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人生を変えるのはロックンロール

 好きな子に対する純粋すぎる思いと〈うまく話せない〉もどかしい状態を描いた“アイラブユー”、気になる〈君〉とカラオケに行き、どうにか歌で気を引こうとする健気さを映し出す“カラオケ・サマーバケーション”も心に残る。そう、思春期の甘酸っぱい感情をイメージさせる楽曲もまた、このバンドの大きな魅力なのだ。

 「(ムツムロが作る楽曲は)感性の基準が10代の若い時期に置かれていて。その言葉に引っ張られているところもあるし、〈17歳の自分が興奮できるようなギター・プレイをしたい〉という気持ちもありますね。自分が17歳のときは、なぜか流行ってるものを聴かず、ガンズ・アンド・ローゼズみたいなハード・ロックにハマってて。ちょっと孤立してた感じもあったけど(笑)、当時好きだったものは今のプレイにもつながっていると思います」(ukicaster)。

 「僕は逆に、歌詞をあまり意識してなくて。というか、ほとんど読まないんですよ(笑)。歌詞は自然に入ってくるものだと思うし、ドラムを叩くときも〈歌に寄り添う〉みたいなことは考えない。デモ音源を聴いて、〈この一瞬をしっかり輝かせよう〉と思える場所を決めるほうが大事だし、それがバンドの美しさなのかなと」(木島)。

 さらに「東京は〈仕事をしに来ている場所〉というイメージ。なので生活や暮らしを歌いたくて」(ムツムロ)という思いを込めた“東京”、TVアニメ「忍の一時」の世界観と4人で新たなスタートを切ったバンドの現状を重ねた“光”など普遍的なパワーを備えた楽曲もたっぷり。その根底にあるのは、〈馬鹿馬鹿しいことに意味なんかないことに/マジになれるのが俺らの才能だ〉(“才能”)という自己への力強い肯定だ。

 「15歳で木島とハンブレッダーズを始めたとき、〈今日で人生が変わる〉と思って。経済的にヤバくなっても、世界で大変なことが起きても、ギターを弾いて、バンドをやっていれば大丈夫だと。ちょっとスピってるみたいですけど、俺にとっての魂が揺れる瞬間だったし、それが今も続いているんですよね」(ムツムロ)。

 「魂が震えたのは、ハンブレッダーズに入って最初のライヴ。〈こんなにお客さんが待っててくれるんだ? こんな楽しいもんはないな〉と思ったときですね。忘れもしない、京都のスタジオ246です」(でらし)。

 「まだでらしが加入する前ですけど、大阪のツーマンライヴで、お客さんが泣いてるのを見たときは〈すごい。こんなことあるんや〉と思いましたね」(木島)。

 「俺は初めてギターを買った瞬間になぜか〈これを一生やっていく〉と思って。それからだいぶ経ちましたけど、ハンブレッダーズに出会って、加入して。この状況は不思議でもあるし、ずっと続けてきてよかったなとも思ってます」(ukicaster)。

 リリース後はもちろん、全国各地でライヴを敢行。新作からの楽曲が加わることでハンブレッダーズのライヴはさらに速度と強度を増すことになるだろう。

 「メタバースとかもいいけど、その場にいないと体感できないことは絶対にあって。言語化できないし、理由はわからないんですけど、魂が震える瞬間がまだまだあると思っています、ロックンロールには」(ムツムロ)。