ASKAとASKAバンドと弦楽アンサブル、三位一体が生み出すミラクルな瞬間がBlu-Ray&CDでリリース決定!

 「ツアー初日が第6波の到来と重なったからね。2月に入ったら、また緊急事態宣言が発令されるかもしれない。そうなるとこのツアーはもう終わってしまう。なんとかしてやり遂げなければ、って気持ちでしたよ」

 2022年初頭に行われた〈ASKA premium concert tour -higher ground- アンコール公演〉を振り返ってASKAが話す。走り出しの頃はそれこそ一回一回が賭け。明日はどっちに転ぶか誰もわからない。しかし困難をくぐり抜けるたびにチームの結束力はいっそう強まり、舞台上で発生するグルーヴも強靭さを増していく。そんな道程を経て完成を見たライヴ・ステージは、文字どおりプレミアムで上質な音楽で満ち溢れていた……このたび商品化されたBlu-ray&ライヴCD『ASKA premium concert tour higher ground アンコール公演2022』には、ASKAとASKAバンドと弦楽アンサブル(Get The Classics)の三位一体が生み出す特別な波動が広い会場をすっぽり包み込むミラクルな瞬間が記録されている。

ASKA 『ASKA premium concert tour -higher ground- アンコール公演2022』 DADA label(2022)

 「そもそも今回はやる意味がありましたからね」とASKAが口を開く。昨年11月、盟友であるドラマーの菅沼孝三が大腸がんでこの世を去った。彼の意思を引き継いでツアーに参加した菅沼の愛娘、SATOKOは、父の形見であるドラム・セットに魂を叩きつけるような演奏を披露、四方八方に飛び散る熱いリズムのせいでどこの会場も水浸しとなった。

 「亡くなる直前まで彼とずっと一緒に居たんです。彼がSATOKOに〈自分が何かあったらASKAさんのことを頼むぞ〉と伝える場にも居合わせた。いまや中堅クラスのドラマーでバリバリ仕事をしているSATOKOだけど、ツアーが決まったら何はさておきスケジュールを合わせてくれて。親父の遺言を守ったんだよね。だから俺は、これはいまだけしかできないツアーなんだ、ぜひ観てほしい、と言って回ったんです」

 菅沼親子の時空を超えた共演シーンは、間違いなく本作のハイライトになっている。ASKAに頭を撫でられ、涙でグシャグシャなSATOKOの顔が登場するエンディングにもずいぶん涙腺が緩んだけれど。それにしても、ASKAの〈今〉を如実に伝える強力な歌声には、まいった! というほかない。腕っこきの演奏者たちが起こした大きな音の波のうえで華麗な跳躍を見せるASKAの姿は爽快で豪快だ。

 「このごろライヴが本当にわかってきたというか。結局はすべてがライヴなんですよ。僕とお客さんがわかり合っている空間で、思いっきりやればライヴは成立する。そもそもライヴの最大の演出はお客さんの反応で、みんなが好きな曲を共有しあう喜びで自然と演出が生まれる。なので会場に50%しか入っていないとやれない。演出力がなくなるので。コロナ禍でも100%でやる。ただみんながそこにいればいい。で、声が出せない分、自分の気持ちを表わそうといつも拍手が長くてね。すごく温かった」

 生の自分をどれだけ伝えるか、という行為に計算は通用しない。だからひたすら今をさらけ出すしかない。ここでのASKAのパフォーマンスにはそんな心意気が感じられてならない。

 「パフォーマンスって言われるほど、パフォーマンスしていない。時々仰け反ったりするけど、そうしないと声が出ないから(笑)。人にどう見られるかなんてかまっちゃいられない。メンバーは自分の仕事に専念してくれ、俺は歌うことで精いっぱいで、目を配るなんて余裕なんてないんだ(笑)。さらけ出す、ってさっきおっしゃったけど、そのまんまの自分を見てもらう意味でたしかにそうかも。他の余計なことを考える余裕はないので」

 最後に、ASKAさんにとってライヴの場とは?

 「確認の場ですよね。愛されていることを確認できる場。なので、ありがとう、って気持ちがまっ先に立つかな。音楽を続けていくモチベーションとしてライヴがないと維持できない。だからできるだけ長くやれたらいいですね」

 実はライヴを観ていて最も耳に残ったのはASKAが口にする〈ありがとね〉ってフレーズだった。たぶんその言葉を受け取った会場の全員が彼と同じ気持ちを確認していたんじゃないだろうか。とにかくASKAの〈ありがとう〉はとてもあたたかい。それだけはどうしても記してきたかった。

 


ASKA
1979年、CHAGE and ASKAとして“ひとり咲き”でデビュー。“SAY YES”“YAH YAH YAH”“めぐり逢い”など、数々のミリオンヒット曲を世に送り出す。音楽家として楽曲提供も行う傍ら、ソロ活動も並行し、1991年にリリースされた“はじまりはいつも雨”が、ミリオン・セールスを記録。同年のアルバム『SCENE II』がベストセラーとなり、1999年には、ベスト・アルバム『ASKA the BEST』をリリース。また、アジアのミュージシャンとしては初となる「MTV Unplugged」へも出演するなど、国内外からも多くの支持を得る。2019年6月には、ソロとしては約10年振りとなる台湾、香港での海外公演を開催。