12歳での衝撃的なデビューから10年、ショパン・リサイタルをCDとDVDでリリース!
「ショパンは最も共感できると同時に、最も難しさを感じる作曲家。生涯をかけて学びたい存在です」
今年デビュー10周年を迎えた牛田智大が、『ショパン・リサイタル2022』をCDと映像で同時リリースした。2022年3月のオール・ショパン・リサイタル(サントリーホール)を収録した、牛田にとって初のライヴ盤だ。
「会場の息遣いや雰囲気まで感じることができるライヴ録音にはもともと興味がありました。演奏会は聴衆とのコミュニケーションの中で少しずつ演奏を変化させていくものなので、セッションに比べて〈生きた音楽〉を録音することができます」
選曲したのは、ショパン中後期から晩年までの作品。
「ショパンの最も愛国的な作品と言われている“幻想曲”Op.49と“幻想ポロネーズ”Op.61を両端に“バラード第4番”や“舟歌”“ポロネーズ第6番”という後期の代表的な作品を挟み、アルバムの最後には絶筆の“マズルカ”を置きました。ショパンのポーランドへの愛国心や死生観を描くことを試みています」
死生観。今回、牛田が演奏に際してのテーマとしたのが、ショパンが20代初めに残した言葉。「人間が成しえる最も偉大な行為とは死であり、最も罪深き行為は生きることである」というものだ。
「まるでショパンが死の間際に過去の自作品を回想するかのように、作品と死との関係をより意識しています。たとえば長調の音楽であっても悲しみや諦めを、華やかなパッセージにも影を持たせるように。じつは“マズルカ”の最後の音と“幻想曲”の冒頭は同じ音で、アルバムを聴き終えて最初へ戻ると、ショパンが死の淵から見た音楽的な景色を追体験できるようになっています」
1841年の“幻想曲”から最晩年の作品まで、ショパンの作風の変遷も聴き取れる。
「晩年に向かって、それまでの直情的な作風が、夢想的で諦観に満ちたものへと変化していきます。書法的にも、たとえば1840年代初めまでの作品では、左手にアルベルティ・バス的な、あるいはオスティナート的な音型が使われることが多かったのが、晩年に近づくにつれてよりポリフォニックな音型に変化し、いくつもの独立した声部が絡み合って和声を形成するようになっていくのです」
「ショパンのアイディアは、一般的に認知されているよりも進歩的で自由だ」と説く牛田。彼のショパンへの思いが、ライヴの熱とともにダイレクトに伝わってくる一枚が完成した。
LIVE INFORMATION
牛田智大ピアノ・リサイタル 2023
2023年2月24日(金)石川・金沢 北國新聞赤羽ホール
2023年2月25日(土)福井・今市 ハーモニーホールふくい(小)
2023年3月5日(日)広島・福山 沼隈サンパル
2023年3月10日(金)富山・入善 コスモホール
2023年3月12日(日)岩手・盛岡 岩手県民会館(中)
2023年3月20日(月)千葉・習志野文化ホール
2023年3月21日(火・祝)神奈川・横須賀芸術劇場
https://www.japanarts.co.jp/artist/tomoharuushida/