日本初発売――〈最も相性が良かった指揮者〉、ヨーゼフ・クリップスとの“皇帝”も

 2022年はカナダの鬼才ピアニスト、グレン・グールドの生誕90周年と没後40周年が重なる。ソニーミュージックではJ・S・バッハ“ゴールドベルク変奏曲”1981年録音の『未発表レコーディング・セッション・全テイク』(CD11枚組)、名盤30タイトルの 〈高音質Blu-spec CD2〉化、全3種類となった“ゴールドベルク変奏曲”の〈アナログ・コレクション〉12インチLP盤とともに、日本初発売となる〈グールド秘蔵音源シリーズ〉3タイトルを9月にリリースする。

 秘蔵音源はディミトリ・ミトロプーロスとのJ・S・バッハ(第1番BW V.1052=ロイヤル・コンセルトヘボウ管)、シェーンベルク(ニューヨーク・フィル)、ヨーゼフ・クリップス指揮バッファロー・フィルとのベートーヴェン(第5番“皇帝”)を収めた『グレン・グールド秘蔵ライヴ』、CBS(現ソニー)への電撃的デビュー盤の1年前、1954年に演奏した“ゴールドベルク変奏曲”と、4つの“前奏曲とフーガ”からなるカナダ放送協会(CBC)放送音源、カナダのマイナーレーベル〈ホールマーク〉で1953年に録音したベルク“ピアノ・ソナタ”、アルバート・プラッツ(ヴァイオリン)との小品3曲に恩師のアルベルト・グレーロとの4手連弾プライヴェート録音を組み合わせた『若き日のグレン・グールド 1947〜1953年レコーディング』の3タイトル。ドイツ・ソニーの制作、ライナーノートはグールド研究者でもあるドイツ人音楽評論家ミヒャエル・シュテーゲマンがすべて書き下ろした。

 国内初発売に当たっては日本のグールド研究者、宮沢淳一氏による詳細な解説のほか、シュテーゲマンの原稿も全文(日本語訳は池田卓夫)掲載する。中でも協奏曲の〈秘蔵ライヴ編〉は力作だ。グールド独特の指揮者観が詳細に述べられ、ウィーン生まれのユダヤ人クリップスを〈最も偉大な指揮者〉と評価した意外な事実が明かされる。確かに“皇帝”には、〈星のきらめくような時間(Sternstunden)〉が流れている。