音楽がもたらした〈生きてる実感〉を情感豊かなメロディーに乗せて――新進気鋭の4人組が愛と閃きたっぷりに届ける初アルバム!

 「音楽を作ることに関して気にしているのは、自分にとってそこに〈発明はあるか?〉〈愛はあるか?〉〈伝わるか?〉の3つです。なかでもいちばん重要なのは、〈発明はあるか?〉ということで、ほんの些細なことでも、それがなければ出さないようにしています。それが僕の自信です」(竹田昌和、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 昨年6月の『金星人に恋をした。』を皮切りとし、下北沢に拠点を置くレーベル、DAIZAWAから2枚のミニ・アルバムを発表してきた4人組、ウソツキ。DAIZAWAといえば、LOST IN TIMEsyrup16gレミオロメン椿屋四重奏きのこ帝国などなど、良質でソング・オリエンテッドなアクトを送り続けてきたレーベルだが、彼らもその系譜を継ぐように、バンド感に満ちたアンサンブルと情感豊かなメロディーで、着実に支持を集めてきた。

 「曲を書くようになったきっかけは、学校に臨時講師で来ていた数学者の秋山仁さんが〈プレゼントを渡すなら、買ってきたものじゃなくて、何か作ったものを渡せ!〉と言ったのを真に受けて、友達の誕生日に自分で書いた曲を渡したのが最初で。音楽を始めるまで、僕は学校や社会のなかで〈無〉だと思ってたんですけど、音楽によって友達が出来て〈他者〉が生まれ、彼らが僕の名前を呼んでくれることで自分という存在を実感できたような気がしたんです」。

ウソツキ スーパーリアリズム DAIZAWA(2015)

 このたび届けられたファースト・フル・アルバム『スーパーリアリズム』もまた、諸先輩たちの名盤同様にスタンダード化しそうな予感をありありと感じさせるもの。〈右手を上げて 左手下げて 両手を上げないで 踊らされている毎日さ〉(“旗揚げ運動”)――日々感じる喜怒哀楽を散りばめながら〈生きてる実感〉を刻んでいく詞世界……しかしながら、そこには情けなさもなければスネた様子もない。そうならないのは音楽によって世の中との接点を得た彼の信条だと言えるだろうし、ウソツキの音楽がことのほか人懐っこいことにも繋がっているだろう。

 「毎日自分の顔を見てるのと同じでわかりづらいですけど、音楽に対する意識は少しずつ変わっていってるように思います。昔はできなかった〈不特定多数なものに対してのメッセージ〉も書けるようになった気がしますし、〈がんばれ!〉とか〈大丈夫!〉だとか知りもしないのに元気づけるようなことを敬遠していたのですが、最近は〈無責任なことを言う責任〉について考えるようになりましたね。〈うるせーよ、黙ってついて来い!〉とはまだ言えないですが、そうすることで伝わるものや救えるものもあるんだなぁと思っています」。