再結成を発表したsyrup16gの実に6年半ぶりとなる新作は、一度ボロボロになった五十嵐隆が再生するまでのドキュメントのような作品だ。アルバム中でもっともヘヴィーな“Share the light”から始まり、〈3.11〉後の世界を見つめ、自己探求を繰り返し、ラストの晴れやかな“旅立ちの歌”に辿り着いたときのカタルシスがたまらない。では、なぜ五十嵐は再生することができたのか? それは結局、音楽の力が大きかったに違いない。本作を聴いているとスミスやXTCからマイケル・ジャクソンに至るまで、五十嵐少年がかつて夢中になったであろう楽曲の断片が浮かんでは消えて行く。そう、彼は鋭利な言葉を吐く詩人である前に、やはり根っからの音楽ファンなのだ。それが伝わってくることが、何より嬉しい。