xでライブを開催する。

2021年にDC/PRGを解散し、その後〈新音楽制作工房〉を立ち上げた菊地成孔。今回、菊地が新たに結成したバンド〈ラディカルな意志のスタイルズ〉は、スーザン・ソンタグの著書からバンド名を引用しており、〈昨年、DC/PRGを解散した際に、溜まりに溜まっていたネクスト感を実現すべく〉2021年11月に結成されたとのこと。

メンバーは、菊地成孔(ソプラノサックス/アルトサックス/テナーサックス/パーカッション)のほか、松丸契(アルトサックス)、相川瞳(ビブラフォン/パーカッション)、林正樹(ピアノ)、秋元修(ドラムス)、北田学(バスクラリネット)、Yuki Atori(ベース)、ダーリンsaeko(パーカッション)の7人。ステージに上がらず、作曲のみを担当するアリガスもメンバーであるという。

ラディカルな意志のスタイルズの音楽性は、〈インストのダンスミュージック〉であること以上は、文章では説明できないものだそうだ。また、衣装、グッズやバンドのロゴデザインなど、ビジュアルはすべて日本の服飾ブランド〈HATRA〉が担当する。

菊地によるバンドの立ち上げに際してのコメントは次のとおり。

 昨年の春にDC/PRGを解散したのは、端的にミッションを終えたからで、それは「戦争とアメリカ」ということだった。その後世界はその通りになり、つまり戦争とアメリカの時代は少なくとも一旦は終わったが、更に深く酷いことになった。深く酷い世界に対して、顔をしかめるのは児戯にも等しい。酷い世界に対して、嘘でも元気ぶり、作り笑いで家を出るのも。

 「もうバンドはやらないでおくべきか、やるのか?」を考えた。もう歳も歳だし。そして、昨年の秋頃から「来年(22年)は、コロナだオリンピックどころではない酷い世界になる。途轍もないことになるだろう」という直感が働き、そのための音楽が必要になる。第一には自分に。そして年が明け、直感は当たった。いつだって現代は混迷する酷い社会だが、今の現代は今までの現代よりも酷い。バンドを結成することにした。年齢的に言っても、高い確率で人生最後のバンドになるだろう。上手くゆくと20年ぐらいはやるので。

 「ラディカルな意志のスタイルズ」は、米国の女性評論家、スーザン・ソンタグの代表的な著作の一つで、愛読書でもあるけれども、音楽とは一切関係ない(というか、音楽と書物が関係を結ぶことはできない。「楽譜集」という書物でさえ、音楽とは、偽りの関係しか持っていない)。長い間、翻訳書名が「ラディカルな意志のスタイル」だったのが、2018年から完全版となり、「スタイルズ」に改まったので、「これはバンド名みたいだから、いつかバンドを作ったら名前を借りようっと」と思っていた。その時が来たのだ。せっかく日本語の名前をつけたので、バンド名を他国語には翻訳しない。

 <インストルメンタルのダンスミュージック>、以上の説明がつかない(ft ヴォーカルが2曲入るが)。ダンスというより、痙攣的な反射に近いかもしれない。全体的な質感は、電気楽器を使わない金属質で、メンバーは理念的には女性と男性(ジェンダーとかではなく、肉体が)が半々であることを目指しているが、初動ではまだそこまでには至っていない。活動しながら半々に向かう予定だ。ビジュアルは全て、日本のブランド「HATRA」が担当する。

 ライブは、解散まで全て、公演名を「反解釈」とする。9月14日が「反解釈0」で、11月27日が「反解釈1」となり、以降、カウントが続けられる。衣装が完備されるのは「反解釈1」からである。今後、「ライブに来てくださいよ」というのは「反解釈に来てくださいよ」と言い換えられることになる。

 僕は音楽家として「自分に必要なもの」と「世の中に必要なもの」の差をわきまえている。どちらもとても必要であり、音楽家の責務であると言える。<音楽家は芸術家で、自分のためにだけ音楽を作るのだ>という衝動もなくはないが、実際にやってみるとそれは無理だ。<自分のために作ったものが、結果、その時代を作った=社会に必要だった>という偉大な例もあるが、おそらく僕には無理だ。そもそも「自分のためだけ」に音楽を作れると、最初から思っていない。

 だが「ラディカルな意志のスタイルズ」は、今まで組織してきた運動体の中でも、最も「今、社会に必要なものは何か?」という、一種の社会主義に1番法っている。勿論、政治経済理論における社会主義ではない。ただ、両者は全く無関係でもないが。少なくとも、時間感覚の変容を、社会が必要としていることは間違いない。

 ここまでをまとめるとこうなる「今、音楽社会主義的な見地から、社会に必要だと思われる音響や律動、音色や空間の総合体は、電気を使わない金属的、痙攣的なもので、それを発する集団は男女比率が半分ずつを目標としており、聴衆は<反解釈>に集合することになる。<反解釈>が成功すれば、時間感覚は変容し、社会はより良くなるだろう」。要するに、愛も、性も使わない快楽。ということだ。とうとうここまで来たか。という思いである。

 菊地成孔(ラディカルな意志のスタイルズ)

2022年9月14日には、東京・渋谷のWWW Xでラディカルな意志のスタイルズのデビューライブ〈反解釈0〉が開催される(上の声明文によると、11月27日にはこれに続く〈反解釈1〉の開催も予定されているようだ)。チケットの発売は2022年8月6日(土)の10:00から、チケットぴあにて。

〈文章では説明できない〉〈インストのダンスミュージック〉を奏でるラディカルな意志のスタイルズ。9月のライブは絶対に見逃せない。

 


LIVE INFORMATION
反解釈0

2022年9月14日(水)東京・渋谷 WWW X
開場/開演:18:30/19:30
出演:ラディカルな意志のスタイルズ
前売り:6,000円(税込/スタンディング/ドリンク代別) ※年齢制限 未就学児入場不可
主催:ビュロー菊地
制作:01creative

■チケット
発売日:2022年8月6日(土)10:00
発売所(チケットぴあ):https://w.pia.jp/t/radical//0570-02-9999(Pコード:222982)

 


PROFILE: ラディカルな意志のスタイルズ
 「ラディカルな意志のスタイルズ」は、スーザン・ソンタグの著作名だが、名前の響きがバンド名のようだ。という以外、引用根拠はない(英語表記もない)。しかし同時に、現在ほど、ラディカリズム、意志、スタイルが(欠損栄養素のようにして)必要な時代はない。

 昨年、DC/PRGを解散した際に、溜まりに溜まっていたネクスト感を実現すべく結成した。

 メンバーは

 菊地成孔(ss, as, ts, perc)
 松丸契(as)
 相川瞳(viv, perc)
 林正樹(pf)
 秋元修(dr)
 北田学(bass cl)
 Yuki Atori(bass)
 ダーリンsaeko(perc)

の7名で、ステージに上がらず、作曲のみ担当のアリガスもメンバーとする。音楽性は「インストのダンスミュージック」以上は文章では説明できない。衣装、グッズやバンドロゴデザイン等々、ビジュアルは全て本邦の服飾ブランド「HATRA」が担当する。新しい身体感覚、思考、感情の解放を。